六題小噺

                   作:ko2001

チャカチャンリンチャンリンチャンリン..ドンドン。

えー,毎度バカバカしいお笑いを一席。

「おい,八兵衛はおるか」

「へーい,あっ,これはご隠居。ようお越し。」

「ようお越しやあれへんがな。今日は連れ立って出かけるさかい
 準備しとくように言うといたやろ?できてるんかいな?   」

「はー。何持って行きまひょ?」

「何言うて,おまはんの家ん中には,布団しかあれへんがな。
 何も持たいでええさかい,早よ出ておいで。」

「へーーい」

ってなもんで,二人連れ立ってにぎやかな方へ向かって歩いていきます。

「ご隠居はん」

「なんや?」

「今日は一体全体どこへ連れてってくれはりますんですか?」

「今日はな,アホなおまはんを勉強させたげよと思うて,博物館ちゅう
 ところに行くんや。黙ってついておいで。            」

「はくぶつかん でっか? なんぞ,うまい羊羹でも売ってまんのんか?」

「なんも知らへんねんな。そやから,おまはんはアホやアホやと言われん
 ねんがな。                           」

「ヘヘー,おおきに」

「礼言うてる場合やないがな。今日は博物館で珍しい舶来の見世物がある
 ちゅうんで,来たんやがな。さっさとついておいで。        」

・・・・

「着いたで。」

「えらい,いきなりでんな。ご隠居はん。」

「細かいこと,気にしいな。ほれ,ここが入り口や。ここから入って
 あの奥のガラス張りの入れ物がそうみたいやな。行くで。    」

「ちょっと,待っとおくんなはれ,ご隠居はん」

「ほら,これや。これが今日の目玉や。」

「なんや,
ええ男はんが中に入ってまんな。
 これ,なんでんの?」

「見た通りやがな。
 これが,ヨーロッパから来た,最後の吸血鬼の屍やがな」

「ヘー,これが吸血鬼でっか。うわさには聞いてましたが,
 歳の頃なら35〜6で色白の
ダンディーな紳士でんがな。
 まだ,生きてまんのか?               」

「何を聞いてんねんや,こいつは。屍やっちゅうたやろ?
 とうの昔に死んでるがな。
 昔は,若いおなごはんの血ぃ吸うて,えらい騒ぎを起こした
 らしいけど,とうとう一族が死に絶えて,最後の一人に
 なってしもたらしいがな。
 人間でも一緒やけど,やっぱり一人ぼっちは寂しいもんやで。
 そやから,この吸血鬼はんもこうやって安らかに死ねた方が
 幸せやったんやで。」

「吸血一族の陰謀...
ハッピーエンドちゅうやつでっか」

「まあそう言うところやな。
 おまはんも,ちぃとは気が利いたこと言えるねんな」

「またご隠居,そんなこと言う。
 せっかく,この吸血鬼の話を思い出して,
シリアスな気分に
 なろうと思うてるんでっさかい,邪魔せんといてや。
 わいは,吸血鬼や。吸血鬼ドラえもんや.....」

「アホか,おまはんは。たまにええこと言うたかと思うたら
 吸血鬼ドラえもんやと?
 そんなアホやさかい,近所のガキにも馬鹿にされるんやがな。
 ホンマもんのアホやなぁ。おまえは。         」

「そないアホアホちゅうて,ポンポンぽんぽん言わんでもよろしいがな。
 そら,ご隠居はんは偉いですわな。何でも知ってるしね。
 わたいらみたいなアホとは出来が違うがな。        」

「そない,むきにならんでもええがな。わしが悪かったがな。  」

「いいや,わたいのか弱い心は,たった今傷つきましたがな。
 ほんなら,アホが物尋ねさしてもらいまひょうか。
 ご隠居はんやったら,この吸血鬼の名前知ってるんでっしゃろな?
 何て言う名前でっか? さあさあ...           」
     ・
     ・
「しらん」

お後がよろしいようで....


(注釈)この作品は,Silanized_Manさんからいただいた,以下のお題を元に作らせていただきました。
    1.私をダンディな紳士として描写すること.
    2.ハッピーエンドにすること.
    3.ドタバタ,ベタベタはだめ.
    4.シリアスな話にすること.
    5.職業は出さないこと.
    6.家族も出さないこと.

(また,本編の登場人物は,実在の人物とは一切関係ありません。多分)

              END

               
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