『お問い合わせに対する返事のページ』


篠原養鶏場場長様
「卵殻強度、きめ細かく、卵黄卵白の盛り上がりハウユニツト値が高く味は濃厚で美味しさ申し分ございませんでした。他養鶏場の「特殊卵orこだわりの卵」等とは比較になりません。
お尋ねの件
配合飼料及びサプリメントに関し
1,栄養強化orアミノ酸等に関して何かご使用になっていますか?
2,消化酵素(フチン分解酵素、プロテアーゼ、セルラーゼ等)
3,脱臭剤等



メールを有り難うございました。
昭和35年、いわゆる60年安保の年に日配の西川哲三郎博士が渡米し、彼地では残った動物油脂を飼料に還元して低蛋白高エネルギー型の配合が普通であるとして、それまでの森本博士達の飼養標準TDN63%のオールマッシュを穀類60%に油脂を加えたアメリカ型のニューマッシュに切り替えました。私はこのことが日本の卵を不味くした原因と捉え西川博士は有名な美食家だったにもかかわらず、日本の卵を不味くしたのは貴方の伯父さんだと、その甥の足立さんによく話したものです。

現代の飼養システムではカロリーを20%落とすと生産は激減します。初期のヨード卵光は実際海草を使ったもののその程度でも産卵が激減して契約農家の苦情が殺到したといいます。

東京農大新井教授の教室で数年特殊卵の研究をしていましたが、そのときも3000キロカロリーの配合では原料がトーモロコシなど60%、大豆粕など20%が動かせないので卵の味まで変えるのは困難だと進言しました。逆にうちのように2500キロカロリー以内だと味付けは自由になります。ただ卵は汎用食品で特定の味を付けると用途によって使えなくなるのが問題です。だから用途を限定すればそれにぴったりの卵は容易く出来ますがこれは一般的ではありません。ただ基本的に問題なのは特に大豆粕はヘキサナールが出来易く、卵が古くなると青臭くなりこれが卵嫌いをつくります。学者はトリメチルアミンだと言いますがあれはウソで今では一般にそんなに魚粉を使っていないのに今の卵は保存するとてきめん臭くなり嫌われます。本来は卵は保存するほど料理原料としてはうま味が出る筈、つまりペプタイドの恩恵を受ける筈が実は餌が高エネルギーで原料が片寄るため、リポキシゲナーゼが問題になってしまうのです。

要するに何をどう配合すればどんな味の卵になるというのを研究するのがうまい卵作りの基本で料理と同じですから敢えて「卵は作品」とうたっているわけです。

さりとて高カロリー飼料に和食向けとして魚粉10%などを加えますととたんにジゼロシン中毒を起こしますのでそれに相当するアルファルファなどを加えますと総カロリーは激減し産卵は滅茶滅茶になりかねず、これが卵の味での差別化が進まない理由です。

(1) ビタミン、ミネラルのプレミックス、第2リンカル、カキガラ
(2) 糟糠類の発酵のためにグルーテンフィードを利用しています。
(3) 脱臭剤は味作りの大敵で本来の風味を消してしまいます。

臭いを消すのではなく、風味として捉えそれを組み立てるのが基本です。経験上、一般に有効なもの、例えばゼオライトなどはだめです。また木酢酸は卵を固めてしまい台なしにします。箸で持ち上がるなどとんでもないこと、要するにスポンジ卵です。同じ意味でコプラミール、綿実粕など論外です。使うのはパプリカ、ターメリック、ガーリックなどの香辛料でこれは大切です。

少し回りくどくなりましたが同業の見学者の場合も基本理念を理解して呉れません。その辺を願って出来る限り問題点も含め大本から説明して対応していますので適当に割愛して下さいませ。

どうも有り難うございました。 末筆ながら先生のご健康を祈り上げます 敬具 。

平成16年 11月 22日





篠原様こんにちは。初めてホームページを拝見させて頂きました。現在ドイツ在住の主婦です。鶏や卵に関しては全くのド素人です。なぜ篠原様のホームページにたどり着いたかと言いますと、やはりドイツの卵のサルモネラ菌が心配だったからです。
友人に、ドイツの卵の中にある赤い血の塊のようなものは、サルモネラ菌の塊だと聞いて、それ以来そのような卵は捨てていましたが、(かなりの確率で出てくる)やはりそれは有り得ませんよね?2歳の娘もいるので、一応よく火は通しますが、どんぶり物など、半熟も恋しいし、卵ご飯も恋しいです。どのような卵をどう食べればおいしく頂けるのか、今後こちらの主婦の課題です。よその国の事情まで面倒見きれないほどお忙しいとは思いますが、気長にお返事を待っています。



