2000年10月、長野県知事に田中康夫氏が就任しました。 その後、田中知事は、大仏ダム・淺川ダム・下諏訪ダムなどの中止を表明。2月には、「脱ダム」宣言を発表しました。詳細はこちら(長野県知事田中康夫と申します) 

公共事業のあり方が問題視される中、田中知事の発言は画期的なことと感じました。 市川市においても、外郭環状道路・江戸川の可動堰の改築・三番瀬の埋め立て等、国や県のかかわる公共事業があり、住民との合意形成が困難な状態にあります。  これからの公共事業はどうあるべきか、公共事業に頼らない社会をつくれるのかをさぐりつつも、また、現地の事情・住民の声ははどうなのか、視察することとなりました。

■下諏訪ダム計画とは?
  長野県が諏訪郡下諏訪町の砥川支流、東俣川に計画した洪水調節と水道用水供給の多目的ダム。総事業費240億円。天井川である砥川における100年に1度の確率の洪水を防ぐ計画で、堤高は67メートル、総貯水容量は222万トン。1978年度から予備調査、1984年度から実施計画調査を行い、1993年度に建設が採択された。2005年度の完成を目指す、とされたが大幅に予定は遅れている。
■下諏訪ダム計画関連リンク
 

諏訪建設事務所

下諏訪ダム反対連絡協議会

長野県ホームページ

 田中知事の脱ダム宣言は「数百億円を投じるコンクリートのダムは、看過し得ぬ負荷を 地球環境に与える。いずれ造り替えねばならず、堆砂を数十億で処理する事態も生じる。子孫に残す資産として、の河川・湖・沼の価値を重視し、多くの水源を擁する長野県に置いてはできる限り、ダムを造るべきはない。」としています。 特に、下諏訪ダムについては、「治水、利水ともに、ダムによらなくても対応は可能。治水は堤防の嵩上げや川底の浚渫を組み合わせて対応。利水は新たな水源を求めるとしている。」 と主張しています。

これに対して、現地下諏訪町では、”「ダムの是非」を言う前に、「砥川の治水と利水」をかんがえてほしい”とし、以下のような問題点を指摘していました。

■川の地形的状況
 
  • 砥川は三峰山、鷲が峰等の高い峰を源流とし、諏訪湖に入る、延長12キロの一級河川です。
  • 下流は昔からの氾濫の繰り返しでできた扇状地で、川底が周囲の家が建っている地面より高い「天井川」です。
■現在治水・利水の両方を考えて、以下の3つの案がありますがそれぞれに問題点があります。
 
  • 堤防の嵩上げ案:堤防高くすれば、流域7つの橋の架け替えと道路・鉄道にも影響。
  • 浚渫案:川を掘り下げると、水圧がかかり、堤防補強が必要。また、諏訪湖の水位に影響が及び、逆流現象がおきる。農業用水路の取水口も要付け替え。
  • 川幅を拡幅する案:流域に住む200戸の移転と5ヘクタールの土地が必要。同町に代替地がない。(扇状地のため可住地がない)橋と取水口の付け替え。
■利水については以下の問題点が残ります。
  岡谷市の水道水は8割が地下水と湧き水。しかも、過去の精密機械の工場が洗浄のために使ったトリクロロエチレンで汚染されており、使用できず。 砥川の表流水を必要としている。
■治水については以下の問題点が残ります。
 

1999年の大雨、やむのがあと1時間遅ければ、溢れる可能性があった。

わたしたちは、「天井川」というものをこの目で視察し、一昨年の大雨の写真を見せもらい、問題点等を聞くと、本当に治水とダムの難しさを目の当たりにし、ダム建設の是非について判断がつかなったというのが正直なところです。

老朽化した江戸川の可動堰の改築問題も、「100年に一回の洪水」が話題になります。それにも耐えうるようにと、スーパー堤防や巨大な堰をつくろうとする国の治水の方針がありました。しかし、最近では国土交通河川局では「洪水は必要なもの」との考えにかえてきています。しかし、川原にはりついた人家を移転しないまま、洪水は仕方ないとは言えません。人命にかかわることだからです。 大雨の度に対応に苦慮している職員の不安も理解できます。
危険区域を公表しだした国土交通省ですが、民家の移転を視野に入れなければ意味がないような気もします。

後日明日香村の治水の遺跡をTVで見ました。大昔の人々はその土地の地質を充分に研究したうえで、自然にあわせた治水、自然を利用した賢い生活をしていたのだと感じました。「川は生き物」 コンクリートで抑えることはできないこととして、この問題もやはり充分に考えるべきでしょう。
現在、長野県では検討委員会が設置され、5月にその第一回が開催されました。 千葉県の三番瀬も現地のさまざまな問題をかかえながらも最終的な検討が行われつつあります。 公共事業のあり方は、地元との合意が第一。しかも、自然の地質学的な検証こそがその土台となるべきだと思います。
長野の脱ダム宣言、 これからも見守っていきたいと思います。

 

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