登記の申請   

4 登記の申請

登記制度を利用するかどうかは当事者の自由な判断にまかせるべきなので,不動産登記法は,「登記は,法令に別段の定めがある場合を除き,当事者の申請または官公暑の嘱託(委託)がなければ,することができない」と定めている。これを当事者申請主義という。
ところで,登記は当事者本人から委任された任意代理人(例:司法書士)に申請させることもできるが,その場合の任意代理人の代理権は,本人が死亡しても,消滅しない。民法の定めでは,本人が死亡すれば任意代理権は当然に消滅するが,民法のように取り扱うと登記権利者(例:不動産の買主)の権利が著しく阻害される(登記手続きが大幅に遅れる)からだ。


4-1
登記の申請方法

登記の申請は, 不動産を識別するために必要な事項(不動産識別事項),申請人の氏名または名称,登記の目的その他の登記の申請情報を登記所に提供して,電子申請または書面申請によりしなければならない。

(1)
電子申請とは,電子情報処理組織を使用する方法による申請をいう。つまり,インターネットを利用したオンライン申請だ。

(2)
書面申請とは,申請情報を記載した書面(磁気ディスクを含む)を登記所に提出する方法による申請をいう。

(3)
コンピュータを中心とする最近の高度情報化社会に対応させるため,平成17年3月7日から施行された新法では,電子申請を原則としている。

なお登記官は,上の電子申請または書面申請があったときは,その申請の受付をしなければならず,申請の受付をしたときは受付番号を付けなければならない。


4-2
「表示に関する登記」の申請

(1)
表示に関する登記とは,登記記録の 表題部にされる登記。
表示に関する登記は,税金取り立ての資料としての意味合いが強い登記なので,表示(地番・大きさ等の物理的状況)に変動があったときは,原則として申請しなければならない。つまり,表示に関する登記は申請義務がある。

(2)
表示に関する登記を申請しなければならないのは,具体的には次のような場合。
・建物を新築した場合 ・建物が滅失した場合 
・建物の所在,種類,構造等に変更があった場合 
・土地を埋立てた場合 ・土地の地目に変更があった場合
要するに,表題部に記録すべき事項に変動があった場合だ。

(3)
表示に関する登記を申請すべき期間は,表題部に記録すべき事項に変動があってから,1ヵ月以内と決められている。

(4)
表示に関する登記の申請義務を負うのは,原則として 表題部所有者または所有権の登記名義人。

(5)
申請義務者が表示に関する登記を申請しない場合,登記官が無理やり登記できるのが原則だ。これを表示に関する登記は,「登記官の職権でできる」という。

(6)
表示に関する登記は,電子申請または書面申請によりしなければならない。


4-3
「特殊な表示に関する登記」の申請

不動産登記法の上位に位置する民法は,自分勝手にならない限り,その人が思った通りの事をさせてあげようとする。
そこで登記簿の上で,複数の不動産だったものを合わせて一つにしたり,一つの不動産だったものを複数に分けたりするのも,原則として自由になる。
つまり表示に関する登記は,われわれが自由に操作できる面がある。

(1)
合筆の登記

合筆の登記とは,土地登記簿の上で,数筆の土地を合併して一筆の土地にすること。
合筆の登記は,表題部所有者または所有権の登記名義人が自由に申請できるのが原則。ただし,合筆することで登記簿が「分かりにくくなる」ときは,合筆の登記を申請できない。自分勝手になるからだ。
次の場合が,合筆の登記を申請できない例。
①所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆
②地目が違う土地の合筆
③所有権の登記名義人が異なる土地の合筆

(2)
分筆の登記

分筆の登記とは,土地登記簿の上で,一筆の土地を分割して数筆の土地にすること。
①分筆の登記も,表題部所有者または所有権の登記名義人が自由に申請できるのが原則。
②一筆の土地の一部について地目の変更があった場合は,表題部所有者または所有権の登記名義人は,分筆の登記を申請する義務がある。この場合は,分筆の登記を申請する他に表示の変更の登記も申請する必要がある。


4-4
「権利に関する登記」の申請

(1)
権利に関する登記とは,登記記録の 権利部にされる登記だ。
権利に関する登記は第三者に対抗するための登記なので,権利に変動があったとしても,申請しないでよい。つまり,権利に関する登記は申請義務がない。

(2)
権利に関する登記は,
①登記することが認められた権利(所有権・地上権・抵当権・不動産賃借権など)に,物権変動が生じた場合
②登記することが認められた権利の登記名義人が,氏名・住所を変更した場合
など,権利部の甲区または乙区に記録すべき事項に変動があった場合に申請できる。
なお,権利に関する登記はそもそも申請義務がないので,申請すべき期間もない。

(3)
権利に関する登記を申請しない場合,登記官は無理やり登記できないのが原則だ。
これを権利に関する登記は,「登記官の職権でできない」という。

(4)
権利に関する登記は,申請するなら,電子申請または書面申請によりしなければならない。

(5)
権利に関する登記は, 登記権利者と 登記義務者が共同で申請しなければならないのが原則だ(これを共同申請主義という)。
登記することで利益を受ける者(登記権利者)の他に不利益を受ける者(登記義務者)も関与させた方が,登記の真実性を確保できるからだ。
ただし,次の登記は登記権利者が単独で申請できる(例示)。
a.登記の申請を共同してしなければならない者の一方に,登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は,その申請を共同してしなければならない者の他方が,単独で申請できる。
b.相続による権利の移転の登記は,登記権利者が単独で申請できる。
c.法人の合併による権利の移転の登記は,登記権利者が単独で申請できる。
d.登記名義人の氏名・名称・住所についての 変更の登記または 更正の登記は,登記名義人が単独で申請できる。
e.所有権の保存の登記は,表題部所有者等が単独で申請できる。
f.不動産の収用による,所有権の移転の登記や,所有権以外の権利の消滅の登記は,起業者が単独で申請できる(この場合,起業者が国または地方公共団体であるときは,官庁または公署は,遅滞なく,それらの登記を登記所に嘱託しなければならない)。

