カスタムナイフ つくったよ!

 

とうとうつくっちゃいました。
ナイフです。世界にひとつしかない、自分の手作り品。7月18日(日)に三木市において作ったことを報告します。

講師は、三木カスタムナイフギルド 会員の藤原敏さん(以下「師匠」と言わせていただきます)です。師匠は、いのしし討ちに行った時なんかに、自分の思い通りになるナイフがないからという理由で、ナイフ作りに携わったという、本人いわく「素人やから、商売でしてるモンがいろいろ教えてくれる」という方。元々は三木の市街地に住んでおられたのが、奥さんの実家で住んでいなかった家を改造して工房を作りかけているということです。
商売でやってるんと違うから、ということで、昔風の炭での焼きいれや、ゆっくりとした焼きもどしをすることができ、プロなら分業しているハンドル(柄)作りや研ぎまで、一貫して作業が可能なのです。

元々は、例のネイチャーゲーム全国研究大会で、せっかく金物の町 三木でするんだから、エクスカーションで、ハンドメイドナイフを作れたら・・・ということで、エクスカーションの担当だった I さん(以下「師範代」と呼ぶ)が、三木の事情通 Y さん(陰の実行委員長)の情報をもとにたどりついた先が師匠だったんです。以来、師範代は師匠のもとに通うことこれが4回目。初体験終了後の2回目からは、初心者から「先生」と呼ばれるこの業界(何のこっちゃ)、今回も、もうすっかりプロらしく(師匠がアマチュアや、言うとうやろ!)振る舞っていました。

 

1 集合から説明(ウンチク あれこれ)

午前9時前に集合。天気は雨。師匠の工房は田んぼと畑の中の一軒家。
雨が降っても、室内で作業するから・・・ということであったが、前に1回訪れた時(研究大会の時に、あいさつ兼ひやかしで)の状況からすると、狭いだろうな・たしか土間みたいなところだったよな・雨でドロドロになるんだろうな・天気予報は曇って言ってたのにな等々考えながら行くと、むさくるしい男(NG関係3名・職場関係2名)とかわいい(ここを強調しないと後が・・・ねえ、とくちゃん。)女性(NG関係2名)がもう待っていた。師範代と私、娘(ナイフはつくりません)の合計10名で、師匠の工房を使わせていただいた。

「1日でナイフを作るのはドダイ無理な話しやけど。」という言葉で始まった師匠の説明。確かに研究大会の時は、1泊2日でした。師匠の作品を見せてもらいながら、「前に来てもらった人が作ったんよりも、エエ材料を今日は用意しといた。」の声に、一同思わず目を合わせて、ウンウンとうなずいた。
雑誌なんかを見せながら、「こんなんに出てくるナイフは、キレイけど切れへんわな。それは実用品やないわ。」という師匠。確かに、見てくれは美術品という風情はあまりないような気がする。けれど、それがいいんやねー。
「最近増えてるんはステンレスの刃のやつやけど、錆ひんかわりに切れへん。」とのたまう師匠。これまた一同ナルホドなーと、深くうなずくのでありました。
ハンドルも、型も前に作ったのと少し違っていたみたいで、2種類の見本の中から好きな方を選べるということでした。私はハンドルがまっすぐなやつではなく、ややカーブした方を選びました。本当は、刃の形やその他モロモロ違いがあるんでしょうが、初心者の私たちには、その場で見分けることはできませんでした。師匠が、外国のナイフ雑誌を広げて「こっちはコレが、これはコッチの本のコレが、まあ一応モデルやね。」ということで、そのカッコ良さに再度わくわくどきどき。

                説明する師匠と、真剣な弟子たち

 

2 打ちならし 型修正 荒削り(おっかな びっくり)

使用するのは、日立の青2号というハガネ。それを鋼材ではさんだのを師匠が購入したものを使用します。
あらかじめ師匠が削っておいてくれた材料に刻印を打ちます。その刻印の数により、作業中に誰のヤツなのかを判断するわけです。名簿順で、私は刻印1個のやつです。
正直この時では、あまり「これが、自分のナイフになるんか!」という実感はありませんでした。

金槌と金床を使って、はじめての作業「打ちならし」です。これで、仕上がりの刃紋が決まるというような作業らしいんですが、何せ初心者。加減がわかりません。師範代の「テキトー、適当」の声もあり(以後、師範代の口癖になる)、みな、おっかな びっくり作業をした。刻印1個のやつを、本当に適当に叩いた後に師匠に見せたら「こりゃーあかん。んー、叩き過ぎやな。んっーでも、まあええやろ。」とのこと。初心者にとっては、先制パンチ、暗雲にわかに・・・という状況です。
「やり過ぎると取り返し効かへんからな。ほどほどやったら、先生が修正してくれるから。」という師範代の声を後ろに聞きながら、師匠が型紙に合わせてケガキ針で刃の形を描いてくれる。

