インプラントの話

 インプラントは、歯科の分野では歯を失った場合、歯が元あった部位に人工の歯根を植え込む事を指します。この場合使われる人工の歯根は、チタンという金属で作られています。チタンは、生体との親和性が非常に良く、サビたり異物反応を起こす心配がほとんどありません。そのため、人工心臓・人工関節・人工骨などにも応用されています。また、軽くて・大変堅く・熱に強く・化学物質に対しても強いので深海潜水艇・ミサイルの先端・メガネフレ−ム・ゴルフクラブなどにも使われています。ただ、加工しにくいため高価なものです。
 インプラントは、古代エジプトのミイラにサファイアの人工歯根が埋め込められたことが知られていますが、死後に処置されたものです。生存している人に行われたインプラントの例は、中米のボリビアで1500年ほど前に貝殻でできた人工歯根を下顎の骨に埋め込んだのが発見されています。手術後も生存し実際に食事をとるのに使われた事が、確認されています。
 インプラントを植え込むには、顎の骨の幅と厚さが充分無ければ行えません。また、糖尿病・心臓病・肝臓病・高血圧, 骨粗鬆症
などの病気のある場合も行うことができません。
 インプラントの寿命は、手術後の手入れが良ければ20年以上は持つことが予想されており、当医院でも20年以上経過した症例があります。
 手術の成功率は、必ずしも100%ではなく医療機関によっても異なるし、手術を受けた患者さんの全身状態によっても異なります。喫煙の習慣のある人の方が成功率が低くなることが報告されています。
 費用は、医療機関によって大きく異なります。医院の所在地・経営方針などが価格に反映されて、必ずしも歯科医師の技量や手術の成功率とは、関係ありません。同じビ−ルでも飲む場所によって、値段が大きく異なることと同じです。一般に大都市では、田舎に比べ2ないし3倍、時には5倍以上の価格で行われているようです。
 インプラントの手術を受ける前は、充分説明を受けられ、納得をされることをお勧めします。インプラント手術を受けた後の、長期の管理を行ってもらえることも、重要なポイントになります。

     田中 東平  
   日本口腔インプラント学会会員

 

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