Nikon F5 (ニコンF5)

1999-11-13 version1.1 結構長いよ

F5について

紹介
ニコン株式会社のフラッグシップ機であります。つまりニコンの代表機種は何?と聞かれたなら、迷わず「F5」と言える製品。F5って言うくらいだから、最初はFから始まってるんやねとお思いでしょう。そのとおりでニコンの場合ライカみたくM3にはじまるわけではなく、「F」から始まります。Fは1959年発売されました。一眼レフでクイックリターンミラー搭載でモータードライブありで今では、当たり前のようなスペックがその当時としては回りを見渡しても存在せず、プロのカメラマンから重宝されました。それと超広角から超望遠までレンズがあり、滅茶苦茶頑丈、フィンダー視野率が100%でそのうえペタンタプリズムの交換ができるカメラでした。基本的にこれらを引継かつ発展しながら、1971年にF2、1980年にF3、1988年にF4、1996年にF5が発売されました。
 ニコンは「F」以前は、一眼レフはなくレンジファインダー機を作っておりました。「F」用に当然レンズ取り付け部(マウント)は新規におこされました。このマウントが今まで40年も間、ずーっと同じ規格で通してきました。至極当然の話ですが、それによって40年間に作られた多種多様なニコンレンズを取り付けることができます。これはすごいことで、中古市場にはいろんなニコンレンズが存在していますが、どんなに古いものでも今最新のニコンカメラに取り付けることができるのです。またニコンは今まで学術用途から報道用まで様々なレンズを作ってきたため、その財産はえらいもんです。
 古いレンズなんてとお思いの方もいると思いますが、そうでもなくだいたい単体レンズ系っていうのは、結構昔から技術は高かったため、最新レンズと比べてもなんら遜色がないばかりか個性豊かな描写をするレンズが多いです。ちなみにわたしがいつか手に入れたいレンズの一つは、ノクトニッコール58mmF1.2というレンズです。非常に興味を持っています。天体撮影を考慮に入れて作られたそうです。実際に天体撮影されている人の話では、F値開放で画面のすみのすみまでちゃんと写るのはこれくらいだと絶賛してました。わたしは天体撮影をしませんが、もともとこういった大口径レンズが好きです。中古で15万くらいでしょうか。
 と、ニコンレンズの話ばかりになりました。F5でしたね。
F5はばりばりのオートフォーカスカメラです。ニコンのライバルの一つであるキャノンのフラッグシップ機EOS-1Nに追いつけ追い越せで作られたカメラです。(断言はできませんが。でもほとんど真実)それによってオートフォーカス技術のほとんどすべてを凌駕することができました。F5の前のF4がオートフォーカス技術で一見、見劣りするものだったためキャノンの一人勝ちにちかったと思います。わたしはそのことを何とも思いませんでしたが、企業っていうのは金儲けせなあきませんので、独りよがりでいることはできません。
まあスペックの詳細はカタログをご覧下さい。しかし断っておきますが、オートフォーカス技術がすべてではありません。車でゆうたら、スピードや加速度だけじゃないでしょ?ということです。ハンドリングも大事だしボディーの高剛性も大事だしタイヤの太さもあるしまあ色々触ってみんとわからん所がありますよね?カメラでゆうたらファインダーの見え方、 モータドライブのスピード、ミラーショック安定性、ボディーの剛性、フィルムの平面安定度など他にもありますが、こういったところにも目を向けていかなあきません。そしてこれも断っておきますが、ニコンのF一桁のカメラはこの点を非常によく考えて作られております。当然値段も高くなりますが、それだけのものが備わっております。使ってみんとわからん所も多々あります。
購入経緯
 なぜ購入しちゃったのか?かなり高いのに! これは詳しい話は避けますが、ある賭をしてました。賭に負けたら自分に対して「残念やけどようやったご褒美や」ということで買おうと思っていたのです。賭は見事に負けました。
それではなぜF5だったのか?
今までにニコンカメラを2台所有していた。
今までのF一桁のカメラが非常に良くできたカメラだと認識していたこと
社会人になって少しお金に余裕ができたことが上げられます。
それと
これはおそらく他のどの個人ホームページにも書かれていないことと思いますが、F5に搭載されているあの"悪名高き(言い過ぎ)"「測距点表示素子」を大学の頃ちょいとばかしかじった事にもあります。一応工学部にいました。

"悪名高き(言い過ぎ)"「測距点表示素子」について
この測距点表示は見た人によって非常に意見の分かれるところです。「見えにくいからやめてほしい。」もしくは「わかりやすいし、邪魔にならない」とかです。
しかし一概に皆述べるのは「反応が遅い」ですね。これには専門的に説明される理由があります。とりあえず簡単な説明をしていきましょう。

