クリスマス記念特別企画

      おとり捜査


                                  作:ko2001


冷たい雨が降っている,12月のある夜。俺は,またいつもの席で
ロックを舐めている。あたりを伺いながら。
こうして,この店に来るようになってから,何ヶ月経つのだろう?

事の始まりは,一本の電話だった。
「大阪の場末の反則屋という酒場の主人が,幼女誘拐の犯人らしい...」
電話の,その一言が俺の魂を呼び起こした。「幼女誘拐?」

許せない。この大阪の街で,そのような場所が存在することが。
許せない。絶対に。
許せない。

早速,次の日から,調査を開始した。
頼れる情報筋には,すべてあたった。
以外にも,簡単にその場所は分かった。
しかし,用意されたかのように同じ言葉が付いて来たのだ。
「あそこには,近づかないほうがよい.....」

だが,俺はそんな言葉に耳を貸さなかった。俺には俺の信念がある。

そうして,俺は,この店の常連として客に受け入れられるまで,
そこに通いつめた。毎日,毎日。

月日は容赦なく過ぎて行く。
俺は,勤めを辞めることを余儀なくされた。
それでも,俺は通いつめた。毎日,毎日,
耳をそばだてていた。毎日,毎日,

そして,ある日,常連客の話から,ついに重大な情報を得た。
その狭い店内には,他に店主の住むという奥の間と,トイレしかない。
その奥の間に,店長が隠しているというのだ。子供用ブルマを。
やはり睨んだ通り,この店には何かある。
俺は小躍りしたくなる体を押さえつけ,常連客とのバカ話に興じていた。

ところが,翌日,いつもの通り暗くなる前から店に顔を出して驚いた。
店の中には,まるで万国旗のように釣り下げられたブルマがあったのだ。

店長に違いない。やつは,話題に出たことに危険を感じ,自ら人目に
さらす作戦に出たのだ。
こうなったら,一刻の猶予もない。
早くあのブルマを手に入れて,そこにあるであろう少女の痕跡を探す
しかない。

だが,俺は焦った。
まだ,日も高いうちから,店内がごった返しているのだ。

なんなんだ?今日に限って。

いつもなら,2〜3人入ればよいところだが,今日は,ひぃふぅみぃ...とぉ。
10人?
ほとんど,常連総出ではないか。

しかし,俺は考えた。
こんな狭いところに,これだけの人数である。
おあつらえ向きに動きが隠されるに違いない。

そして俺は話しの輪に加わりながら,徐々に例の万国旗に近づいた。
そぉっと,そぉっと。

話好きのおばさん3人の後ろをくぐり抜け,
水着写真を見せ合ってもめる若者二人に適当に相づちを打ちながら,
じゃれつく猫を踏まないように足で脇にどけ,
トイレの前で訳の分からぬ会話に興ずる男二人を横目で見ながら,
ようやく,最後の難関,店長の後ろに位置することに成功した。

後は,すぐそこにあるブルマを手に入れるだけだ。

俺はそっと手を伸ばし,それをつかんだ。
あぁ,これでブルマに消えた女の子の名前が書かれていたら,あの奥の間に
その少女達がいるに違いない。

俺は,感激のあまり,ふっと気を抜いた,。
その時,視野の角でキラリと光る物に,気がついた。
「うっ..」 激しい痛みと同時に,伸ばした手に深々と刺さる物が目に入った。
それは,あらゆる光を跳ね返さんと,燦然と輝くメスであった。

あの,医者やろう,いつの間に...
振り向いた俺の目に,ニヒルな白衣姿がにやりと笑った。
間髪を入れずに俺につかみ掛かるたくさんの手,手,手...

気が付くと,俺の手足には,9本の手錠が。

くそ,はめられたか。
俺はそれでも,必死に抵抗を試み,何とか玄関から飛び出すことに
成功した。しかし,その瞬間,強烈なタックルを受け道路に転がった。
かすれゆく意識の中で,ほのかにコーヒーの香りがした。



次に目が覚めた時,俺は留置所の中だった。
なんということだ。これだけ時間をかけた作戦だったのに。
あぁ,あのブルマに消えた女の子の名前が書かれていたら,あの奥の間に
その少女達がいたに違いない。
そうすれば,彼女らのブルマは全部俺の物だったのに....


                END


  Cast    店長               ぶらふ
         話好きのおばさん        ひまひま,おばば,まみ
         水着写真を見せ合う若者  じゅう,まめ
         じゃれつく猫          理江猫
         トイレの前の男二人      インガ,Unchi
         医者               Tom
         タックル少女          SKIT

         犯人              ????


                 
戻る