平和条約
                            作:ko2001

「 こちら,条約締結会場前です。
過去数十年にわたって一種の冷戦状態となっていた,エイリアンとの和平が
実現し,今,まさにその平和条約が調印されようという歴史的瞬間に立ち会って
いるのです。
この地で.このような..。
いっ今,壇上にアメリカ大統領とエイリアンの特使が姿を見せました。

壇上の書類に,それぞれサインを...し終わりました。
固い握手を交わしています。

これで,これで我々人類は,名実ともに宇宙進出を果たしたといえます...」

「 興奮覚めやらぬ現場からの,あつい中継でした。
間もなく,今度はエイリアン特使からの挨拶がある模様です。
それでは,どうぞ 」

「 ○▼△■●?・+:*@@¥#・・・・(以下翻訳。。。)

(地球のみなさん,本日の条約締結により,我々とみなさんの安全は保障され
共にユニバースとして生きていくことが出来ることを大変喜ばしく思います。

思えば,過去,数百年にわたり,調査のためとは言え,この親愛なる地球人の
方々をお連れして,各種実験にご協力願ったことに関しては,苦痛に感じた
方も居られたという点で,非常に遺憾に思います。
今後は,我々の新技術を有効利用することによって,皆様にこのような
一切の苦痛を与えることもなくなり,まさに平和条約の名前にふさわしい
と言える状況が生まれることでしょう。
わたし達の明るい未来に対して...(翻訳不可能。。。) 」


「 最後は,エイリアン語でのエールだそうです。
人類史上,最大のすばらしいニュースでした。。。。。
次に.... 」


こうして,人類は平和に浮かれ,宇宙新時代の幕開けと馬鹿騒ぎをし,
イニシャティブをとった米国のすべての産業の株価は急騰するわ,
EUとロシアは共同で,巨大な宇宙港を建設するわ,国際宇宙ステーション
計画は, 突然,月面基地計画/火星都市計画/天王星植民地計画へと姿を変え
とにかく,地球全体がこの事態に沸き上がった。

一方,エイリアン達は,条約の締結内容通り,自由に地球上を闊歩して
いた。
その締結内容には,以下の事項が含まれていた。

・ エイリアンによる,実験材料としての,あらゆる生命体の地球からの
持ち出しを禁ずる。
その代案として,生命体から排出,もしくは放出される廃棄物に関しては
この持ちだしを許可する。

実際,地球上でのエイリアンの作業は,各種廃棄物の選別と,その運搬に
限られていた。
エイリアン達は,当初危惧された,秘密裏による地球生命体の持ち出しという
ルール違反を起こすこともなく,黙々と廃棄物集めにいそしみ,いつしか,
地球人達もその光景を当たり前のように感じ始め,いつしか,地球人の
エージェントを仲介にした,廃棄物処分会社として機能するまでになった。

地球では,一時騒然となったダイオキシン問題などの恒久的な解決策として
このエイリアン達の地道な活動を喜び,そのうち,ゴミ屋さんと揶揄する
不届き者まで現れる始末であった。

だが,いくら廃棄物とは言え,地球からの一方的な持ち出しを危惧する
声も上がったが,これも,エイリアンの星からの,地球生物の逆輸入という
方法により,解決されるにいたった。
エイリアン達は,地球から持ち出した廃棄物の中から,地球生命体の
細胞を探し出し,そののずば抜けたクローン技術によって,生物自体を
再生していたのだ。
これにより,地球上での食糧難も解決し,すべての車輪がうまく回り
出したに見えた。

もちろん,技術的交流により,地球の技術力も飛躍的に進歩し,自前の
宇宙船による太陽系内開発も活発に行われるなど,人類はその足跡を
一歩一歩着実に広げていった。


だが,この一見平和に見えた状態も,長くは続なかった。

地球首脳による親善訪問団のエイリアン母星訪問の直後,地球側から
条約の一方的破棄に続き,遂には全面戦争へと突入したのだ。

そう,人類は見てしまったのだ。

エイリアン母星で,エイリアンの食材となっていた,クローン人間達の
姿を.....


              
END


              
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