トワイライト演芸場
「おお!」
とは、K師匠の奇声。
わたしは、なんじゃーこれりゃーーーと心の中で叫びつつ、とにかく隙間だらけの会場の1テーブルに陣取り、このトワイライトな祭典を見入ったのでした。
何を歌っているのかまったくわからないのですが、たぶん、演歌?、もしくは昔の60年代くらいの歌謡曲を情感たっぷりに歌ってるのです。そしてその真っ赤なドレスは、眩しいくらいに真っ赤で、そうなんとなくナイロン地の赤と言えば容易に想像がつくと思いますが、そういう眩しい赤なのでした。
とにかくこの驚きはなんと言って表現したらいいのでしょうか。彼女の後ろで渋ーく演奏してるバンドマンの服装は60年代そのものだし、歌の後で登場する司会者は、もう絶対1950年代の人。だって声も昔のアナウンサみたいなちょっと音程の高い声だし、太い黒ふち眼鏡だし、73分けの髪はピカピカに光ってるんだもん!!
わたしはテーブルでこの光景をぼーっと見ながら(もちろん湯冷めもしようがない程気分的にホットな場所でした)、ひょっとしてここだけ時間が止まってるの?と素朴な疑問を持ちつつ、この不思議な光景に見入ってしまったのです。
と、そこへ歌っていた男性歌手(もう人が入れ代わっていた)が
「次の曲は、みなさんのよく御存じの最近の曲を歌いますよ!!」(歌手も古さを自覚してるようだ。)
と言ったので、え?ひょっとしてヒッキーの歌??と思いきや、
また全然知らない演歌を歌い出して、こけてしまったのです。
ところがK師匠は小さな声で
「氷川きよしの歌や」と囁くではありませんか。(さすが師匠)
やはりタイムスリップしてるわけでもないのでした。
温泉街がこういうもんだというのを知ってる人にとっては、なんともない風景なのでしょうが、わたしのような若輩者にはこんなワールドがあるんだという素直な驚きを感じるのでした。
ああ、世界は楽しさで溢れてる!!
さあ漕ぎだそう!
黄昏れ目指して、
彼の地はまだ夜明け前、、、、
(すっかりタイムスリップした気分でございました。演芸場のエンターテイナーのみなさまありがとうございました。)