継続賃料とは | ||||||||||
鑑定評価基準によれば「不動産の賃貸借等の継続に係わる特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料」である。 新規賃料と比較して@一度合意された賃料の改定であり、A契約の当事者が限定された賃料であるという点で新規賃料と大きな相違がある。 |
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継続賃料の鑑定評価に関して | ||||||||||
賃料の改定、条件の変更等にあたって妥当な賃料の鑑定評価を求められる場合があります。継続賃料の評価手法は鑑定評価基準において4手法示されていますが、いずれも継続賃料の一面を現すに過ぎず、大きな問題点を有しています。更に継続賃料は純然たる経済価値のみで判断されるものではなく、当事者間の個別事情の考慮が必要です。当然ですがこのような個別事情を数値化し価格に反映させることは極めて困難です。また実務面では資料、情報の収集が困難であったり、当事者事情の見解が依頼者によって異なるケースもあります。このように継続賃料の鑑定評価はかなり困難なのが実状です。 従って継続賃料の鑑定評価は機械的に鑑定評価の手法を適用するだけでは不十分で対象不動産の案件を十分考慮して案件の持つ個別性を反映できるよう適用すると共に当事者の事情を把握し、且つこれを鑑定評価額に反映するべく数量化が必要となるため、継続賃料の評価には相当の労力と鑑定評価主体の能力が必要と思われます。 また、現行の手法が不十分であることから創意、工夫により新たな手法、考え方を適用することも考えられます。 |
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継続賃料の特徴 | ||||||||||
継続賃料は地価の変動に対して保守性、遅効性を有する。 ○賃料の保守性とは 経済的弱者を保護する方向で改訂すべきという考え方が賃料改定の指針となり大幅な賃料の改定は借地人の生活を脅かすから、極端な変化を避け緩やかに賃料を改定するというもの。 ○遅効性とは 地代は地価と比較して変動の振れ幅は小さく、地価を後追いするものというもの。 継続賃料は一度合意された賃料の変更であるため、地価が急激に上昇する場合においても、賃料の急激な値上げすることなく、長年続いた当事者間の平穏な関係を尊重しようとするため賃料は地価の変動に対して保守性、遅効性という特徴を有するに至ったものである。
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継続賃料の評価手法は鑑定評価基準において4手法示されているが、いずれも継続賃料の一面を現さすに過ぎず、大きな問題点を有している。更に継続賃料は純然たる経済価値のみで判断されるものではなく、当事者間の個別事情の考慮が必要です。当然ですがこのような個別事情を数値化し価格に反映させることは極めて困難である。このように継続賃料の鑑定評価はかなり困難なのが実状である。また実務面では資料、情報の収集が困難であったり、当事者事情の見解が依頼者によって異なるケースもある。 | ||||||||||
継続賃料を求める手法 | ||||||||||
【差額配分法】 | ||||||||||
差額配分法は下記の式から求められる 現行賃料+(現行賃料−適正賃料)×配分率 ○手法の論拠 当該手法は当事者が締結した過去の賃料と、その不動産を新規に賃貸した場合の賃料との隔たりから新しいバランスを見いだす。 ○問題点 配分率には折半法、3分の1方等が採用される場合が多いがその根拠が無い。配分率の算出方法が不明である。 新規賃料が継続賃料を下回る場合に関して新規賃料を上限とする説が有る等、新規賃料が下落する場合における適用には意見が分かれる。 |
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【利回り方】 | ||||||||||
基礎価格×継続賃料利回り+必要諸経費 基礎価格:土地(地代の場合)又は土地及び建物(家賃の場合の価格 継続賃料利回り:最終合意時点における賃料と土地又は土地建物価格の割合 ○手法の論拠 契約当事者が最終合意時点において決定した賃料額を重視して現時点の賃料を求める。 ○問題点 当該手法を適用すれば、結果として最終合意時点以降の基礎価格の変動率と賃料は同じ変動率となり、継続賃料の変動率を現しているとは言い難い |
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【スライド法】 | ||||||||||
現行賃料×スライド率+必要諸経費 スライド率:消費者物価指数、GDP等、各種指数を勘案して決定 ○手法の論拠 契約当事者間の合意時点以降の経済事情の変化を調べ、変化した分だけ改訂賃料に反映する。 ○問題点 消費者物価指数、GDPの変動率は賃料そのものの変化を現すものではなく、また各種指数を考慮しても継続賃料特有の変動率を求める事は困難。 |
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【賃貸事例比較法】 | ||||||||||
継続賃料事例×補正率 ○手法の根拠 市場の実際の賃貸事例から求める手法であり実証性、市場性を有する。 ○問題点 賃貸事例はそれぞれ、個別の条件、事情を有し対象不動産と同じ条件、事例を見つけるのは殆ど不可能であること。また一般に賃貸事例を教えて貰うのは難しい。 異なる局面から述べれば本質的に賃貸事例自体、相当な経済価値に即応した賃料でない場合が多く、これらの事例から対象不動産の相当な経済価値に即応する賃料を求めるのは不合理。 |
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これらの外に、収益分析法、収益配分法が考えられる。 | ||||||||||
【収益配分法】 | ||||||||||
収益配分法は主に店舗等の事業物件を対象に、粗利益に見合った賃料を算定する方法である。 下記の式により算定できる。 粗利益×不動産配分率 粗利益=対象店舗の現実の売上高にたよる粗利益率と対象店舗の売上高を同業種の地域水準に修正し たものによる粗利益率 不動産配分率=企業収益−法人税率ー経営利益率−資本利益率 ※経営利益率、資本利益率は統計的に既知の値 または事業会社の平均的な不動産配分率 ○手法の根拠 賃料は収益を源泉とし、その収益が借り手の力の及ばない外的要因で減少する限り、これを賃料に反映すべきを妥当と考える。 ○問題点 企業収益を分析して求めており新規賃料と継続賃料との区別がなく、当該賃料が継続賃料である論拠に乏しい。不動産配分率の算定が困難である。事業物件にしか適用出来ない。 |
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【その他】 | ||||||||||
賃料を直接求めるものではないが雑誌Evalationで鈴木雅文氏が継続賃料の新提案としてゲーム理論を用いた差額配分法における配分の論拠を述べられています。当事者間の交渉により、その賃料が定まるという特殊性を反映しており興味深い意見ですがゲーム理論が難解であり、更に具体的に賃料を算出する手法まで述べられていないため当事務所の今後の研究課題です。 |
参考文献: 第21回不動産鑑定シンポジウム会議報告書 Evaluation NO30 要説 不動産鑑定評価基準 継続賃料評価の理論と実務 |