御中道・大沢崩れハイク
2002年5月,今年も恒例の運動会が行なわれた翌日の振替休日,
この日は,子供だけではなく,親も,前日の運動会観戦疲れを恐れて
休暇をとっていたわけだが,今回は日焼け対策を万全にしておいたおかげで
予想以上にダメージが少なかった。
こうなると,げんきんなもので,せっかく子供と同じ日の,それも平日に休めた
のだから何処かに行きたいという気持ちがムクムクと頭をもたげてくる。
そこで,なかなか行く機会がなかった,足慣らしハイキングを急遽計画。
さてどこに行こうかと色々思案したが,せっかくの平日の空き具合を利用しない
わけにはいかないということで,息子と2人で富士のお中道ハイクに行くことにした。
朝6:00前には東京某所を出発し,渋滞らしい渋滞もなく,午前7:00過ぎは
中央高速・談合坂SAに到着。
これでは,到着があまりにもあまりに早すぎるかと,このSAで若干の仮眠を
とっていると,突然の大雨に見舞われた。
でも,そこはそれ,一昨年/昨年の富士登山の経験から,「五合目は雲の上
じゃないの?」と親子二人とも楽観の極み。(これが後で...)
今回のコースは,有名な「お中道→大沢崩れ」の往復ということで,お庭の
駐車場に車を置いて軽い気持ちでいざ出発。
結構な寒さと,やや強い風とガスが気になったが,歩行距離も大したことがない
ので,まあいいかと出発。
← 御庭から見た富士山。ガス&雪。
我々以外にもう一組,男性4〜5人位の一団がいたが,我々と反対方向の
工事用林道みたいな方向へ登っていったので,正当な?石段方面はわれわれ
だけの貸切状態。これはなかなか気分がよい。
← 日も差してきているが,風が強かった。
途中,御中道との合流点となる廃墟の小屋(↓)から,右方向へ針路をとる。
↑左上方向にいくと五合目,右が大沢崩れ。 ↑大沢崩れ方面にきれいな道を歩いていく。
途中,「大沢崩れ云々」と書かれた石票で記念撮影をして林道を下っていくと,
先ほど同時に出発した男性の一団と再開した。
なんと彼らはTVカメラのクルーたちらしく,周辺の花のアップなどを撮影している。
当然,レポーターのお姉さんもいるかと注視するも男だけだった。(残念)
軽く会釈してすれ違い,広い道なりにどんどん下降していく...ところが,
「下降?..お中道は大体水平移動では? この下降はちょっと行き過ぎ?
」
と,かなり歩いてから道を間違えたことに気づき,急いで元来た林道を登る。
戻りながら必死で正しい道を探していたがなかなか見つからず,ふと,
「そういえば,さっきの石票に何か字が..」と思い出し,かなり登って戻って
みると,やはりそこが林道への入り口だったではないか...
(ここで小一時間は無駄になった。口には出さなかったが,息子も不満そう..すまん..)
← これが石票と林道入り口(右上方向)。
で,気を取り直して山道へ突入。
微妙に上下するも,比較的なだらかな山道をすたすた歩く。
周囲には,そこここに雪が残っていたが,なんとも不自然な残り方(一貫性がない)で
不思議ながらも足跡をつけつつ歩いて行った。
息子は,例によって遅れ気味(私が早いのか?)で,やや,いらいらしながらも,
先ほどの道間違いの責任も感じつつ,先行しては待つを繰り返し,ようやく沢に到着。
ここで沢のウンチクをたれながら記念撮影をしたが,沢が要するに崖崩れ現場だと
聞いて,ややびびり気味の息子だった。
その後も,次々と沢を横断して行くが,先に行くほど険しい沢の風景に,なかなか
スリル満点の行程だ。
真面目に落石に注意して小走りで沢を抜けて行った。
↑沢の上部。今にも転がって来そうな大岩.. ↑こんなハシゴ伝いの仮山道もありました。
そうこうして行くうちに,最後のかなりの下りを終えたところで,目的地の大沢休泊所に到着。
林道から1時間半弱というところ。
↑ 立て替えたのか,すごくきれいな小屋でした。でも立ち入り禁止。
ここで昼食を採り空腹を紛らわせたが,歩くのをやめたとたんに,体中の熱が奪われて
いき, 寒い寒い。
持参したお湯で味噌汁を作ったがこれが美味かったのなんの..