 打ちならし      型修正     荒削り

今度は、「型修正」。グラインダー(円形の砥石みたいのが回転して、モノを削る道具)を使って、それに合わせて刃を削る。
これのコツは、最初は大胆に、仕上げは繊細に、どちらも鋼材を大きく動かして、というところでしょうか。(ほら、1回しただけで、もう先生気分になっている。)
はじめて使う道具に戸惑いながら、あがる火花に腰が引けつつ、なんとか出来上がり。かな?
師匠に見せたら「まあ、いいでしょう。」とのお言葉。初心者、たちまちやる気マンマン 元気状態。

お次の工程(この言葉が段々ふさわしくなってきた)は、輪っかになったサウンドペーパーを機械で回し、モノを削っていくというやつ(名前知りません)で刃を「荒削り」します。前に書いたように最初は平べったい鋼材だったわけで、「型修正」してはじめてナイフらしくなったんですが、そのままでは刃がついていない状態。背を残して刃の方に向かって角度をつけて削って行くという作業です。
少し削っただけで、摩擦熱で鋼材が熱くなってきます。水に浸けながら、これまたやり過ぎると元も子もないという作業が続きます。「テキトーでええんや」という師範代の声を再度聞きながら、こんなもんかな?ということで師匠に検分していただきます。「やっぱり、こんな風になんねんや。左右対称やないやろ。」というご指摘。確かに言われてみれば右と左の削り方の違いは歴然としていました。
ここで師匠の出番。なれた手つきで、すぐさま手直しをしていただきました。

この間、機械は1台ずつしかないため、9人すべてが取り掛かれないという状況。忙しく働いている師匠をほっといて、庭にかけたフライシートの下にテーブルとイスを出し、お茶やコーヒー、お菓子などに師範代をはじめ、弟子たちの手は伸びていました。(ただし、師範代の名誉のために言っておきますが、これらの細々したものを準備したのも師範代なら、今回を総合プロデュースしたのも師範代です。)

 

3 焼き入れ準備 焼き入れ 焼きもどし(メインイベントだっー) 

いよいよ焼入れです。

まずは、泥(とのこ)を、鋼材の全面に均等に塗ります。このとき、ムラができると刃が欠けたりするそうです。
結構、スムーズに塗り、ガスコンロで乾かします。
そのころ、師匠は炭火をいこしてました。
「このごろは、焼き入れは、ほとんど鉛でしよる。カネがかかるいうんと、管理が難しいから、金儲けではしゃあないんやけど、鉛の温度を一定にしても、刃は1枚1枚違うはずや。温度も、温度計まかせやから、一定の温度いうても、ホンマは端と真中ではちやうはずやねん。せやから、わしは自分の目で見てするねん。」
そりゃ、ナイフを作るのに溶けた鉛にチャポンとつけるのと、炭火(それも、これが一番やという松炭を少し砕いたもの)でするのとでは、感動がちゃいますね。

刃物つくりで、焼き入れがの作業が一番重要で、切れ味の90%はここで決まると言われています。よく言われるのですが、この作業で刃物に「魂」を入れます。

  炭火で焼き入れです。       水を切るように・・・

 

赤くなる微妙な色を確認するため、室内を暗くして、自分の鋼材を持って、じっと師匠の横に座り刃を炭火に入れます。
温度調整が難しい最初の順番は、経験者である(ベテランということではなく、失敗してもかまわないという意味で)師範代が、みんなの指名により座りました。
温度と時間は師匠の言われるまま、じっと持つ手に汗がにじみます。(こんな定番な表現しかできないんですが、これがホントの気持ち)
先に鋼材の背を下にして入れ、今度は鋼材が下になるようにして、熱が厚さに関係なく均等に行き渡るようにします。
「一回、ユックリ引っ張って・・・・んー、まだやな。」
師匠の声が、無言の参加者たちの耳に響きます。自分の順番ではないのに、神経がピリピリしています。
「そろそろ、行くデ。水の上まで持ってきて、ヨシっと言うたら、水を切るように、熱が均等に冷めるように水につけてください。」
「よし!ゆっくりと、水の上へ!・・・・・・今や!」
ジュー。ジュワー。

冷めた刃は、刃に粘りを出すために、菜種油を熱した鍋に入れます。
これを「焼きもどし」と言います。刃は硬いばかりが能ではなく、硬すぎると研ぐのが大変だし、すぐに欠けてしまいます。甘切れ(砥石あたりが良くて、長く切れること)が理想なのです。

数人が済み、私の順番。
正直言って、師匠の声のとおりに動き、師匠に命じられるままに過ごしたのみ。しかし、この感動は、なんとも言い表せることができません。

まさに「鋼材が刃になった」瞬間です。

 

(つづく)

 

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