考古学シリーズ:凍った城

バルハラントの南にある城についての考察。


 

 ガラハドを生き返らせた際に、デスが「バルハラントの凍った城に強い武器があるぞ 行ってみろ」と教えてくれます。終盤の武器イベントが発生する頃になると、バルハラントのガトの村の人から、「湖の氷が溶け始めたよ!」という話が聞けます。普段は氷の下に透けて見えるだけの城ですが、これ以降表層の氷が溶けて、中に入ることができます。

 

 まず、この城はいつ、誰が建造したものでしょうか。

 建造された当時は、当然水に没してはいなかった、と考えることができます。何らかの理由で大規模な地殻変動が起こり水没し、同時に起こった急激な気候変動により、一瞬にして凍結したものと思われます。この理由として、凍った湖の底に、花が咲いた状態で存在していることが挙げられます。

 水中に建造することにより、巨大な石を小さい力で動かすこともできる、という利点もありますが、それは却下します。むしろ、現実に存在するエジプトのピラミッドや奈良の大仏のように、砂や土に埋めて石を積み上げていく方式の方が合理的でしょう。

 石造建築物の超長期保存のために、わざと水中に沈めた例もありますが、それも却下します。詳しくは後述しますが、あの城は耐久性に関しては完璧ですので。

 

 凍結湖の城と、オールドキャッスルとニーサの神殿(タラール族が避難していた街)は、建築様式が酷似しているので、同じような技術、すなわち同一種族またはそれと交流のある種族により、同時代に建築されたものとみて間違いないでしょう。

 

 詩人ハオラーンのセリフから、オールドキャッスルが、サルーイン(1000年前まで)よりも古くから存在していたことは判明しています。そしてこの城は、神々の抗争より昔には、巨人族の城だったようです。巨人族は、神々の抗争以降、他種族と交流を持たず、里に隠れ棲むようになりました。城のサイズがやたら巨大なこともあり、この城は巨人族が建造したものとみて間違いないでしょう。

 主人公たちが巨人の里に行ったとき、巨人たちは「なんだ、こびとか」と言います。現在巨人族と呼ばれる種族は、神々の抗争以前にはそれが一般的な大きさで、それに対して古代人が「こびと」と認識されていたのかもしれません。

 つまり、太古の世界は巨人で埋め尽くされており、その隙間に古代人(こびと)が調和して生きていたと考えることができます。「こびと」は、巨人が視覚的に見た「小人」と、歴史的記憶から見た「古人」のダブルミーニングなのかもしれません。

 巨人族がかつてマルディアスじゅうに繁栄していたとすると、現在の巨人の里から遠く離れたところに、オールドキャッスルと同様の建築様式の城が存在していることに、何ら不思議はありません。

 

 現在ニーサの神殿と呼ばれている城(街?)は、半分埋もれた状態で、水を湛えていますが、それも、神々の抗争の影響より、そのような状態になったと思われます。そう、見えている部分は巨大な城の「屋上部分」に過ぎないというわけです。

 あるいは砂に埋まっていたのは建造中だったからかもしれません。建造中に神々の抗争が勃発し、巨人族が里に引きこもって放置されたために、かえって小さな古代人にとっての絶好の隠れ場所となったのかもしれません。

 ニーサがマルディアスにおいて広く崇められるようになったのは、大昔の神々の抗争により、古代人がニーサに導かれて地底に逃れて(以降、地底人)はるか後、人間が誕生してからです。そして砂漠の地下のニーサの神殿は、古代人が来る前からあの場所にあったのです。おそらく、当初は別の目的で建造されたはずです。それこそが、すでに名前は失われてしまった「伝説の湖の街」に他なりません。

 そして地底人は、砂漠の地下の最下層に、独自の街を築いています。地底人の建築技術ではあの程度が限界なのでしょう。規模も様式美も全く違う点が、ニーサの神殿が古代人の建造ではないことをを如実に物語っています。

 ニーサの神殿という名が付いたのは、あそこにトパーズが置かれた時点からでしょう。1000年前の戦いの後、エロールまたはニーサがあそこにトパーズを置き、その管理を地底人に託したものと思われます。

 

 …従って、凍結湖の城は、1000年前の大戦より遙か昔、神々の抗争よりも前に、巨人族によって建造されたと考えるのが、最も自然であるように思えます。巨人族と神々の共同作業であった可能性も大いにあります。この規模の城だからこそ、その後の幾多の破壊行為にも十分に耐え、存続し得たのだと考えられます。3つ(のうち2つがモンスターの住みかとなった)の城がいまでも一点の傷さえないあたりに、超古代文明の栄華が見てとれるというものです。