F5で使用されている素子は、エレクトロクロミズム素子です。わたしがあるエレクトロクロミズムの会合で聞いたところ、材料はWO3薄膜らしいです。ニコンの技術者本人が言っていたので間違いありません。
簡単に原理を述べます。
WO3薄膜のついた極板(ITOという透明な電極)ともう1つの極板に電圧をかける(電解質H2SO4溶液やLiClO4溶液中にて)と、次式で表される反応が起きます。
WO3+XM++Xe-⇔MxWO3     (0≦X≦1)(M;H or Li)
MxWO3はタングステンブロンズといわれ、この物質は青色に呈色します。
要するに物質自体が着色するため、光の透過率を変化させることができ、この辺がLCDすなわち液晶とは違うところです。
エレクトロクロミズム( Electrochromism, EC )とは、物質(薄膜)への電子、イオンの注入抽出によって(還元、酸化)その物質の光学吸収の性質が可逆的に変化する現象を指します。これは結構古くから研究されていました。昔からインターフェイス用電子デバイスの一つとしてエレクトロクロミック表示デバイス ECD ( Electrochromic display )の研究が進められていて、ECディスプレイ素子へ応用する研究の発端となったものが、1969年の米国ベル研究所のS.K.DebによるWO3薄膜の青色EC現象の発表です。WO3薄膜は、可視域で大きい吸収スペクトル変化が得られ、応答特性も他の無機材料よりもよく、クロミズムの代表的な材料です。しかしディスプレイ素子としては、LCD ( Liquid crystal display 、液晶ディスプレイ)に比べて応答特性、耐久性、消費電力などの点で劣っていました。そのことから最初の研究目的からは外れて、最近になって特に赤外域における大きい透過率変化や任意の透過率に制御できることを利用して、ディスプレイ素子としてではなく、調光窓 ( Smart Window ) などへの応用研究が盛んになりました。
他の表示素子と比較して、ECDの長所を以下に挙げると、
(1)物質の光吸収特性変化を利用しているため、偏光を利用したLCDのように視野角依存性がなく、またコントラストも大きいこと。
(2)受光型素子であるため、明るい所ほどはっきり見え、屋外用途に適している。
(3)LCDのように電極間ギャップを精密に制御する必要がないため、素子の大面積化に適している。
(4)LCDと違ってECDでは表示面の形が完全な平面の必要はなく、複雑な曲面でも自由に曲がるフレキシブルフィルム面でも、その形状に関係なくうまく作動する。
(5)ECDは二次電池を構成しているため、メモリ機能があり、省電力化に役立つなどです。
一方、短所を挙げると、(1)電気化学反応を利用しており、その反応速度はイオンの移動により律速されるため、応答性に劣る、(2)LCDなどと比較して、着消色反応の繰り返し寿命に劣る、などです。以上の特徴を活かしながら実用化されているものとして、自動車の防眩ミラー、調光めがね、漏電検知器などです。
で、なぜこれが採用されたのかというと、こればっかりはニコンの設計者に聞かなよくわかりませんが、ニコンは昔から結構このEC素子の研究をしておりました。だから実績はかなりあります。
それとこれはあくまでも憶測ですが、EC素子というのは、今現在大流行のLCDと比べて非常に透過率が高いということがあると思っています。わたしが実際に作ったWO3の薄膜はITOについていながら、90%以上ありました。これは下手な学生が作った薄膜なのでこんなもんですが、F5のスクリーンは100%近いのではないでしょうか?(ニコン関係者が聞いたら笑うかも)とにかく、F5のスクリーンには全面にECの薄膜がついてるとのことですが、そんなに暗いという印象は持ちません。F4と比べると暗いとのことですが、実際にはそんなに気になりません。
とにかくF5が発売された当初、これを液晶ファイダーと言った実写レポートカメラマンがいましたが、液晶ファインダーだと暗くて、おそらくF5には採用されなかったと思います。
まあとってもマイナーな物ですので知らなかったのは止む終えませんが、嘘はいけません。

F5の改良機みたいなF100ではEC素子は採用されませんでしたね。残念ですが、やっぱり遅いのは頂けませんね。

そう言うことで、(なんのこっちゃ)カメラ好きの中でもEC素子に愛着を持っているわたしとしてはこれはぜひ購入せねば!と思ったのです。
触感、見た目
重く頑丈。ゴリラみたい。グリップは握りやすい。
操作感
非常に軽快。モータードライブが高速のため、ミラーバランサーがついていますが、これが絶妙にきいて、ミラーブレがありません。またミラーによる被写体の消失時間が他カメラと比べて非常に短い。これが重たくても、撮影が軽快に進むことにつながります。でもやっぱり重たいですね。よって体をある程度鍛えて使いたいものです。
でもアメリカ村で写真撮っているおばちゃんなんかもF5を持っていて、それがかっこよかったりします。(今まで2人みかけましたが、見かけた二人ともF5やからね。小型カメラ持っているおっさんなんかめめしくてしょうがないね。僕もそうだけど。)
ニコンF5について
もうたくさん書きすぎて少々疲れました。よくぞここまで読んで下さったと感謝したいです。
手短にいいますと、「F5を持てば他のカメラはいらない。」です。
良い意味でも悪い意味でもということです。 良い意味では、このカメラでたいていの仕事ができます。
悪い意味では、このカメラの重量を他と比較しない方がよいということです。
わたしがもし写真の仕事を要請されたら間違いなくこのカメラを使います。
今の時点で、カメラを一つ持ってきて一本立ちしいひんかと言われてもこのカメラを選ぶでしょう。
しかしこのカメラはあくまでも実用本位のプロ御用達であり、遊びがありません。わたしは凡人にもなれないただ道楽者ですのでやっぱりいろんなカメラを使ってみたいのです。


以上

次回は、最近ヘキサーRFが出たので、その元祖とも言うべきヘキサーを。でもわたしが持っているのはシルバーですが。

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