タイ語がロクに喋れないのに「タイ語講座」を開くのはおこがましい。でも、これはあくまでも「コラム」の名前です。タイに行き始めて足かけ10年以上、タイ語を習い初めておよそ10年。タイ語は満足でなくとも、タイ語に関するコラムを書くことはできる。タイ語を材料にタイの文化や歴史、タイ人気質を語れれば本望です。なんて…真面目に語ってしまった。 

【北と南?】(00年6月17日)

 韓国と北朝鮮が歴史的な首脳会談を行った。北と南に分断されて約50年、朝鮮戦争を回顧する写真展など関連行事がバンコクでも企画されている。韓国では北朝鮮のことを北・韓国と表現する(英語では)。北朝鮮は韓国のことを「南・朝鮮」と表現する(同)ではタイ語では?タイ語で韓国は「カオリー・ターイ」だ。ターイは南を指す言葉。だから北朝鮮は「カオリー・ヌア」、ヌアは北のこと。では、カオリーとは朝鮮のことなのか?でも韓国のことは、普段、カオリだけでも通じる。タイ語は、韓国と同じ表現なのか?それとも北朝鮮と同じなのか?まだ疑問は解けない。

【小ギャルは?】(00年6月16日)

 タイでも小ギャルがかっ歩している。サイアムセンターあたりがメインだが、タイ語で小ギャルのことを最近「デックRGB」というらしい。デックはガキのことで、RGBは色の3原色。オレンジや黄色など原色の服を来ていることから名付けられたらしい。直訳すると「原色っ子!」ってことか。むかしは、その手の少女のことを「モダンヒッピー」言ってたようだ。日本の和製英語と同じ響きがあって、とても素敵!!(本気じゃーねーぞ)

【類別詞は大変だ】(00年5月22日)

 普段はいいかげんなタイ語なのに、こと類別詞になると、とたんに複雑になる。なんたって類別詞が多すぎる。日本語なら同じ類別詞で済むのに、タイ語ではそうは行かない場合が多い。動物には「ツア」を使うが、なぜか洋服のシャツにも同じ「ツア」を使う。卵は「バイ」だが、木は「マイ」とか(正確なところは私も分からない)。一番安全なのは、なんにでも使える「アン」とか「ヤーン」だろう。あれ、これとか言う場合には「アン・ニー」、「アン・ナン」で十分に通じる。でも、本当は「レム・ニー」(本1冊の場合)とか言うのが正確だ。このコラムを書きながら、タイ語学校の先生によく怒られたことを思い出した。イヤになってきた。 

【声調が重要です】(00年5月22日)

 タイ語を完全制覇するには、声調をマスターしなければならない。タイ語には声調が5つもある。中国語が4つだから、タイは中国に勝った!(関係ねーけど)。上声、常声、下声のほか、上に上がる声と下に下がって常声になるパターンだ。日本語では同じ発音でも、タイ語では異なるパターンがたくさんある。例えば日本語のマイという。しかし、タイ語では否定の「マイ」に、疑問符の「マイ」、木の「マイ」に燃えるの「マイ」に新しいの「マイ」がある。だからマイ・マイ・マイ・マイとタイ語でいうと、「新しい木は燃えますか?」となる。そんなこと日本人が発音できるわけがない。でもタイ語征服には欠かせない、のです。

【ジャップではなく…】(00年4月18日)

 一度、仕事で米国に行ったときに「ジャップ(jap)」と呼ばれ、むかついたことがある。日本語でも民族差別的な言葉はいくつもあるが、個人的にはかなり気をつけている積もりだ。昔、オートマティック式カメラのことを「バカ○○」カメラと呼んだことがあるけど、今でも無意識に使う人が少なからず居て悲しい。「バカ」という言葉が付いているので、そうした場合は、「これ、私でも使えるカメラですね?」と聞くと、相手はそこでようやく気付く。してやったり、だ。で、タイ語でjapに相当する言葉なにかと言うと、「ユンピー」だ。日本のことを「イープン(yiipun)」を呼ぶけど、それを反対から読んで「yunpii」になったの説があるが、不明だ。あだ名で「ノリピー」ならOKだが、「ユンピー」だとチトやばい(いないか?)。タイ人に「オレ、ユンピーだ」というと、「おーおー、ユンピー、ユンピー」と叫んで喜ぶ。タイ人は誰も気付いてくれない。

【タイ語スラング、です】(00年4月18日)

 日本をたつ前に必要な本を買おうと思って東京神保町のアジア文庫を覗いたら、タイ語のスラング関係の本が目にとまった。これが、なんというか、イカす本なんだ。なかでも使いたくなったのは「ギィーアン」ってスラング。日本語に訳すと、なんというか、まぁ、いわゆる「やりたい」だ。ひとつの単語に例文が複数ついているのだけど、これがまた最高にイケてる。例えば「ギィーアン」の場合だと、「今日はそんなにギィーアンしたいのかい?このオイラを遊びに誘うなんてさ」となる。これがタイ語になると、さらに素敵な響きを持つ。「やるな、こいつ!!」てな感じだ。なんたって「ギィーアン」なんだから。ただし、この本にも注意書きがあるように、タイ語スラングは使い方を間違うと大変なことになる。この「ギィーアン」も親しい男性に聞いたが、そんな言葉よく知ってんな、と言いながらも、「人前では絶対に使わない方が良い」とクギを刺された。人前でなければ良いわけだ、よっしゃー。

