緊急企画 脳死移植
                                     作:ko2001


「こちらでは,先ほどから,脳死移植の希望の患者の,臓器移植法に基づく
脳死判定が行われておりましたが,未だ脳死状態ではないとの結論が
くだされ,現時点での,日本初の脳死移植は実現せず,再度,臨床的な
脳死診断を改めて行うこととなりました。」


「それじゃ,街頭インタビューでしめようか。
10時のニュース時間の拡大枠用のソースだから,5人はとる必要が
あるぞ。急げ。

病院周りのヘリからのレポートの間に順次入れていくことにするから,
なるべく違う層をねらえ」

「はい,ディレクター」


「今回の脳死判定が覆った件について,ここ,東京丸の内にて通行中の
かたにインタビューしてみます。
まずは,あのサラリーマンの方にご意見を伺いましょう。すいません...」

「いやー,非常に残念です。日本初の臓器移植法適用だったんでしょ?
一刻も早く移植を待ちわびている患者さんに提供してあげてほしいです
なぁ。ははは。」


「 次は,若いOLの方のご意見をを伺ってみましょう。すいません...」

「 えぇ,ニュースで見ました。一回脳死みたくなっちゃったら,どうせ
もう戻らないんだから,はやくゴーを出してあげればいいと思います。」


「 **党党本部の参謀補佐の方に伺ってみましょう。すいません。。。。」

「 こういう前例は,一回目が大事なんですよ。一回成功すれば,2回3回と
スムーズに進むんですよ。病院で一回脳死だと診断されたんでしょ?
それなのに,変に診断をやり直すからこうやって...いっいや,必要な
手続きですから,当然行われるべきなんですがね。アハッアハッ。

でも,残念ですなぁ。この判定がこんな地方ではなく,こちらの選挙区,
いや大都市圏で行われていれば,もっとスムーズに運んでいたのにねぇ。」


「 買い物帰りの主婦の方に伺ってみましょう。すいません....」

「 はい,昨日の夜のニュースで見ました。
えっ,また臓器移植されていないんですか?
あらまぁ,どうしましょう。

でも,お医者様が決めることだから,どうしようもありませんしね」


「ディレクター,大体こんなもんでしょうか? 」

「うーん,あと一人,違ったソースが欲しいなぁ。

あれはどうだ?
あの公園でたむろしている人たちの中の,比較的小ぎれいなやつは。
あの。紺のブレザー着てるやつにしよう。

訳のわからんこと言い出したら,すぐに切れ。テープも少ないからな」


「では,もうひとかた,この公園にいらっしゃる男性にお聞きしてみましょう。すいません...
あの,日本初の臓器移植になるかどうかで今話題になっている,脳死判定のことについて
ご意見をお伺いしたいのですが...ニュースとかご覧になりましたか....? 」

「あぁ,見たよ。そこの電気屋のテレビでね」

「そうですか。どのように感じられましたか?ご覧になって。
移植を待ちわびている患者さんもすでにいるということなんですが....」

「だって,まだ死んでないんでしょ? そのドナーのひと。 」

「今,その脳死判定を,今か今かと待ちわびているんですが....」

「あんたよう,キレイな服着て済ました顔で話しているけどよう,
もし,あんたの親ごさんがそのドナーでも,そうやって取材できるんかい?」


                       END


     注意:この作品は,2/26のニュースソースを見ていて,ついつい気になってしまったので,
         内容に異論なり,「まんまやんけ」ちゅうこともありましょうが,作者の気持ちの高ぶり
         だと思って,ご理解(ご容赦)ください。
         これは,問題提起作品です。皆さんの意見をお待ちしております。


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