ドイツからのメールを有り難うございました。取り敢えず要点だけ申し上げて見ようと思います。
健全な卵はよほど劣悪な環境で保存しない限りはなかなか腐りません。これは腐敗菌が中に入れないからです。特に日本人は生卵の場合でも、この何処にでも居る腐敗菌をモニターして(腐ったから食べられないというように)腐ってなければ大丈夫として一つ一つ電気で透かして判別しながらでも永い年月ほとんど事故もなく生卵食文化ともいえる環境を作って来た訳です。

自然の状態では殻の表面などにいろいろな雑菌が付いて居るのが普通です。これを洗い流すと殻の防御機能が失われることが有ります。そうすると菌が中に入り易くなり腐ってしまいます。たまたまそこにサルモネラ菌が付着した場合は入るかも知れませんね。in eggといって菌が最初から中に入って居る状態を心配する人がいますが親鳥が健康ならそのようなことはなく、実験的に菌を食べさせても卵の中では消滅してしまいます。 繰り返すように、殻が不完全で外から圧倒的多数の腐敗菌と一緒に他の細菌が入った場合卵は腐りますし、腐れば強烈な臭いで直ぐ分かるようになります。実験室では臭いの無いサルモネラだけで実験するから菌が繁殖しても分からないといいますが自然界では必ずより多くのモニターとしての腐敗菌がいて判別出来るのです。

従って卵のサルモネラで寧ろ危ないのは家庭で割って直ぐ食べる生卵では無く、調理に時間をかけ、油断から常々保菌しているネズミ(平均保菌率30%といわれます)ゴキブリなどが洗浄後の食器に接触した場合等です(食堂などでの事故)、卵だけなら調理の直前に殻をよく洗うだけで済むのですが。それ以前の保存中は卵をカートンから出さないことです。殻の完全な卵は冷蔵庫内より外のほうが腐りません。腐らないということは細菌が入りにくいのです。中身の弾力がなくなるのは生理的なもので細菌とは関係なく寧ろ食品としての卵の風味も、逆に飼料から来る味の欠陥もそれ以後に出て来るのは牛肉と同じです。

卵は哺乳動物の子宮と同じで生体の中にあって微生物に対して一番安全な場所です。近ごろ若い娘さんのクラミジアによる子宮内膜炎が増えて居ます。未成熟な子宮は内膜がはみ出して居るので、そこに菌が付着するのだそうで殻の不完全な卵と同じです。要するに母体が健全なら胎児も卵も子宮や殻の中が一番安全なわけで、一旦そこから出てしまうとあらゆる微生物にねらわれる事になります。ですから生卵を割って直ぐご飯にかけて食べる食べ方は一番安全な卵の食べ方になります。いくら加熱しても菌は後からいくらでも付着しますから。

日本では最近traceability(生産過程の追跡)がよく言われます。常に一定の生産者から指定して購入する場合、予め1カートンを常温のままモニターとして放置し腐るかどうか調べることでその農場の卵の細菌に対する安全性を確かめることが出来ます。その他、白身のなかの小さい異物はmeat spotと呼ばれ、褐色卵に多いところから殻の色の成分といわれ細菌とは全く関係ありません。ついでにカラザとよばれる白身の中のヒモ状のものはリゾチームなど殺菌成分が特に多いと言われて居ます。ドイツも輸入卵が多いと聞きます。日本も昭和の初め中国卵の輸入が多く神戸などで「タマちゃん買いなれ」と盛んに売っていてかなり古い卵でも生卵として安さで国産を駆逐する勢いだったのですから、ドイツの卵が生で食べられない理由は有りません。食習慣の違いだけでしょう。 ご健康を祈ります 敬具。





前略
生卵における食中毒の可能性に関心があります。ホームページは大変参考になります。卵の内部(密閉部)よりも、殻の外側における、いわゆる付着菌の影響による細菌問題はないのでしょうか?消毒、殺菌対策などがあれば教えて下さい。



メールをいただきありがとう御座いました。
洗っていない正常な卵は種の保存など自然の摂理ともいえるクチクラのおかげで内部へ細菌が入ることはないのですが、卵殻の表面は常に暴露されているわけですから、生産者は無数の自然界に於ける細菌のなかで特に人間に食中毒を起こさせる特定の細菌に対する監視に神経をとがらせて万に一つも間違いがないように心掛けています。

