表紙は海上自衛隊潜水艦「おやしお」です。新鋭潜水艦ですし、 真っ黒な塗装はなかなか映えるものがあります。巻中のカラーグラビアには3番艦の「うずしお」 の竣工式の写真も掲載されており、合わせてきたのからとも思えます。
カラー写真は今号の記事はちょっと元気がなかったでしょうか?陸上自衛隊SOF(特殊作戦部隊)の訓練風景
や、オーストラリア海軍のシーキング、海自新鋭艦群の竣工式といった写真が並んで
います。
それらの中で比較的目を引いたのが、中国海軍艦艇のスナップでしょうか。今月号の世界の艦船でも紹介されて
いましたが、奄美大島近海を航行中のものを海自のP−3Cが捕捉したものです。ルダ級、ヂャンウェイ1級、ヂャンウェイ2級
と載っていますが、その前に掲載されている海自艦艇と比べると、のっぺりとした感じです。もっとも、中国も独自の艦型を構築してきているので、
その特徴的な艦が見れるのは面白いかもしれません。
あとはカラーページ最後のJu−52もなかなか見れませんね。スイスで現役で飛んでいる機体ですが、第二次世界大戦時
でも結構旧式化していたのに、物持ちがいいです(笑)
モノクロページだと、ドイツ装甲車輌が目に付きます。大戦末期の東部戦線での戦車群を掲載しており、ルーマニア軍の4号H型 や、1ページまるまる一つの写真で迫力あるヤクトパンターあたりが面白いですが、この号に掲載された写真ですごいのは、ヴィルベルビントとオストヴィント の並んでいる写真、これは僕ははじめて見ました。4連装がヴィルベルヴィントで、単装がオストヴィントですが、対空戦車だけで6両も写真に写っています。 もともと生産数の少ない対空車輌がこれだけ整備された写真が残っているとは知りませんでした。あとはどーんと構えたナースホルン でしょうか?4号シリーズ最強の車輌だけあって、これも迫力あります。
今号は記事が薄いなというのが最初に読み終わっての印象ですが、トップページは、最近テレビ等ではあまり紹介しなくなったコソボ自治州の近況です。
まあ、最近大規模な事件や戦闘が起っていないので、あまりテレビ等でしなくなったのはわかりますが、まあ落ち着いて一年経過した最近はどうなっているのかな
というのを知ることが出来ました。
最近では空爆の有効性について、疑問の声がどんどん高まっていますが、記事を見る限り、さもありなんといった感じです。本当に爆撃目標をしっかり選定して
実施したのか疑問の声があがるような証拠写真も結構掲載されています。コソボ紛争についてはまだ終っていませんし、これからその評価が行われていくのですが、
PKFが本当有効かを考える必要もありそうです。
今号の特集は潜水艦による奇襲作戦です。選ばれた記事は結構有名なものばかりですが、潜水艦奇襲作戦というのが色々な題材に
取り上げられやすく、知名度も高いということでしょう。載っているのは、真珠湾の特殊潜航艇、U−47のスカパフロー奇襲、アレキサンドリア
に侵入したイタリア潜水艇、イギリスのX艇、日本海軍の潜水艦奇襲作戦といったものです。
まあ、どれも結構有名です。X艇とかはティルピッツ攻撃で幾つも作品化されてますし、イタリア潜水艇はイタリア海軍史をひも解けば、必ず見ることになります
(数少ないイタリア海軍の大戦果ということで)。日本の甲標的も潜水艦のことをちょっと読みはじめればぶつかりますね。そういう意味ではちょっと物足りなかった
かなとも思いますが、日本海軍の本を読みはじめたばかりの人とかは結構興味深いと思います。あまり一冊の本になっているネタではないですから。
ワイド・イラストは英連邦諸国の風変わり戦車列伝です。第二次世界大戦次、イギリスはドイツとの戦闘に手一杯で、各英連邦諸国に対する
兵器・特に装甲車輌に関しては、充分な支給が出来ない時期がありました。そこで、各英連邦諸国が自力で戦車を生産しなければならなくなりましたが、工業力の足りない
各国は四苦八苦することとなります。それらの戦闘車両についての紹介が今号の特集です。
カナダがM3を基本として設計したラム戦車(戦車としては使用されることはほとんどなかったが、装甲兵員輸送車「カンガルー」に改装され、
ヨーロッパ戦線で多数が使用されました)や、セクストン自走砲(M7プリーストの備砲を25ポンド砲に換装したもの)、オーストラリアの悲運の
名戦車、センチネル巡航戦車や、ニュージーランドの試作戦車、工業力・開発力ともそこそこあった南アフリカの装甲車シリーズ等が紹介され
ています。
英連邦諸国は全力で装甲車輌を生産してドイツ軍に対抗しようとしましたが、ドイツの機甲部隊の敵にはなりえず、結局イギリスが攻勢に出るようになるには、アメリカ製の
M4シャーマンが大量配備されるようになってからです。戦争末期にはM4すら性能不足となり、イギリスの各戦車は既に戦場に送り込むことすら危険となりました。イギリス
戦車が世界第一級として認められるのは、朝鮮戦争でセンチュリオンが活躍するまで10年近くかかっています。
紹介されている戦車はかなりマイナーなものが多く、戦車ファンとしてはかなり楽しめます。今号の紹介文の中では一番面白いのがここでした。
「ビジュアル艦艇学入門講座」は、航空機搭載艦についてです。初期の艦載機搭載艦について色々紹介されています。特にカイトバルーンを搭載した
艦艇の紹介や、その利用法等は非常に興味深いものがあります。
また、初期のイギリス海軍の水上機母艦や空母等も紹介されています。初期のイギリス艦艇には航空機搭載のため、色々を工夫したものが多く、記事を読んでいて楽しめました。
「航空戦秘話」では、終戦前に新鋭艦攻「天山」で特攻待機していた、作者の愛機にまつわる話です。掻き集められた九七艦攻特攻隊の中に、一機だけ
ぽつんと編入された新鋭艦攻。特攻に出撃し損ねて、待機中に空襲にあい、愛機を焼かれたと思っていたのだが、奇跡的に生き残っていた愛機と思わぬ邂逅を果たすという話です。
ちなみに頭の写真にもこの天山艦攻の写真が掲載されており、こちらを眺めながら読み解くといいでしょう。
長編戦記ではマリアナ海戦を戦った「521空」の話です。タイトルは「鵬部隊『銀河隊』マリアナの空に消ゆ」です。 内地で新鋭陸爆を受領し、故障に悩みながら急速練成を実施して、マリアナの戦場に出撃しましたが、露の間に部隊は壊滅、生き残ったのは筆者を含めてほんの僅かです。 新鋭陸爆とはいえ、もはや完成の域に達していた米機動部隊の防空網は突破できずに落とされていったわけですが、その薄命の部隊について克明に記録されています。
6月号がいま一つ印象が薄かったような・・・。ちょっと読み込まずに書き始めたからでしょうか?
「強行偵察機」が来月の特集ですが、潜水艦の特集が結構久し振りだった
だけに、次には期待ですね。偵察機話も久々ですし(^^
ふう、更新できた〜(笑)
2000/5/5 佐藤裕紀