タイトル



第16話    家族が増えた
 翌日から「さすらい犬捕獲作戦」がスタ−トしました。って言っても私が一人で行くんですけどね。(^^);
ところが、カミサンや母は「見た!見た!」って言うんですが、どう〜も、私が行くといつも「お留守」なん
です。冬枯れの芝生には「ここに寝てた」であろう痕跡はシッカリと残っているんです。小さな円形に芝
生がへこんでいるんですね。時代劇みたいにそこに手をあてて「ん!まだ暖かい」なんてことはしませ
んでしたけど(爆)。二人からの目撃情報から、まだこの場にとどまっているのは確かなんですが・・・。
仕事から帰り、暗くなってから、さらに寒さもあって捜索は難航(^^);しました。捜索3日目、ついに発見
しました!枯れた芝に体毛が「保護色」の役目をしているように、夜目には判断しにくかったのですが、
丸くなって寝ています。いきなり「ガバッ!」と捕まえるのもマズイと思い、「オイ、おチビちゃん。」と声
をかけるとビックリしたように顔を上げ、私を見ました。間違いなくポメラニアンです。チビスケは立ち上
がり、生意気にも「ウ〜ッ」と唸りながら後ろ足を蹴り上げる威嚇行動をとります。やはり人間との生活
から長い間離れていたんでしょう、警戒しながら後ずさりしています。私は持ってきた「ドライフ−ド」を
見せ、「ほら、おいで。」と吊ろうとしましたがドライフ−ドが小さくて見えないのか、匂いが弱いのか興
味を示さず唸っています。「ほら、これだよ」と放ったドライフ−ドがチビスケの頭に当たりました、それを
「攻撃された!」と思ったのでしょう小走りに逃げて行ってしまいました。失敗です・・・。「よし!明日は
ジャ−キ−にしてみよう。」ほとんどの犬が大好きな「犬用のビ−フジャ−キ−」です。これなら匂いも
あるし、大きいから目にとまるだろう。翌日、うまい具合にチビスケはいました。「チビスケ」と声をかけ
ると、「昨日の奴だ」とばかりに逃げようとします。「ほら、チビスケ!今日はこれだぞ。」とジャ−キ−
を見せると、「おっ!それは・・・」作戦通り、ジャ−キ−にはすぐに反応しました。寄ってきます、徐々に
距離が縮まってきます、「クンクン」とジャ−キ−の誘惑と人間に対する警戒心で葛藤しているんでしょ
う、一歩づつ一歩づつ近づいてきます。さながらCMの「入ろか、止めよか、考え中!」状態です(^_^;)
3メ−トルが2メ−トルへ、1メ−トルへ、その時間の長い事長い事。しかし、ここで一気に捕まえようと
して失敗すれば、2度と私には寄り付かないでしょう、慎重に待ちました。そしてついに私の足に前足
をかけました、私の胡座をかいた足に前足をかけたのです。そして完全に私の胡座の上に乗りました。
久しぶりにありついた「ジャ−キ−」を一心不乱に食べはじめました。今です!私はそっと抱こうとしま
した。するとどうでしょう!こちらがビックリするほど抵抗なく私に抱き上げられました。ようやく私に対す
る警戒を解いてくれたようです。「よぉ〜し、お前は今日から家族の仲間入りだからね、一緒に家に帰
ろうな。」腕の中でオドオドした目で私を見上げるチビスケを抱いて家路を急いでいました。



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