『タマゴの黄身にサルモネラ菌をブスリ』

 

もう30年も前に「トリは静かに飼うべかりけり」と養鶏業界に対しては一切見ざる云わざる をきめこんだつもりが、サルモネラ騒動をきっかけに、静かと云ってもあまりにも静か過ぎるこの業界に業を煮やすことが多くなり、つい一言と出過ぎてしまう。

 今も山鹿の花さとさんから戴いた極上の馬刺しを黄身で和えて、こんなうまいものはない、熊本の馬刺しは日本一だと友人と一杯遣っているところへ、たまたまNHKテレビがサルモネラをやっていて、今しも研究者が卵の黄身の真ん中にサルモネラ菌をブスリと注射するところ。自然界ではあり得ないその行為にあぜんとしていると、それを温度を変えて処理しシャーレーに移して70度なら安全とやっていた。早速友達客からの問い合わせの電話がなりだし返事に忙殺される。

 「もしもし、あのね、いっも云うんだけれど卵の黄身というのは自然界ではヒナが離乳食にするために、産卵されてから孵化するまでの数カ月間あらゆるカビや細菌に犯されないよう殻のクチクラ、白身のリゾチーム、そして卵黄膜と幾重にも保護されているけれど、それ自体は何の防御力も無いんです。そんなところへいきなりブスリとやられたらたまったもんじゃない。そんな自然の摂理に逆らった机上の実験をもとに生卵や半熟が危ないなんて云われたら、うまいものはなくなっちゃいますよ。但、卵黄そのものは、むきだしにしておいたら細菌に対して弱いものだということは良くわきまえておいて下さい。一方正常な形で生産され保存されたヒビの無い卵は普通腐ることすらないのです。ですから調理のとき黄身をむきだしにして放置しない限り、割ってすぐ食べるかたちの生卵や半熟は賞味期限という約束事も踏まえて絶対安全なのは云うまでもありません。

でも逆に生や半熟が急に危ないなどとされた根拠が、あんなとんでもない実験の結果だったというのが良くわかったでしょう。あした冷凍して馬刺しをおすそわけします楽しみにね。じゃおやすみなさい。」



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