イミテーション
                                 作:ko2001


  (1999年5月某日 TVニュース各社による報道)
  「...○○社△△△研究所で,本物そっくりの魚のロボットが
   公開されました。この公開用魚ロボットは,鯛の形を模しており
   本物そっくりに動きます。これとは別に,シーラカンスロボットの
   作成にも成功しており,◎◎◎◎工学博士によると,近い将来,
   水族館などの魚を,すべてこのロボットに置き換えることも夢では
   ないとのことです。
   次に,....」             


  「くそう。我々より後に研究を始めて,それも実用化が簡単な
   魚なんかを 大々的に発表しやがって.....
   我々が最初に日の目を見る筈であったのに...          」

  「まあ,そんなにくよくよするな。たかが魚じゃないか。
   所詮,子供だましの代物だ。
   それに,どうあがいても,我々の研究は栄光に結びつかないことは
   君も知っている筈じゃないか。                  」

  「確かに....その通りですね。でも,悔しいですね。技術屋として。」

  「我々は任務に忠実であれば良いのだ。
   ところで,T1型ロボットの連続動作テストの様子はどうだ?    」

  「現在,2ヶ月から1年までの動作のシミュレート確認が終了しています。」

  「オーケイ。丁度良かった。
   今朝がた,内閣調査室から本件の公表可能時期について,3度目の
   問い合わせがあったばかりだ。
   そろそろ,準備完了と回答してもよいな。             」

  「はい,問題ありません。T1型なら。
   しかし,T2型ロボットのテストがトラブルで進捗していません。
   やはり,成体型なので,脚構造へのダメージが大きいためかと,   」

  「あと1年あれば,トラブルの解決と全テストの完了は可能な筈だ。
   もう,一刻の猶予もならんのだ。
   10ヶ月で完了させろ。これは絶対命令だ。            
   明日,内閣調査室にプロジェクトTのフェーズ2発動を伝える。   」

  「しかし,T0型ロボットは,開発を中断したままですが。
   2ヶ月間はどうなさるおつもりですか?              」

  「マスコミ対策用写真は,CG合成したものをモノクロで配布する方向で
   準備が完了している。所詮,新聞の写真だ。だれも気づくまい。
   あんな,見世物の魚などではなく,誰にもイミテーションとばれない
   完璧なロボットを,我々は世に送り出すのだ。           」


  翌日のTV/新聞報道より

  
「トキのひなが誕生しました.....    」


            
                   END


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