3.リュブリャナの街

 朝、寝不足のまま9時に起き、とりあえず手元にあったパンを食べたあと、そのままユースを出立することにした。ガイドブックを読むと、ザグレブ市内の主な観光ポイントはだいたい廻ってしまったようだったため、今日出発する夜行にはザグレブから乗らず、リュブリャナの観光をすることに決めた。

リュブリャナは、ザグレブよりも発展しているようだった。大きなビルがいくつも建っていた。旧ユーゴの中では、最も豊かな国だということも納得できた。リュブリャナは中心街が駅から近かったため、主な観光ポイント、橋のかかった中心を経由して小高い丘にある城まで歩くことにした。城のある丘のふもとには小さな庭のある家屋が並んでおり、閑静な住宅地を感じさせた。住宅地は日本の景色とあまり変わらず、のんびりとした雰囲気を醸し出していた。城内を散策したあと、教会(大聖堂)とスーパーに立ち寄り駅に戻ることにした。

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城のふもとにある住宅

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城から見える景色...

(info.)リュブリャナは、スロベニアの首都であり、人口は約32万人である。ザグレブと同じく、主な観光ポイントは歩いて回ることができる。

(info.)リュブリャナという町は、紀元前から存在し、昔はエモナと呼ばれていたらしい。11世紀にリュブリャナという名前になったそうだ。

「このポスター、かっこいいと思わへん?」毅君が柱の前に立ち止まった。

「なんか、アヴァンギャルドやな。」

「これ、写真に盗っておこう。」

「それは盗むや。」

「撮っておこう。」

「しかし、こんな柱が多いねえ。」

「この柱って、ポスターを貼るためのもんやろ?」

「たぶん。」

「昔からあったんやろね。」

あとで知ったのだが、この国は、オペラや演劇が盛んらしい。実際に、リュブ リャナの中心街にも劇場がある。ウィーンやベネツィアに近いということにも 関係があるのかもしれない。街中には劇のポスターを貼る柱がいくつかあった。 オーストリアや北イタリアの文化と繋がりのあることが、歩きながら分かる街 かも知れない。私は全然分からなかった。

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ポスターを貼るための柱

「なんか、日本人に会ったで。」

「そうなん?」

「一人で来たらしいで。」

「日本の人に初めて会ったなあ。」

「その人、クロアチアにも行ってきたんやて。なんか、自分の研究と関係があるらしい。」

「結構、年とってた?」

「いや、学生て言うてた。昨日、何食べましたって聞かれたから、ステーキ食べましたと答えたら、それはかなり高級やったでしょう、て言われた。」

「そりゃそうやろなあ。」

「で、こんだけ払った、って言ったら、それは高いですよ、地元の人もなかなか行けないところやと思います、て言われた。」

「そうやろなあ。客はおらへんかったしな。」

「で、スロベニアと比べるとクロアチアの方が経済がよくない、とも言ってた。クロアチアもスロベニアも農業国らしいけど、インフレやねんて。」

「インフレなんや。全然、お金の価値が分からへん。」

「その人は、どこ行ったん?」

「スーパーに行ったで。リュブリャナの観光は40分で終わったって。」

「見るところがかたまってるからやろ。しかしヒマやな。」

「サテンとかあるんかな。」

「キオスクばっかりやし、駅でなんか食べながら待とうや。」

待合室にて

駅舎が工事中で、休めるところもなさそうなので、ホームの待合室に入って列車を待つことにした。待合室には先客がいた。東洋系の顔をした女の子が、2人ほど、大きなバックパックを隣に置いて、ガイドブックらしきものをじーっと読んでいた。

「重そうなカバンやな。どこの人やろ。しかし、女性の二人組ちゅうのも珍しいな。なかなかやることが若いで。」

と思いながらも、ボーとホームを眺めていた。

「すいません。」と一人の女の子が声をかけてきた。こちらは誰も返事しないでいると、

「日本人の方ですよね。」と再び語りかけてこられた。

中国語で返事しよかな、と思ったが、どうみても自分の身なりは日本人だし、アホなことをやるべきではないと判断したので、喋りかけてこられた人の方へ向いた。めっちゃ可愛らしい。なかなかよろしい。

