ブラジルの女性と政治

2000年8月、私はブラジル、サンパウロ市を訪問しました。私は1987年から1991年までサンパウロに住んでおり。当時、サンパウロ日伯援護協会という社会福祉法人でボラティアケースワーカーとして働いていました。そのころのブラジルは日本への出稼ぎブームで、日本語のできる人が大変少なく、いきなり飛び込んだ私は、日系一世独居老人の調査依頼をすることになりました。夢中になって、サンパウロを飛びまわり。その後、福祉部にお世話になり、日系人の老人ホームの訪問や心理指導、レクリエーション等を担当させてもらったことがあります。
また、その際に別の法人である憩の園でも少しお手伝いをしており。 今回はこの法人の福祉士の方の紹介で、現在サンパウロ市の市議会議員Aldaiza Sposatrpiさん(労働党)にブラジルの女性と政治について話を伺うことができました。

 
サンパウロの人口 1000万人
市議会議員定数 55名
うち女性議員は6名 女性比率11%

 

■サンパウロ市の市議会議員Aldaiza Sposatrpiさん
  労働党(PT) 所属。
女性の政治参画を進めるNGO "Elas por Elas na Politica"に加入:ここでは女性のための政治スクール、基金等での支援、政治情報の発信・交換などの活動を行っている。

 

■労働党の女性部
  選挙時には候補者の30%を女性にすることを目標にしている。

 

■ブラジルの女性の政治参加について
 

ブラジル女性参政権が付与されたのは1932年、男性より50年遅れました。
現在 ブラジル国会上院議員513名 うち女性34名 女性比率6.82%、州の議員 81名 うち女性 6名 女性比率7.4% となっています。

ブラジル北部では数家族の大富豪がしきっていて、州代表の選出にもその家族の出身者となりがちで、女性の選ばれ方もそういった形での選出が主です。 一方南部ではそういった富豪出身ではなく、女性でも自分の意志で政治家になる人が多くみられます。

 

■ブラジルの法整備について
  9100/95−Paragrafo3doArtigo11通称「ルージュ法(口紅法)」 が制定されています。 この法律は「社会における女性の政治参画を促進するための法律」で、国会・州議会・市議会等で30年間1%でしかすぎなかった女性の国会議員比率を、50%にまで引き上げることを望む女性達の声に答える形となっています。現在、実際の女性比率は国会で6.7%、州議会7.4%、市議会で3%にすぎません。1996年10月の選挙からこの法律により、選挙候補者の少なくとも20%を女性とすることが決められました。これは北京の第4回世界女性会議の結果を受けて、超党派の女性議員の力によって実現しました。ただし比例名簿方式でなく、得票順に選出されるので、結果はまだまだでていないのが現状です。しかし、フランスの「パリテ法」では候補の50%、韓国の「女性発展基本法に基づく政党法」の改正では候補の30%を女性とするとしています。こういった法整備は女性の国会議員比率をあげていく上では重要なことです。      

 
■ブラジル女性キャンペーン
 

議員をめざす女性たちのための小冊子「権力に臆することのない女たち」(1996年版)を読みました。 この冊子は、北京の第4回世界女性会議の行動綱領にはじまり、1996年の「ルージュ法」によって、候補の20%を女性とすることが義務ずけられたことが書かれています。 そして、ブラジルにおける女性がいかに平等でない状況におかれているか、また、女性たちが今日まで、どのように権利を獲得するために戦ってきたかその歴史等が紹介されています。そして、勇気をもって立候補しようと呼びかけ、そのノウハウも載せています。 その方法は具体的で、例えば、あなたが候補者であることを多くの人に知ってもらうことが大事であること、 資金を集めるにはミニ集会の開催、Tシャツやブローチの販売等があることなどが紹介されています。また一方では、民主政治のためには投票することがいかに重要かを人々に知らしめることが重要であり、それが市民の啓蒙であることも説明してあります。 そして、この冊子はあなたがどんな主張を持っているか、社会で何をあなたが実現しようとしているのかきちんと知らせることが重要だとしています。たとえば、貧困・雇用・収入の格差・家族計画・児童虐待・暴力・堕胎・保育所等すべてのテーマについて。これらが民主主義を推し進めるのだと説いています。

 

ブラジル女性キャンペーンの内容は私たちの日本でのキャンペーンと基本的には変わりません。 テーマとしてはその国の抱えている問題があるでしょうが、女たちが超党派でこうした運動を展開していることに、同士のような共感を感じました。
世界女性会議を通じて世界中でこうした女性運動が広がっていることを知り、私も勇気をもらって、このまちでこつこつとまた始めようとあらたな気持ちになりました。

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