そして卵殻上はそれらの菌にとって繁殖適地ではなくむしろ逆です。ですからキズ、ヨゴレをとりのぞき新しい容器で出荷された卵は改めて割卵に際して洗う必要は無いと考えています。ただ流通の途中、あるいは調理場に入ってからネズミにやられたりするとSEなどに感染するおそれがでてきます。それに通常の卵はGPセンターで洗われてクチクラがすっかり落とされて居ますからその時は清浄でもその後は容易く内部に細菌が入り込めるようになりますし腐敗菌で腐るようにもなります。

食中毒菌に限らず卵の表面は清浄であるにこしたことはありませんが現在までのところクチクラを落とさずに表面だけを清浄化する方法は種卵にしか用いられず食卵には許可されておりません。従って私共も特定の食中毒菌だけを特に注意してクチクラを落とさないことをなによりも重視しているわけです。何と言っても卵殻における気孔とクチクラの組み合わせは自然界ならではの最高のエアフイルターであると思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。 敬具

篠原 一郎





 ご質問ありがとうございました。

先ず健康な卵は無菌であることを人間に例えれば、私達は医者でなくても一般常識として胎児を抱えたお母さんの子宮の中は全くの無菌状態であることを知って居ます。もしそこに血液を通して菌が入り込むと、菌血症や敗血症といった母体と胎児にとって重篤な状態になることも教えられて居ます。正常な卵の中は、健康なお母さんの子宮の中とまったく同じで幾重にも厳重にガードされて居ます。

私の50年の経験のなかで殻に傷のない正常な卵を完全なかたちで保存しておいて腐った例を知りません。ところが殻に傷があったり湿った地面に放置した卵は時間を経て腐ってしまいます。これは殻をとおして腐敗菌が侵入したからでサルモネラなどが混じっているかもしれません。要するに母体である鶏の健康に留意し糞の付着や湿気を防ぎ、殻の傷の有無を調べた健全な卵は、きちんと保存すればお母さんの胎内と同じくらい安全な筈なのです。

そこで健康な鶏作りということですが、最近のように腸内有害菌が騒がれたことは過去にありません。人間のセラチア菌、牛の病原性大腸菌O−157、鶏のサルモネラ・エンテリティディス等など随分さわがれましたが私はこれらに共通項があるように思います。皆一様に食事や餌が高エネルギー化してせんいや粗飼料の摂取が極端に少ない点です。私の専門の鶏に例をとれば繊維を与える事により盲腸の動きを活性化しその付近に繁殖しやすいサルモネラを排除する考えで、鶏では確認されていませんが人間の場合は奨励されているようです。当場では昔からその考え方にもとずいて一般より20パーセントほど低い2400キロカロリーの餌を鶏に与えて居ます。

前置きが長くなりましたがご質問の生卵によるサルモネラ中毒の可能性についてです。もう一度人間の場合と比較します。無菌で保たれた赤ちゃんは子宮を一歩出て産道に入ったとたん、あらゆる感染の危険に遭遇します。お医者さんの話では母体からの感染の危険がある場合帝王切開で取り出すこともあるのだそうです。卑近な例でごめんなさい。

しかしこれが卵を割って器におとした状態なのです。卵はいろいろな細菌の大好物ですから一旦子宮と同じ安全な殻から取り出されると新生児とおなじ全く無抵抗な存在になってしまいます。都会でもクマネズミが大繁殖しています。その30パーセントくらいがサルモネラを保菌しているといわれています。人間の手も傷を放って置くと膿むのはブドウ球菌がいるからです。そのなかにはMRSAなどというこわいやつもいるかもしれません。

要するに生卵は割ったらすぐ食べていただくことです。その限りにおいては生卵は自然の摂理から云っても一番安全な食物であると信じています。

もうひとつ卵アレルギーの問題がありますが昔と違って大豆カスが鶏の主飼料になっており大豆アレルギーが増えて居る現状から、その関連も調べてもらっています。

以上ご質問の答えになっているかどうか危惧いたしておりますが、またなんなりとお申し越しくださいますよう願い上げます。

昔、横浜で馬肉の上に生卵の黄身を乗せたドイツ料理があったように思いました。私自身は卵掛け御飯やすき焼きの付け卵は、日本の大切な食文化であると自負致しております。 末筆ながらご家族皆様のご健康をお祈り申し上げます。 敬具