「何でしょう。」

「ちょっとお聞きしたいんですが、この辺りでいい宿はないですか?」

「宿ですか?」

「そう、宿を探しているんですが...昨日はどちらへ泊まられました?」

完全に相手のペースである。自分の興味のあることしか話さないタイプかもしれない。

「昨日はザグレブのユースに泊まりましたよ。」

「ザグレブって?」

「ここから電車で行ったとこですわ。3時間くらいかな?」

「そうやね。そんなに遠くないですよ。」毅君が説明してくれた。

「そこはよかったですか。」

「まあまあですわ。ふつうのユースです。」

「ああそうですか。わかりました。有難うございます。」

というと、その方はもう一人の相方と今からザグレブに行こう、というような話しを始め出した。なかなかソッケナイ態度である。

で、しばらくすると、ザグレブ行きの列車が来たので、その二人組の女性は、早速その列車に乗り込んでリュブリャナを後にされた。

「きれいな人やけど、素っ気ないな。」

「まあ、宿のことしか頭にないのやろ。」

「しかし、実行力があるなあ。人の話しを聞いてすぐにザグレブに行くんやから。」

「バイタリティがあるんやね。カバンも大きかったし。自分ら見てどう思ったんやろ。」

「小さなリュックしか持ってへんもんね。」

「カバンが大きいと旅行するのも大変やで。」

「うん。」

「あんなカバンがでっかいと、人が入りそうやな。」

「人が入ってるかもしれへん。」

「人が入ってたらどないしよ。」

「そのときはそのときやろ。」

「でも、トランクの中に入って亡命した人もいるらしいで。」

「ドイツとかでやろ。ベルリンの博物館とかに写真があるらしいな。」

「日本に帰ったら実験してみよ。」

その後の私達は、 リュブリャナで見かけた、行動力のある旅人や美女二人連れとは反対に、のんびりした旅を象徴するかのように、時間を持て余しながら帰りの列車を待つのだった。
3時間ほどのんびり待合室でだらだら時間をつぶしていると、やっと電車がやってきた。
リュブリャナの街を離れることになった。
短かった旅も終わろうとしていた。

ここで、再び巡ったポイントを見直すと.....

リュブリャナ駅から10分ほど歩くと、中心街がある。街の中心にはが流れており、広場前には三本の橋がかかっている。川を境に新市街、旧市街と分かれている。三本の橋の前にある、プレシェーレン広場には小さな店とカフェがあり、人通りも多い。

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リュブリャニッツァ川は流れる...

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川に架かっている橋にある彫刻...ドラゴンのようだ...ライオン橋みたいなも んやね
(撮影ポイントだよ。クリックするとやや大きい画像が出ます。)

この広場から小高い丘の上にが建っているのが見える。このリュブリャナ城は、12世紀に建てられた。城の中にはカフェと小さな教会があるが、訪れた時は工事中で、見所は何もなかった。ここから見えるリュブリャナの街が綺麗である。城の横にある公園に人が集まって話しをしている。リュブリャナに住んでいる人の散歩コースのようである。

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リュブリャナ城

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城の横にあるちょっとした公園

この城から小さな散策路を降りていくと、広場と大聖堂が見えてくる。リュブリャナ大聖堂である。聖堂の中もかなり広い。建物はバロック式である。

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城を降りていくと...

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大聖堂の入口

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大聖堂に施されている装飾

街の雰囲気は、ザグレブと少々異なり、西欧の小さな街とよく似ている。新市 街と旧市街がそれぞれあり、カフェが並び、人々が集まって飲み食いしている。リュブリャナの駅前は少し閑散としているが。

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(この地図はあくまでも参考であって不正確であります。)

さいごに
Copyright1999 Ichirou Kataoka
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