 そして1000年前の大戦前後、もしくはさらに昔の神々の抗争時に氷に閉ざされ、人が立ち入れず、デステニィストーンを安置するのに格好の場所となっていたために、そこに最も邪悪な力を持つオブシダンソードを置くことになったのではないでしょうか。

 

 では、この凍った城の城主は誰だったのでしょうか。

 当然、はじめは巨人族の権力者がいたはずです。いや、当時は全てが調和していた時代でしたから、神、という可能性もあります。が、神々の抗争で巨人族はこの城を去り、里に隠れます。それどころか神々さえも、マルディアスを見捨てて去っていったのです。

 仮に凍結が1000年前頃とすると、人間の誕生後、バルハル族の城になっていたと考えることもできそうですが…。

 ひとり、重大な存在が考えられます。デスです。デスは現在は冥府に封印され、死を司る神として存在していますが、1000年前の大戦時は、この城を拠点として戦争をしていたと考えられます。いかに大きな力を持っていたとしても、本拠地も持たずにまともな戦争ができるわけがありません。そして本拠地を氷に閉ざされてしまったのが、デスの直接の敗因だったのかもしれません。

*本拠地の重要性に関しては、「幻想水滸伝」を参照のこと

 いまさら主人公たちに凍った城の存在を、その地名まで口にして教えるとは、あの城がデスのゆかりの地であったと推測するに十分な状況証拠です。モンスターを意のままに操る力を持つミニオンが入口でマゴマゴしているのも、畏れ多くもかつてのデスの城に単身踏み込むことがためらわれたからではないでしょうか。

 

 また、そこに安置されている邪のオブシダンソードは、デスが所有する死の剣に威力や特性が酷似しています。さらに付け加えると、オブシダンソードとサルーインソードの形状は全く同じです。3種の剣ともに、サルーインが封じられた時点で存在していたことは確実です。そして刀身の制作は同一人物と断定しても良いでしょう。

 なかでも、サルーインを封じるためのオブシダンソードは、最後に造られたはずです。サルーインソードおよび無限に存在する(^^;死の剣が先行モデルとして存在し、サルーインを封じるための邪のデステニィストーン・オブシダンソードが、死の剣の威力・特性とサルーインソードのデザインを引き継いだ真打ちとして制作されたという可能性は否定できません。

*「真打ち」については「るろうに剣心」を参照のこと

 オブシダンソードが真打ちであったと仮定すると、3種の剣を制作したのは、他でもない兄・デスであったと考えるのが妥当です。デスとシェラハはサルーインよりも先にエロールに屈しているわけですし。オブシダンソードが、使いようによっては(笑)主人公たちが弟・サルーインに対抗するための切り札にもなりうることを考えると、かつてデスは「兄として、行き過ぎた弟をなんとか止めようとした」、そして「今またサルーインの愚かな行為を抑止しようとしている」と考えられるのです。

 オブシダンソードの制作こそ意図していなかったとしても、デスがサルーインソードと死の剣を制作したことに不思議はありません。長い戦いですから、お空の星の数ほどの予備が造られたはずです。デスは、そこに自分の造った様々な武器のストックがたくさん残っていると思っていたために、主人公たちに「強い武器がある」と言ったとも考えることができます。

 そしてデスは、サルーインソードに死の剣の威力を付加した、究極のオブツダンソード(仮称)を造っていたのかもしれません。デスが去った城でそれに目を付けたエロールが、オブシダンを埋め込んでオブシダンソードにした可能性はかなり高いでしょう。

 サルーインソードとオブシダンソードは形状が全く同じなので、瞬間的に見分けるのは困難です。1000年前の最後の戦いのさなか、ミルザはサルーインが取り落としたサルーインソードをオブシダンソードにすり替え、それを手にしてしまったサルーインは力を失い敗れた、とさえ邪推できるのです。

 そしてなによりも、サルーインに対抗できる武器を求める主人公にデスの名を提示するエロールは、デスの武器制作の腕を心底高く評価していたとみることもできてしまうのです。

 

 …いかがでしょうか。

 凍った城は、マルディアスの歴史を読み解く上で、非常に有力な手がかりなのです。

 この文章は、過去に私がのりおすくりゅう〜の掲示板に書き込んだものと、その関連の書き込みをもとに発展させています。小ネタは、それぞれの元発言者に先優権があります。

 この論議はこれで終わりではありませんので、みなさんも自由に妄想を展開してみてください^^。気になった点は些細なことでも追求していきましょう。


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