2002年2月24日 篠原 一郎





篠原一郎 様                      平成10年11月2目
                           全鶏会議 菊地 実

 サルモネラ間題につきましては度々投稿いただきながらそのままに放置しておき申し訳なく思っております。

 こういう意見もあると会員に紹介すべきですが、従来の業界の常識と余く違う見解なのて戸惑いもありました。そこで一応専門家の意見も間いておこうと思い、業界紙の記者を介して佐藤静夫先生に篠原さんの「サルモネラ対策としてのケージ養鶏について」を送り感想を聞いてみました。

概ね以下の感想が寄せられました。(照会してくれた記者を介しての間き取りなので不明確な点があることはお許しください)。

1.SEは鶏以外では早くから発見されている,家畜では牛でもSE発見は早いが、人の食中毒をもたらすファージタイプ(ファージ4)の鶏SEは、89年の神戸の動物検疫所の英国からのブロイラーヒナからの検出が学説的には第1号とされている。

2.ケージで飼うことでSE汚染が除去可能とは断言できない。
 フンと切り離すことは多少は良いが決め手ではない。他の感染源もある。

佐藤先生はSEにもいろいろなタイプがあり、今回の鶏由来のSE中毒は日本には新種の外来のファージ4タイプで起こされたもので、鶏舎構造の変化も多少は影響しているが基本的な間題ではない、と言いたいようです。ご意見がありましたらまたお寄せください。



菊地 実 様   貴酬                 平成10年11月3日

                      東松山市東平1709   篠原一郎

お手紙ありがとう御座いました。真摯な対応をしていただき感謝しております。

個々の鶏飼いが実際疾病対策をとる場合無論学者の意見、研究機関の検査結果などは無視するものではなく、幸い我々の頃には小平に家衛試があり、安藤、角田、秋庭、椿原、渡部先生などに畜産課に内緒で検体を運び、一緒に現場の情報を持ち込んだものです。そんな中での個人的な意見や見解は公に出来ないものも多く、実際面ではこれしかないと思っていることでも現在一般に伝わっていないことも沢山あります。例えば我が国では鶏チフスの発生は無いとされていますが昭和40年代此の辺りで多発した劇症の成鶏サルモネラ菌症の記録は(前記安藤先生の診断では鶏チフスでした)はどこにもありません。そんなことから一方で学会の記録などはエイズの時と同様便宜的作為的なものととらえています。

                    記
1に関して
ファージ4はともかく我々が当時拠り所とした微生物学の本の記述のなかにSEは2のカテゴリーに入るとされ且つ我が国のサルモネラ食中毒の大半がそれだと指摘している以上89年以降だと言う説は政治的なものが入っていると感じます。

2に関して
断言は自己の経験に関して言えることで学者のお墨付きを待つのは「百年河清」です。実際的にはプロラムで可能だったものはSEならなおのこと可能と考えるべきでしょう。糞以外の感染源についてもそれが直接卵殻を汚染するもの以外経口的に入るものの消長については佐藤先生の実験に見られるとおり30年前の考えと変わりません。従ってSEに関しては糞や鼠に代表される卵の外部汚染を遮断することが肝心だということです。その点で従来型ケージは爾後の即集卵、即洗卵、即パック等を加えて、現在では一番いい方法だと主張しているのです。
佐藤先生の方がむしろご自分の実験結果に自信がなさそうですね。

結論
私はあくまで世界的にみて、鶏舎飼養環境の大変化がサルモネラの再来を招いた川上的要因だと信じているが、それ以上に間題なのはペットの普及、クマネズミの増殖、卵調理、微生物に対する日本人の抵抗力の低下などの川下問題だとおもいます。

私の体験を一つ。プロラムを遮断するのにケージはよかったがバタリーは効果がなかった点についてバタリーは積み重ねで糞の隔離が十分でないからとしていたところ、育成中に大発生することのあるバタリー病(プドウ球菌十クロストリジュウム)が床に金網を使って出なくなったことから金属イ才ンの殺菌効果を期待したこともあります。

以上





メールをありがとう御座いました。ホームページ拝見しました。ご努力感服しました。

たまごは昔から川下情報で動いています。学術奨励賞を出している天下の後藤だって、平気で有精卵と云ったりします。ところが定義しろと云われれば出来ない。

例えば人間の世界で受精卵の事を有精卵と云ったら物笑いでしょう。なら鶏の世界だって同じなのに誰も何とも感じない。不思議な世界です。有精卵て、なんなんだと誰も思わないのです。だから食品衛生調査会の座長が中止卵と無精卵の区別が出来ないままそれが通達の元になったりする。

