タイトル
第44話    生きろ!サスケ!

 2002年10月 2日更新

 8月初めの暑い暑い夜でした。サスケが、扇風機の前へと歩き出しました。だいぶ、扇風機の風に吹か
 れることに慣れてきたサスケですが、自ら扇風機に向かって歩き出すのは初めてでした。「珍しいな」と
 見ていると、サスケの腰が落ちました。それは、お座りというものではなく、ヘタリ込むように腰が落ち、
 前足は、踏ん張り切れずに左右に開き、腹ばいになってしまったのです。「どうした?サスケ。夏バテ
 か?」からかいながら、サスケを撫でる私。しかし、その時のサスケは、意識が朦朧としていたのです。
 サスケは「倒れた」のでした。2階で洗濯物を取り入れていたカミサンに異変を告げると、まさに転げ落
 ちるように降りて来ました。そして、かかり付けの病院に直行します。サスケは意識は戻っているもの
 の、呼吸は荒く、自力で座るのも困難といった状態でした。「何で?何でこんなになっちゃったんだ?
 どこが悪いんだ?」、私達は混乱していました。病院に着いて、熱を計ると「39.8度」、わんこの平熱
 は、37〜8度ですから、かなりの高熱でした。原因は、「熱中症」と言われました。出掛ける時は、必
 ずクーラーをかけていったのに、何故?・・・。何しろ、体を冷やすしか手立てがなく、濡れたバスタオ
 ルを体にかけ、扇風機を当てる。これが、熱を下げるには、一番の方法と言う事でした。家に連れて
 帰り、一晩中バスタオルが乾くと、水をかけ扇風機に当ててやりました。サスケの呼吸は早く、一向
 に収まる様子は見えません。「眠ってくれるとイイんですが・・・」という、お医者さんの言葉でしたが、
 サスケは横にはなっているものの、眠ることはありませんでした。それでも、解熱剤が効いたのでしょ
 う、朝方には体温が、38.2度まで下がって来ました。それでも、まだ高いのですが、サスケは立ち
 上がって歩けるようになりました。ただ、呼吸の早さは収まりません。今のサスケの心臓は、何もして
 いなくても、「100メートルダッシュ」をしているような状態で動いているそうです。苦しいだろうに・・・。
 なのに、私達には何もしてやれないのです・・・。熱は、上がったり下がったりを繰り返し、呼吸は収ま
 らないままですが、サスケは自力で歩き、シッコやウンチの為に、短い時間ながらも散歩に出られる
 ようになりました。オムツをしても良かったのですが、サスケは自ら外に出る事を望みました。自分で
 玄関まで歩いて「散歩に行くよ」と、教えるのです。わんこって、本当に健気なものですね。もう、ソフ
 ァに上がる事も難しくなりました。それでも、食欲だけは衰えず、相変わらず私の横に来ては、「それ
 頂戴」と、お手と、おかわりを繰り返えす、いつものポーズ。でも、前足の上げ下ろしに力は無くなっ
 て来ていました・・・。下の部屋を閉め切り、クーラーを最低温度にして、サスケと一緒に寝た時に「後、
 どれくらい、この子と一緒にいられるんだろう?」という気持ちが、不意に湧き上がり、「何、考えてん
 だ!俺は!」と、そんな気持ちを振り払うように、サスケを抱き締めた時、改めてサスケの温もりと、
 匂いを感じて、ボロボロと涙が出ました。生きろ!もっと生きろよ、サスケ!まだ逝くなよ!
 もぅ、号泣になっていました。「なんで?なんで?この子、何も悪いことしてねぇじゃん!なんで、こん
 なに苦しめるんだよ!なんで連れて行くんだよ!この前、コタロー連れてったばっかじゃん!」、コタ
 ローの時にも思ったように、目に見えない死神に向かって、我を忘れて叫んでいました。そんな私の
 顔を、サスケがペロペロと舐めました、「どうしたの?」って顔して。しかし、サスケの容態は、日に日
 に悪くなって行ったのです・・・。




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