タイトル



第15話    さすらい犬
 父を送り、私達も随分と落ち着いてきました。サスケも一時の落込みもなくなり、吹っ切ったよう
に元気になりました。母の家からちょうどいい散歩の距離に多摩川の河川敷があります。昼間は
ゴルフのショ−トコ−スになっているところで、そこで離してやると「この世で最高に幸せ!」
と、ばかりにサスケは走り回ります。犬って「本当にうれしい!」って走り方があるんですよね。言
葉では言い表せませんけど(^^); そんなこんなで過ごした1月の終わり(だったと思う)、サスケの散
歩から帰ってきたカミサンが、「ちっちゃいワンちゃんがいた。」と、話しだしました。すると母も、「うん
見た見た、捨て犬かねぇ。」よくよく、聞いてみると。毛色、大きさからして「ポメラニアンらしい」「首輪
は付けていないようだ」「飼い主らしき人は見かけない」との事。しかし、ポメラニアンの捨て犬というの
は、あまり聞いた事はない(実際にはあるらしいが)。「誰か飼ってて、散歩が面倒臭いから放してるん
じゃねぇの?」って事で、その場は終わった。そして次の日、カミサンが「またいたよ、あのコ。やっぱり
捨て犬みたいだよ。」そこにまた母が(^^);「昼間も見たよ。なんだかウス汚れてたねぇ。」こうなってくる
と、真実を確かめたくなるのが私の性分(爆)。「どれ、見てこよう。」と寒風吹きすさぶ中、私は出かけ
ました。目撃地点(^-^)に行ってみると、そこは団地の中の一角で冬枯れした芝生のある場所でした。
その「ちっちゃいワンちゃん」は発見できませんでしたが、誰かがエサを与えてる形跡が見られました。
「むぅ・・・やはり捨て犬か。」しかし、その時はまだ「ポメラニアン捨てるかぁ?」という気持ちの方が強
かったですね。次の日も、カミサンと母の目撃情報がありました(^^);カミサン曰く「あれは絶対にポメラ
ニアンに間違いない!」と言う事でした。ポメラニアンだとすれば、「捨てた」というより「逃げた」と言う
方が正しいのかもしれない。って事は、「さすらい犬?」私の頭にそんな言葉が浮びました(^_-)。「この
寒さの中、そんなちっちゃいワンちゃんが吹きっさらしに寝てるなんて可哀相だな。」全員の目がぬくぬ
くとした部屋のソファ−の上でお腹丸出しの仰向け状態で寝っ転がるサスケに集中しました(爆)。当の
サスケは「何?俺、なんかした?」と言うように私達を交互に見ています。その時、母が「拾ってこようか
?」と、ひとこと。父を亡くして、生き物に対する「情」が高まっていたのでしょうか、まさか母の口からそ
んな言葉が出るとは。「よし!じゃあ明日、見つけて連れてこよう!」
こうして、
     「さすらい犬捕獲作戦」

                 が実行にうつされる事になったのでした。


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