メリ−クリスマス2015

                                  作:ko2001


「メリ−クリスマス,同志諸君。」
メリ−クリスマス
「我々は,今宵こそは.....」
      ・
      ・
      ・
1999年に,それは起こった。
ノストラダムスの,かの有名な予言が成就されるか否かで
世界中が揺れていた年。
信ずる者も,信じざる者も,世界は固唾を飲んで見守った。
そして,7月,8月,9月...。
結局,何事も起こらず,世間は安堵のため息をそれとなく漏らし,
いつもの平凡な生活に戻っていった。
だが,誰も気が付かなかったことがあった。
「1999年7の月」が,実は西暦1999年12月を指していた
ということを。

そして奴等はやってきた。深夜の地球に,音もなく。
地球人が,誰一人として存在を疑わない存在と日時を選んで。
そう,1999年12月24日,サンタクロースとして。

奴等の目的は,未だ定かではない。
しかし奴等は,地球人の弱者,すなわち女子供をターゲットにして,
卑劣にも,プレゼント様のBOXを各戸にばらまいて行ったのだ。

プレゼントを待ちわびた朝を迎えた子供たちは,我先にそのBOXを
開いた。そのとたん,中から飛び出した「それ」に,その体を食い
ちぎられていった。無防備な子供達はそのほとんどが死滅した。

文明国家を自負する国の人々は,ことごとくこの罠にかかり,餌食に
なっていった。家族を犠牲にされた男どもも,なすすべを知らず,
世情不安から経済危機を引き起こし,局地間戦争,世界大戦が勃発。
そして,国家が消滅した。たった一つを除いて。

残された人類は,唯一の国家に集結した。
宗教とまったく無縁に生きてきた,チベットの小国に。
もう一度,奴等と戦うために。
奴等が食指を伸ばすに値する文明国家をもう一度築くために。
そしてついに,その時がやってきた。
西暦2015年12月24日。

「 メリ−クリスマス,同志諸君。」
メリ−クリスマス。」
「 我々は,今宵こそは,奴等に目に物を見せてやろうではないか。」
メリークリスマス。」
「 これまでの苦難の道を,奴等にぶつけるぞ。」
メリークリスマス。」
「 16年前のあの日,子供達が死んでいったあと,大人たちには
いったい何ができたのか?
だが,我々は違うぞ。なすべきことはすべて知っている。
奴等を殲滅するのだ。失われた人類のために戦い抜くのだ。」
メリークリスマス。 メリークリスマス。 メリークリスマス。」

そうさ,決戦の時は来た。
我が兄弟の恨みを,今宵の戦いで晴らしてやる。
たとえ,この身が砕けようとも。

今宵は,聖夜。待ちに待った,聖戦の夜。
メリークリスマス」は同士の誓い。
メリークリスマス」は勝利のエール。

「 奴等が降下してきたぞ。全員配置につけ。勝利は我らの手に。
メリークリスマス!!」
メリークリスマス。 メリークリスマス。 メリークリスマス。」

思わず身震いが,いや,武者震いという奴さ。
これから,生まれて初めての戦争に行く。
悲しむ者も誰もいない。

「行くぞ。」「
オー
皆,その手を高々と掲げた。

俺も満身の力を込めて,右手を天に向けて突き出した。
そう,かつて,その拳があった場所に,満身の力を込めて。

 
               END

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