『クソゲー白書』批判

 『クソゲー白書』のISBNコード: ISBN4-931391-38-9

 大学の「数理統計学」という授業の課題で、こんなレポートを書いてみました。構成を簡略化して掲載します。

 提出日は2000年2月3日。この授業の通年の成績は「優」でした(笑)。

 無断転載・盗用は厳禁とします。


『クソゲー白書』考察

1.背景の考察

 『クソゲー白書』という本がある。

 任意団体電子計算機応用遊興柔物研究会という団体が「あなたがクソゲーだと思うゲームは?」というアンケートを取り、各ゲームジャンルごとに、クソゲーをランク付けした本である。

 この本のRPG部門では、ロマサガ1がクソゲー・ワースト1にランクされている。

 ロマサガ1は、私が人生の3分の1をかけて攻略・研究しているゲームである。

 発売後8年経ったいまでも多くの人に愛好され、ワンダースワンカラーへの移植も決定している。

 このゲームがクソゲーワースト1になることが、私には納得できない。

 よってこのレポートでは、推測統計を用いることによって、ロマサガ1を擁護してみる。

2.推測統計

2−1データ

 夏目書房 1998年 「クソゲー白書」 (任)電子計算機応用遊興柔物研究会より、データを引用する。

RPG部問有効回答数 288票
1位 ロマサガ1 14票
2位 ファイナルファンタジー7 13票
2位 聖剣伝説2 13票
4位 サガ・フロンティア 11票
4位 ビヨンド・ザ・ビヨンド 11票
6位 ドラゴンクエスト6 10票
7位 アーク・ザ・ラッド 8票
8位 摩訶摩訶 7票
9位 天外魔境 第四の黙示録 5票
10位 アーク・ザ・ラッド2 4票

2−2割合の差に関する仮説検定

 アンケート母体は、ゲーム好きの青年400人で、その大部分は「都内某ゲームクリエイター養成校」の学生であるという。

 ゲーム人口2000万人以上といわれる現代日本において、かなり偏った母体であることは明白である。

 データをぱっと見て気づくのは、もともと少ない母体の数に比べても、ランクインしたゲームの得票数が非常に少ないということである。

 1位のロマサガ1でも、約4.9%にすぎない。

 いくら1位と10位で得票数に3.5倍の差があるとはいえ、この少ない絶対得票数は、ロマサガ1をクソゲーワースト1と判定する根拠たりうるのだろうか。

 そこで、ここに挙げられたゲームにランク付けするのが適切かどうかを判断したい。

*

 RPG部門に回答した人のうち1位のロマサガ1をクソゲーと判断する人をPm、ロマサガ1をクソゲーと判断しない人を1-Pm、10位のアーク・ザ・ラッド2(以下アーク2)をクソゲーと判断する人をPw、アーク2をクソゲーと判断しない人を1-Pwとする。

 仮説検定は、割合の差に関する検定で表せる。

H: Pm=Pw versus A: Pm>Pw

 仮説Hは、ロマサガ1とアーク2をクソゲーとみなす人の割合が同じであることを表し、仮設Aは、ロマサガ1をクソゲーとみなす人の割合の方が、アーク2をクソゲーとみなす人の割合よりも高いことを表す。

 どちらの仮説が正しいかを検定するための検定統計量は、次の通りである。

 まず、仮説HとAのどちらが正しいかに関わらず、以下のことが成立する。

ただし、,.

 仮説Hが正しいとすると、この検定統計量は、

.

 よって、仮説H:Pm=Pw=Pが正しければ、この検定統計量の値は0近くの値をとることがもっともらしい。

 だが、仮説Hが誤りで仮説A:Pm>Pwが正しいときは、プラス方向に大きい値が出ると予想される。

 では、データから検定統計量の値を計算すると、

,,,

である。

 この値は正規分布のプラスの方の5%点である1.64より小さい(講義にて配布の資料参照;webには掲載していません)ので、H: Pm=Pwは棄却されない。

 つまり、ロマサガ1をクソゲーとみなす人の割合は、アーク2をクソゲーとみなす人の割合より多いとは言えない。

3.今後の課題

 以上より、クソゲー白書でランク付けて批判されているゲームは、統計学的にはランク付けできるほど得票数に差がない、と考えられる。

 さらに絶対的に少ない得票数から、少数の意見を誇張して、さまざまなゲームを不当に評価し、その名誉を傷つけていると言える。
 今後も、ロマサガ1をはじめ各種ゲームへの不当評価に関しては、積極的に批判していきたいと考える。

 もちろん、判定根拠に十分な信頼性と普遍性があるものは、この限りではない。


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