【コンドーです!?】(00年4月9日)

 中学校のときアダ名が「ムーさん」ってヤツがいた。体が大きく、おっとりした性格なので、知らない人は「むーみん」から来ていると考える人が多いのだが、彼の名前は「近藤」。そうです。「コンドーム」からきていたのです。タイではよく「コンドー」って言葉を耳にする。最初は「コンドーム」のことかと思って、「なんて恥ずかしい言葉を人前で」と思っていたら、「コンドミニアム」のことだった。集合住宅と訳すより日本語では「マンション」と理解した方が正確か。「いま私コンドーにいるから電話を頂戴」なんて感じだ。ところで日本でよく使う「マンション」は仏語の「豪邸」からきていると聞いたことがある。だから外人に「今度うちのマンションにきてよ」と行ってみたら単なる集合住宅だった、という笑い話を耳にしたことがある。言葉の使い方としては日本人よりタイ人の方が正しい、とも思う。

【タイ語では普通でも…】(00年4月9日)

 日本語では普通でも、タイ語ではヤバイ言葉はいくつかある。「コーヒー」もそのひとつだが、ほかにも綺麗はタイ語では汚いとの意味がある(本当はキー・レイと発音する)。逆にタイ語ではとても普通なのに日本語ではヤバイ言葉も当然ながらある。その代表は「ちんちん」だろう。タイ語では「本当」との意味で、タイ人はよく「チンチン・マイ?」と言うけど、これは「本当?」との意味だ。でも日本の女性が人前で使うには抵抗があるんだろうな。タイ語学校に通っていたとき、先生がある一人のとても美人の生徒(OLだ!)に「チンチン・マイ?」と質問したら、なんか恥ずかしそうに「チンチン・カー」と答えるのを聞いて、やけに熱いモノを感じたことがある(分かる?この気持ち)。ちなみにインドネシア語でチンチンは「指輪」のことらしい。「チンチンがある」とか、「このチンチンは安い」とか言うらしい。上には上がいるものだ。そっちの方が恥ずかしい。

【みなさんアヤさんの世話になってます】(00年4月9日)

 日本からの駐在員は大抵がタイではアヤさんのお世話になっています。アヤさん?つまり「お手伝いさん」のことです。バンコクに住む私の知人も住み込みのアヤさんを月額4500バーツで雇っています。貧しい東北地方(イサーン)からきた20歳の女の子で、家が貧乏なため小学校も卒業できず、裁縫工場で1日20時間近くの超過酷労働を経てアヤさんになったらしい。日本人が住むアパートの1階はアヤさんの住居で、朝7時から夜7時頃まで掃除・洗濯、子守などをする仕組みが普通らしい。日本人だけでなくタイ人の家でもアヤさんは割りとよくある存在ではあります。先日、タイ人が歌うカラオケをみていたらアヤさんがご主人様に手込めにされ、奥様にひどい仕打ちを受けて追い出れる映像が流れてきた。日本人なら笑い飛ばしてしまうのだろうけど、たぶん、あるでんしょうね、タイでは。だからアヤさんには、みんな一人々に壮大なドラマがあるのです。ちなみに私の知人も仕事は以外は女性の股間のことばかり考えている男なので、はっきり言ってとても心配です。なんかあったら…また報告します。

【日本人の名前は短母音で】(00年3月16日)

 タイ語の母音は10個以上もある。日本語では「あいうえお」の5個だけだから、かなり多い方だ。でも「あいうえお」の短母音5個にそれを長く伸ばした「長母音」、さらに「いあ」「うあ」などがあるだけ。文字を読む分には問題ないが、発音がやっかいだ。ただ日本人が悩むのは自分の名前を書くときに短母音にすべきか、長母音を使うべきか。例えば「うちだ」なのか「うちだー」なのか。タイ・フリークにはバンコクでタイ文字の名刺をつくる人が多い。よく見ると大抵は短母音を使っている場合が多いようだ。タイ人の友人も「名前には短母音を使った方がよい」と言われたことがある。理由は不明。でも固有名詞である人の名前には短母音を使うのがタイ語の法則なのかもしれない。今後は注意しておきたい。

【コーヒーは御法度だ、ぞ】(00年2月29日)