要するに卵の分類すら出来て居ないということです。サルモネラ間題にしても歴史的にみて日本にむしろ多かったSEが何故20年間にわたって無くなったのか、どんな変化があったのか、何故竹のバタリーではだめだったのか、ニトロフラン添加の頃はどうだったかなど川上情報の蓄積が業界として全くないのです。

そして餌が汚染されて居て危ないなどという学者の発言で右往左往する。実際は大量に径口投与されたSEがなぜ鶏の卵巣で増殖しないのか、最終的に卵のなかに残るのは1パーセント以下それも最後は消えてしまうのかも分からずにただ騒ぎ立てる。これなども卵が安全だった頃、餌の汚染は今と変わらなかったことや、ニトロフランとのからみも誰も調べないらしい。

特殊卵だって飼料トン当たりせめて倍位は金をかけないと味なんか変わりっこないのに5000円もかけれぱオンの字とくる、そんなの特殊といえますかという具合。だからいつまでたっても卵は栄養食品の枠を抜け出ることが出来ないでヨード卵の後を追いかけて、やれビタミンミネラル何ミリグラムと埒もないことを言い続けて居ます。本来食品ならイワシと鯛の味の差を追いかけるのが本当なのにそれが出来ない。なぜ出来ないかと云えば、もとをかけないからです。

そんなわけで川上情報は隠して居るのではなく、もともとろくにないのだと私は思っています。

   ご健康を析ります         敬具





アンケートヘの答え

一旦はほとんど間題にならなくなったサルモネラ・エンテリティディスが、何故また流行りだしたかを考えるとき、直接的には外国から入って来たと言えるかもしれないけれど歴史的にみれば、もともとその名の由来のように動物の腸に住むこの型は日本に多く、外国ではサ・ダブリン(アイルランドの首都の名〉が多いと教えられて居たのはつい30年ばかり前のことです。

一般動物の腸に親しみ易い(鶏だけでなく犬も猫も鼠も)サ・工ンテリティディスは、同じように人の食中毒原因菌としてのねずみチフス菌(サ・ティフィムリュウム)より広がり易く快適な環境を与えたら自然の脅威となって人間に襲いかかるのは自明の理です。だから、その菌がどこから来たかを云々するより、菌にとって快適な環境がどうして出来たかを追求すべきだと思います。

川上から始めれば当然にわとりの飼養環境の変化です。飼料にニトロフラゾーンが添加されていた時代は有害なエンテロコッカスなどが押さえられていたため自然に対し鈍感で済みました。(最近はVREが話題に)一方で国を挙げての種鶏検査と、ケージ化が進みにわとりが土や糞と連断されたため、さしも猖獗を極めたヒナ白痢やコクシジュームもなくなってしまいました。それが最近また出て来た、何故なんでしょう。飼養環境の変化だと思います。ウインドウレス、平飼いのコクシ問題、一見関係なさそうだが糞の隔離がうまくできていない場合はつながってしまう。

ネズミが卵に近ずく場合も同様。とすればサ・エンテリティディスでも同じことがいえます。ならば餌の汚染はどうなのか、じつはニトロフランの飼料添加が出来なくなったときサルモネラを含めた腸の有害菌が勢いを盛り返す心配を生産者も学者もしたのですが幸いサ・エンテリティディスは復活しなかった。文字通り彼奴は腸が好きで、たまたま卵巣にまぎれこんでも1パーセントの懸念はあるものの、そのうち消えてしまう。サ・プロラムや、他のいわゆる鶏パラチフス菌と違って血液中にも入りたがらない。

しかし自然界の先住者であるからなかなか追放できない。従って我々は常に汚染はあると考えて敬してこれを遠ざく、即ちいかにこれを遮断するかに全力を注いできたのです。

繰り返すように飼養環境の変化で業界全体として川上対策がとれないとき理念もないまま消費者に訴えようとするから、サルモネラ対策をうたいながら、あんな今にもネズミが顔を出しそうなタイトル画のチラシを協会が作ったりするのでしょう。

これでは逆にこころあるものは協賛できなくなりますよ。


H10、9、5        篠原一郎



昔翁ありき・鹿鳴館
農林大臣賞受領

〒355-0002 埼玉県東松山市東平1709
TEL:0493-23-7763 FAX:0493-23-0807