ネット社会史

                             作:ko2001


   それでは,午後の公演を始めます。
   今回は,前回に引き続き,コミュニケーションの歴史です。
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   ....コミュニケーションの手段として,コンピュータ
   ネットワークが使われ始めたのはこの頃からです。
   大まかには,会話 → 手紙 → 電話 と来たコミュニケーション
  手段に,迅速性,簡便性が加わったため,多少の初期投資,当時は
  誰でもコンピュータを持っている時代ではなかったために,その
  機械を購入する必要があった訳ですね。
  はい,君...

  その機械は,当時どの位の価値があったのでしょうか?

   よい質問ですね。
   当時の通貨単位で,150,000日本円,今の君たちの価値単位だと,
  30ワークス,国際通貨単位で1,500sol位でしょうか。
   とにかく,このネットワークコミュニケーションは個対個の
  究極の形として,当時爆発的に流行して,ついには,標準の
  コミュニケーション方法として,全世界で用いられるように
  なっていきました。
   その速度たるや,すさまじいの一言で,この方法以外での
  コミュニケートが不可能な社会が出来上がったのです。
   みんな,ネットスーツを着て,たとえ,家族間の会話であろうとも
  全てこの方法をとる社会ができあがりました。
   そのため,人類は,音声によるコミュニケーションを放棄する
  ことになっていったのです。
   このことは,ファッションにも影響を及ぼし,単なる生殖器としての
  位置づけが主となった”クチ”は,表面に出すことさえタブー扱いとなって
  「フェイスパンツ」で覆い隠すことが常識になってしまいました。
  もちろん,当時はまだ,食料の摂取も”クチ”で行っていましたが,食事
  自体,他人と一緒にとることが無くなっていたのですから,他人の前で
  生殖器をひけらかす必要はなかったわけですね。

       (笑い)

   さて,時代は過ぎて,ソル紀元3700年頃になると,再び,ネットによる
  コミュニケートを問題視する傾向が見られてきました。
   やはり,人と人で直接コミュニケーションをとるメリットが見直されて
  来たのですね。そのための手段も手に入れたことですし。
   そうなれば,ネットコミュニケーションが廃れるまでに,そう時間は
  かかりませんでした。それこそ,あっという間の変遷を遂げたのです。

   そうして,始まったのが,今の生活体系の構築だったのです。
   我々は,ようやく,コミュニケートの模索に終止符を打つことができた
  のです。


   集まった群衆は,老若男女を問わず,熱心に聞き入っていた。
   その広いコミュニケートルームは,不気味なまでに,静まりかえっていた。

   みな,プロフェッサーの念に,意識を集中していた。

   その時,中でも一番の若者が,恥ずかしそうに挙手し,質問を行った。


   あっ,あの,”クチ”とは,一体なんですか?


                         END


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