食事終了後,あんまり寒いので,大沢崩れが見える見晴らし台までの数百mを登りかけると,
突然,雷鳴が響きわたった。 「げげっ..」
一昨年の夜間登山での雷雨を思い出した私は,今回は子連れであることもあり,さっさと
小屋まで戻り,様子を伺った)
↑ 隙間から撮った「大沢崩れ」の一部..本当は,この風景が凄く見ごたえあるらしいんだけどなぁ..
小屋に戻ると,雷鳴がだんだん近づいてくるのが解ったが,戻る方向に追いかけてくる様子だっ
たので,先に行ってしまおうと,大急ぎでと出発,往路の山道を戻る。
しかし,雲の早さに勝てるわけもなく,雷鳴はだんだん頭上に..
そのうち,雹も降り始めたため,本格的な積乱雲が頭上にあると判断し,木々深い辺りで姿勢を
低くして通り過ぎるのを待つ。
その間,こういう場合の対処方法などを説明して過ごしたが,そうこうしているうちにも,雹が
小豆大にまでなってきて,稲光も見え始めた。
「こりゃ,しばらく動けんなぁ..雹がこれ以上大きくなったら車も心配だなぁ..」
などと考えながら息子を見ると,かなり緊張しているも,そこはさすが男の子。
ビビって身動きできないなどということもなく,かえって凛々しいくらいの表情でじっと耐えている。
そのうち雹が小降りになってきたタイミングをを見計らい,少しずつ前進
(大きく前進すると,雷に追いついてしまうので)
木々の間はまだよいのだが,恐いのは沢。
落石にも注意せねばならないのに,頭上からは雷。
しかも,隠れるところがないので,落ちられたら一巻の終わり。
さすがに二人ともビビリながらも,父親の号令一下,大走りで駆け抜ける。
また息子が遅れてはまずいと,途中で歩を緩めて後ろを見ようとすると,「ドスン」と背中に
激突するものあり。
「どこにこんなパワーがあったんだ!!」と叫びたくなるほど,行きとはえらい違いで先行する
父親を抜かんばかりの物凄いスピードで歩く歩く。
そのままのペースで,行きは結構長く感じた行程を,本当に「アッと言う間」に歩き尽くし,
林道に出る。
ここからは,行きに間違えて下った方を選んでいくと,予想通りスタート地点に戻ることができた。
クルマにもキズ等はなく、心の底から,無事に帰還できたことを感謝したので,恒例のお礼参りの
ため,五合目に移動。
同じく悪天候に驚いて下山し,道端にたたずんでいた自然調査員の青年を,途中まで運んであげ,
観光客がほんの数人の五合目レストハウスでお土産を買い,帰途についた。
この時の様子を,帰宅後,息子に聞いてみたところ,以下のような感想文を
書いてくれた。(以下,抜粋)
「 ・・・
天気が悪くなってきた。
早く引き返そうと,引き返した。
しかし,人間が歩くより雲の方が当然速い。
ひょうが降ってきて,雷も鳴っている。
・・・
ひょうも激しく降っている。
『ドシャーン,ゴロロ...』
頭の上で雷が鳴っている。
もう,死んでしまうかと思った。
でも,あきらめず,最後までお父さんの後を走る,走る。
行きよりも,ぜんぜん早く歩けた(走った?)
自分でも信じられなかった。
やっとのことで,車が見えた。
・・・
」
P.S. ここだけの話
実は、この後,無事に助かったことを祝いながらの帰りの車中にてこんな会話があった。
父 「 しかし,帰りの歩き,ほんまに早かったなぁ。
あんだけ,体力残ってるんやったら,富士登頂なんか軽いもんやで。
ほんますごかったなぁ..」
子 「 うん,あんまり怖かったから,考えられないようなチカラが出たみたい。
こういうのを,『いなばのくそヂカラ』って言うんだっけ? 」
父 「・・・・・ ( おまえは,白ウサギか !!! ) 」