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営業保証金

第3節 担保

宅建業に必要な三種の神器は,免許・取引士・担保だが,ここからは3番目の担保の話をして行く。
宅建業に必要な担保には,営業保証金と弁済業務保証金分担金がある。
営業保証金を担保にするのは保証協会に加入していない宅建業者,弁済業務保証金分担金を担保にするのは保証協会に加入している宅建業者だ。


1 営業保証金

宅建業者が取り扱う物件は高額なので,途中で業者が倒産でもしてしまうと,お客さんは莫大な損害をこうむる。そこで宅建業法は,保証協会に加入していない者が宅建業を行おうとするには,あらかじめ営業保証金という担保を供託所に供託することを要求している。

営業保証金はいくらか

(1)
営業保証金の額は,主たる事務所(本店)及びその他の事務所(支店)ごとに,宅建業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して,政令で定める額だ。
政令で定める具体的な金額は,次の通り。
・主たる事務所は1,000万円
・その他の事務所は事務所ごとに1ヵ所500万円
なお,案内所は事務所じゃないので,案内所の分の営業保証金の供託は不要。

(2)
営業保証金の供託は金銭に限られない。国土交通省令で定める有価証券で供託することもできる。国債証券,地方債証券,その他の有価証券(電信電話債券など)が国土交通省令で定められている。
以上述べた有価証券と金銭を併用して,あるいは100%有価証券で営業保証金を供託することもできる。

(3)
有価証券で供託する場合は,信用力の差から,金銭と同じようには評価されない(国債証券で供託する場合を除く)。具体的な評価額は次の通り。
①国債証券は,額面金額通り(100%
②地方債証券又は政府がその債務について保証契約をした債券は,額面金額の90%
③①②以外の債券(例:電信電話債券)は,額面金額の80%


営業保証金を供託する所はどこか

(1)
営業保証金を供託する所は,主たる事務所の最寄りの供託所だ。支店の分の営業保証金も,主たる事務所の最寄りの供託所に供託する必要がある。

(2)
営業保証金の供託先は,「主たる事務所の最寄りの供託所」なので,主たる事務所を移転したことで,最寄りの供託所が変われば,営業保証金を預ける供託所も変わる。この場合は,次のどちらかをする必要がある。
①今まで金銭だけで供託していた場合
…遅滞なく,費用を予納して,営業保証金を供託している供託所に対して,移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求する必要がある。
②①以外の場合(今までの供託に有価証券が入っていた場合)
…遅滞なく,移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に,営業保証金を新たに供託する必要がある。


事業を開始できる時期

(1)
宅建業者が事業を開始できる時期は,主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託し,その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して,供託した旨を免許権者に届け出た後。

(2)
免許権者は,免許した日から3ヵ月以内に,宅建業者が営業保証金を供託した旨の届出をしない場合は,その届出をするように催告する必要がある。
そして,その催告が宅建業者に到達した日から1ヵ月以内に,それでも届出がされない場合には,免許権者は免許を取消すことができる。

(3)
宅建業者が,営業保証金を供託した旨の届出をして事業を開始した後で,事務所が増えた場合は,次のように取り扱われる。
①新設事務所の営業保証金の供託金額は,事務所ごとに1ヵ所500万円
②新設事務所の営業保証金を供託する所は,主たる事務所の最寄りの供託所。
③新設事務所について,その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して,供託した旨を免許権者に届出た後でなければ,新設事務所での事業を開始できない。


営業保証金の還付

(1)
営業保証金の還付(かんぷ)とは,宅建業者が倒産して,お客さんから預かったお金を返せなくなった場合に,お客さんが,営業保証金から弁済(弁償)してもらうこと。

(2)
営業保証金から還付を受けることができるのは,宅建業に関する取引により生じた債権を持っている者(宅建業者を除く),つまり不動産屋さんの非業者のお客さんだ。

平成29年4月1日から、不動産取引により被害をこうむった一般消費者を確実に救済するために、営業保証金の弁済対象から、宅建業者が除外された。

宅建業者との取引により生じた債権であっても,例えば広告業者の広告代金債権などは「宅建業に関する取引により生じた債権」ではないので,広告業者は,営業保証金から還付を受けることができない。

(3)
宅建業に関する取引により生じた債権を持っているお客さんが,営業保証金から還付を受けることができる金額の限度額は,宅建業者が供託した営業保証金の範囲。

(4)
営業保証金の還付が実際に行われたことで,営業保証金が政令で定める額より不足したときは,次のように扱われる。
①免許権者は,不足が生じた旨の通知書を宅建業者に送付する必要がある。    
②宅建業者は,①の通知書の送付を受けた日から2週間以内に,不足額を供託する必要がある。
さらに,供託から2週間以内に,その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して,不足額を供託した旨を免許権者に届け出る必要がある。


営業保証金の取戻し

(1)
営業保証金の取戻しとは,営業保証金を供託しておく必要がなくなった場合に,宅建業者が,供託所に預けておいた営業保証金を返してもらうこと。

(2)
宅建業者は次の場合に「営業保証金を供託しておく必要がなくなった」と言えるので,営業保証金を取り戻せる。
①免許が取り消されたとき
②免許が効力を失ったとき
③一部の事務所を廃止したため,営業保証金が政令で定める額を超過することになったとき
…この場合は,超過額だけを取り戻せる。
④主たる事務所が移転したことで,最寄りの供託所が変わった場合で,今までの供託に有価証券が入っていたので新たに供託したとき
…この場合は,移転前の主たる事務所の最寄りの供託所に供託してあった営業保証金を取り戻せる。
⑤保証協会の社員になったとき

(3)
営業保証金の取戻しは,すぐにはできないのが原則。つまり,営業保証金は,還付請求権者(お客さん)に対して6ヶ月を下らない一定期間内に債権の申出をすべき旨を公告し,その期間内にその申出がなかった場合でなければ,取り戻せないのが原則だ。(2)の①②③の場合がそうだ。
ただし,(2)の④と⑤の場合は,上のような公告をしないでも,還付請求権者に迷惑をかけないので,直ちに営業保証金を取り戻せる。


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