 タイに初めていく人には「タイ人の前では絶対にコーヒーって言葉を使ってはいけない」と忠告している。コーは頂戴とか下さいとの意味。ヒーは女性の性器を示す4文字言葉で、日本語に直訳すると「やらせろ」てな感じになる。タイ語を知らない人には何でもないのだけど、一度、飛行機のなかで酔っぱらったオヤジが「コーヒー、コーヒー頂戴」と笑いながら言っていたら、タイ人のスチュワーデスがすごく嫌な顔をしていたので、冗談でもコーヒーって言ってはいけないのだと思った。ソフトな感じで「カフェ」と言いたい。ついでにタイ人の友人が「日本語で女性のアソコのことは何ていうのだ」と聞くので正直に教えたら、人がいるに関わらず朝から4文字言葉を連呼するので閉口したことがある。タイ人にも教えない方が賢明だろう。 

【外来語は使わない方が賢明か】(00年2月21日)

 日本語には外来語という「領域」がちゃんと存在する。最近ではストーカーやセクシャル・ハラスメントなど、英語がそのまま通用する世界がちゃんと存在する。頭の悪い普通のサラリーマンだって「アグレッシュですね」などという単語を飲み屋で使っている。もっとも英語圏では「カラオケ」や「ケイレツ」は有名な日本語でもあるが。では、タイ語はどうなのか?タイでもやはり「外来語」が存在する。「TV」や「モーターサイ」などは日本人も知っているが、昔、友人に「JJ」と言われて怪訝な顔をしたら「チャトチャック公園のことだ」と解説してくれた。その方が若者には受けるらしい。会社で「OT」といえば残業のこと。そんな単語を知る日本人は少ないだろう(知っていても役に立たない)。ただ、タイ語学校の先生によると、「外来語の氾濫をタイ語の専門家は問題にしている」とも聞く。実際、最近では外来語をタイ語に直すことも、昔に比べたら多くなった。たとえば携帯電話だが、昔は「セルラー」で通じたが今では「(トラサッブ)ムー・トゥー(タイ語で手に持つとの意味)」が一般的になった。FAXも昔はそのままFAXと書いていたものが、今では「トー・サン(電話で送る)」と表記する方が多い。外来語からタイ語への帰還、この辺の感覚は日本人より正常なのだろう。

人気者のオカマと不人気のレズ】(00年1月26日)

  タイはオカマが多い。しかも真性が多い。タイで生活したことがある知人によると「男性の10人に一人はオカマ(この場合は男色および女になりたい男との意味)ではないか」とさえ言う。で、そのオカマだがタイ語では「カトゥーイ」という。まぁ、タイを訪れた日本人はすぐに覚えるタイ語でもある。一方、レズのことは「トンボイ」。カトゥーイは「かわいくて面白い」と人気者だが、トンボイは「嫉妬深く、殺傷事件を起こすこともある」と煙たがられている。一度、北部の田舎の友人を訪ね、隣のメシ屋にすげーブス女が居ると思ったら化粧をしたオカマだった。ニッコリ微笑まれてドキドキしたことがある。タイ人の女性と結婚した日本人もお酒を呑むとき小指を立ててると、「オカマみたいなことは辞めて」と注意される。悩みは尽きない。

【オカマ言葉は「ハ」か】(99年11月24日)

 最初にタイ語を習うと、男性は「クラップ」、女性は「カー」と最後に付けると教えられる。丁寧な言い方のときに使うのが普通だが、年下でも女性でもタイ人と話すときは必ず付けるようにしている。プライドが高いタイ人は日本人が最後に「クラップ」と付けると、非常に満足したような顔をする。では、オカマはと言うと「ハ」を使うのが定説になっている。シンハー・ビールと言うときの「ハ」で、小指を立てながらオカマのマネをしてシン「ハ」・ビールと言うと結構、受ける。ただ個人的な経験でいうと飲屋街で見かけたオカマちゃんが実際に「ハ」を使った現場に遭遇したことは、まだない。女性独特の高い声で「カー」と言えず、無理すると「ハ」になるとの説なのだが、日本語でいうところの「お黙り!!」と一緒だろうか。しかし、タイはある意味ではオカマ人社会なので、日本と同じように小バカにした感じで「ハ」を使うと大きなシッペ返しを喰らう(かもしれない)ぞ。

【裏金はお茶代?】(99年11月9日)

 日経ビジネスを発行する日系BP社から突然、図書券が届いた。「先日は読者の窓に投稿して頂きありがとう御座います」と手紙にある。投稿した覚えはないが、図書券5000円が儲かった(投稿に5000円出すとはさすが日経だ)。なるたけ有益な本を買おうと思い神保町のアジア文庫で「日タイ辞書」(国際語学社、3800円)を購入した。これが意外と面白い。タイ日辞書はすでに数冊あり当然ながらタイ語の意味を探すときに使う。これまで、この日本語はタイ語ではなんて言うのかな、と言うことは余り考えたことがなかった。で、だ。カー・ナム・チャーは直訳すると「お茶代」、でもタイ語では「裏金」になる。日本もタイも、まずご馳走することから収賄が始まるのは同じなのか。「ノーパンしゃぶしゃぶ」も20年後には「賄賂」の意味になってたりして。でも、こんなのはまだ序の口、タイ語の奥は深いぞ。