直売養鶏場における野外病原性ウイルス対策



最近 アメリカ ペンシルバニアほか一州でスワイニンフルエンザH1N1が人間の子供に感染したとの報道があった。こうなるとご都合的にH5,H7タイプだけを標的として対策をたてるだけでは不充分である。国がこれまでに指導してきた対策はそのご都合主義もいいところであって直売野外型養鶏に対しては全く効果はない。一方、真に対策を立てやすいのはウインドレス鶏舎ではなく野外一段式鶏舎である。

(1) 飛沫核感染を防ぐ
過去のニューカッスル病の経験でもそうだが野外では接触による高濃度感染以外は通常感染は起こらない。このことから今年の出水の鶴の場合も予めホームページで数十羽位の衰弱個体が残る位と予測したが実際はそれすら残らなかった。要するに鳥の場合も人間のそれと同様に 空気の滞留による飛沫核感染 さえ避ければ野外ではかなりの個体密度があっても流行は起きないことがはっきりした。その意味で 明らかに空気が滞留する2センチ角の網で鶏舎を覆うのは最悪である。また野外ウイルスを舎内に持ち込む一番恐れのあるハエ、クロバエ対策にまるでなっていない。これなどご都合主義対策の最たるものである。

(2) 感染させない (抗体を残さない)
本来ならば特定の病原体に対してはその免疫抗体を持たせることが重要である。ところが清浄国論の我が国にあっては特定の病原体に対してはそれを持つことが許されず、抗体を持つだけで疑似患畜として摘発淘汰の対象となる。従ってたとえ無毒のウイルスといえども絶対に感染させてはならないことになる。

細菌と違ってウイルスは通常多重感染はしない。従って野外毒の感染を防ぐには飼養鶏の被感染器官粘膜の細胞をあらかじめ他の無毒のウイルスで占拠しておくことが重要である。過去のニューカッスル病の経験では一次感染発見後の緊急生ワクスプレーでも、後の二次感染を完全に阻止した。こうした場合はスプレーワクチンによる抗体の上がりを待つ時間的余裕は全くない。どちらが先に細胞を占拠するかという早さの問題であり競合排除することがすべてである。

これより以前に日常管理では疾病鶏をいかに早く摘発淘汰するかが大切である。鶏の病気には出刃包丁という先人の教えはあまりにも鶏命軽視に聞こえるが一旦アウトブレイクすればそれこそジェノサイドである。病性鑑定結果を待つ余裕はどこにもない。

一段式解放鶏舎での呼吸器病の感染は接触する個体の飛沫感染が主である。NDのような重大な疾病でも一次感染で摘発出来れば緊急のワクチンスプレーによって先回りすることが出来ることは既に経験済みである。ただ野外毒の抗体を残さない為には先回り出来なかった個体の淘汰も大切である。その辺の見分けが野外毒が弱毒化することによってより困難になる。緊急ワクチンだけでは対処出来ぬ所以であり流行時には頻繁なワクチネーションが必要となる。

H 23 9 6 by I,SHINOHARA