やさしい心
                                     作:ko2001


「ぼうや,もうすぐ,ママお出かけするから,お昼ご飯は,
机の上のを暖めて食べてね。」
「うん,わかった。でも,ママは今日お仕事お休みじゃなかったの?」
「ううん,今日はお仕事じゃなくてボランティアに行ってくるの。
マー君たちのママと一緒に,ご飯が食べられない人に炊き出しをしに行くの。」
「ふーん。じゃその人たちはご飯が食べられるんだ。」
「そうよ。じゃ,行ってきまーす」
「いってらっしゃーい。がんばってね。」

−−−−

「ママ,さっき買ったパン,おやつの時間に食べてもいいの?」
「3時になったらね。」
「わーい。僕,クリームパン大好きなんだ」
                ・
                ・
「あ,ママ見て。あんなところに,汚れた服を着たおじさんが
寝てるよ。ダンボールを敷いてるけど寒くないのかなぁ?
そうだ,さっきのパン,一つあのおじさんにあげてきてもいい,ママ?」
「そんなことしなくてもいいの。ほうっておきなさい。」
「でも,おなか空いてるんじゃないの,あのおじさん」
「そんなことはあなたが考えなくてもいいの。さっ,行くわよ。」
「.....」

−−−−

「パパ,二人で電車でお出かけするのって,久しぶりだね。」
「そうだね。いつも,みんな一緒だからな。」
                ・
                ・
「パパ,あの車のタイヤみたいなのがついたやつなに?」
「あれは,電動車椅子っていって,手で動かせない人でも乗れる車椅子なんだよ」
「ふーん,あれって,階段も登れるの?」
「あれじゃ,階段は登れないよ。タイやも小さいし。」
「なんだか,登りたそうにしてるよ。駅員さんが手伝ってって言ってるよ」
「そうか,じゃ,パパも手伝ってくるか。おまえはここで待ってなさい」
「はい」
                ・
                ・
「ねえねえ,あの車椅子って重いの?」
「あぁ。電動車椅子はすごく重いんだ。だから,6人で運んでたろ?」
「あの人,電車に乗れたの?」
「上まで行ったら,丁度電車が来たんだ。大丈夫だったよ。」
「そう,よかったね。」

−−−−

「おい,急げよ。電車が来るよ。」
「待ってよー,パパ。」
                 ・
                 ・
「パパ,階段を大きな荷物を持ったおばあさんが登って来るよ。
荷物が重いんじゃないのかな?
僕,手伝ってきてもいい?」
「だめだめ,もう電車がくるよ。この次の電車までは,10分も待つんだから。」
「でも,あのおばあさん,何度も途中で休んでいるよ。なんだか,つらそうだよ。」
「そのうち,登ってくるさ。さあ,電車が来たぞ。」
「.....」

−−−−


「ねぇねぇ,敬老の日ってなあに?」
「お年寄りに感謝する日だよ。」
「どうして感謝するの?」
「今のパパやママやお前達が,こうして生きているのも.昔,今のお年寄りが
一生懸命働いてくれたからなんだよ。
だから,いろいろありがとうって,感謝するんだよ。」
「ふーん,そうなんだ。お年寄りのおかげなんだ...」

−−−−

「もしもし,おばあちゃん?ぼくだよ。うん,元気。みんなも元気。
今年のお正月は,行かないって言ってたよ。パパが。
うん,うん,じゃあね。ばいばい。」
                   ・
                   ・
「パパ,ママ,今度のお休みも,おじいちゃん家に行かないの?」
「お正月は動くのが大変だしね。休みも短いし。」
「でも,おばあちゃん,会いたいって言ってたよ。」
「いいの。パパもママもいろいろいろ忙しいんだから。」
「おじいちゃんも,おばあちゃんも寂しがっていたよ。
ぼく,行きたいよ。」
「だめだめ,行かないよ。年寄りのお守りに行っても疲れるだけだし。」
「.....」

−−−−

パパ,ママ,みんな同じじゃないの?

                      END


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