(6)
要役地に所有権の登記がないときは,承役地に地役権の設定の登記をすることができない。

(7)
権利に関する登記を申請する場合,申請人は,「申請情報」と「添付情報」を登記所に提供しなければならないのが原則だ。主として登記の真実性を確保するためだ。
申請情報
申請情報とは,不動産を識別するために必要な事項(不動産識別事項),申請人の氏名または名称,登記の目的その他の情報だ。
・電子申請するときは,申請情報に電子署名を行う必要がある。
・書面申請するときは,申請情報を記載した書面に記名押印する必要があり,この書面には,原則として登記義務者の印鑑証明書を添えなければならない。なお,この印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のものでなければならない。
添付情報
添付情報とは,登記を申請する場合に,申請情報と併せて,登記所に提供しなければならない情報だ。
a.代理人によって登記を申請するときの代理権を証する情報
b.登記原因について第三者の許可等を要するときのその第三者の許可等を証する情報
c.登記原因を証する情報(登記原因証明情報)
d.登記識別情報
などが添付情報の例だ。

このうち重要なのはc.とd.なので,それらについてさらに書いておく。

イ.登記原因を証する情報(登記原因証明情報)
色々あるが,所有権移転登記や抵当権設定登記を申請するときは,登記義務者が物権変動の内容等を確認した上で電子署名または記名押印した情報が,これに該当する。つまり,売買契約書や抵当権設定契約書そのものでなくても良いが,その登記をする根拠となった情報が「登記原因を証する情報」(登記原因証明情報)だ。
なお旧法では,申請書に「登記原因を証する証書」または「申請書副本」を登記所に提出することになっていたが,新法では廃止された。

ロ.登記識別情報
登記識別情報とは,アラビア数字その他の符号の組合せにより,不動産及び登記名義人となった申請人ごとに登記所が定める情報のことだ。個別に定められる暗証番号のようなものと思えば良い。
権利に関する登記を申請するときは,申請人は,申請情報と併せて,「登記義務者の」登記識別情報を,登記所に提出しなければならないのが原則だ。
なお旧法では,申請書と一緒に「登記済証(俗に権利証と言われるもの)」を登記所に提出することになっていたが,新法では「登記済証」の制度は原則として廃止された。それに代わって導入されたのが,登記識別情報だ。


4-5
「特殊な権利に関する登記(仮登記)」の申請

(1)
仮登記とは,将来なされる本登記の順位を仮登記の時点で確保するためにする予備的な登記だ。本登記の順位を確保するための予約券と思えば良い。
難しく定義すると,仮登記とは,本登記をするのに必要な手続上の要件が完備しない場合(添付情報の不備),または,実体法上の要件が完備しない場合(物権変動が生じていない)に,将来それらの要件が備わったときになすべき本登記の登記記録上の順位を確保しておくために,あらかじめなされる予備的な登記だ,ということになる。

(2)
仮登記できるのは,次のどちらかの場合だ。
①本登記をするのに必要な,手続上の要件が完備しない( 添付情報の不備がある)が,実体法上の要件が完備している(物権変動が生じている)場合
こういう場合にする所有権の仮登記を,「所有権移転の仮登記」という。
②本登記をするのに必要な,実体法上の要件が完備しない(物権変動が生じていない)が,手続上の要件が完備している(添付情報の不備がない)場合
こういう場合にする所有権の仮登記を,「所有権移転請求権保全の仮登記」という。

(3)
仮登記も権利に関する登記なので,仮登記権利者と仮登記義務者が共同で申請しなければならないのが原則だ。
ただし,次の仮登記は仮登記権利者が単独で申請できる。
・仮登記義務者の承諾があるとき
・仮登記を命ずる裁判所の処分があるとき
なお,仮登記の「抹消」は,「登記名義人」が単独で申請できる。

(4)
仮登記には本登記と同様の対抗力はない。
つまり,仮登記しただけでそのまま放っておいたのでは,物権変動を第三者に対抗できない。

(5)
登記官は,権利部の相当区(甲区とか乙区)に仮登記をしたときは,その次に,その仮登記の順位番号と同一の順位番号により本登記をすることができる,余白を設けなければならない。その余白には,将来なされるべき本登記が記載される。

(6)
仮登記は所有権以外の場合もできる。例えば抵当権についても仮登記できる。

(7)
「所有権に関する」仮登記に基づく本登記は,登記上の利害関係を有する第三者がいるときは,その第三者の承諾(または,第三者に対抗できる裁判があったことを証する情報)があるときに限り,申請できる。所有権は物を全面支配できる権利なので,仮登記に遅れる第三者の権利と両立できない(第三者の権利を抹消しなければならない)からだ。
なお,「所有権以外の権利」に関する仮登記に基づく本登記は,このような制限なく,申請できる。所有権以外の権利は物を全面支配できないので,仮登記に遅れる第三者の権利と両立できる(第三者の権利を抹消しないで良い)からだ。




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