on 06/14/2000 13:56:15 by H.Ishiguro
FAQ
- Q
外来語表記で「モビリティ」/「モビリティー」の どちらが正しいのですか
- A
なかなか難しいご質問です。外来語表記は色々意見があると思いますが、標準の世界でも厳密な規定はありません
- JIS(規格)を作成する場合に従う事項(様式、用語なども含めて)を規定したJISとして、下記のものがあります。
- JIS Z 8301:1996 規格票の様式 改訂版が出ているはずですが (^^;)
- このJISは、JISハンドブック「標準化」に掲載されていると思います。
- この中には種々の規定(表題の付け方や構成等も)がありますが
最後の「解説(規定ではなく参考)」のなかに下記の記述があります。
- 【解説付表3 原語(英語)の語尾の長音符号を省く場合の原則】
- 原則 / 例
- a)その言葉が3音以上の場合には、語尾に長音符号を付けない。
- エレベータ(elevator)
- b)その言葉が2音以下の場合には、語尾に長音符号を付ける。
- カ一(car),カバ―(cover)
- c)複合語は、それぞれの成分語について、上記a)又はb)を適用する。
- モータカー(motor car)
- d)上記a)~c)による場合で、1)長音符号で書き表す音、2)はねる音、及び 3)つまる音は、それぞれ1音と認め、4)よう(拗)音は1音と認めない。
- 1)テーパ(taper)
- 2)ダンパ(damper)
- 3)ニッパ(nipper)
- 4)シャワー(shower)
- 参考
- (l)日本工業規格においては、英語のつづりの終わりの-er、-or、-arなどを仮名書きにする場合に、長音符号“一”を付けるか、付けないか、どちらかに決めたいということで以前から審議してきたが、問題が多く統一は困難なので、それが属する専門分野の学術用語の表記に従っているのが現状である。
- (2)学術用語においては、原語(特に英語)のつづりの終わりの-er、-or、-arなどを仮名書きする場合に、長音符号“一”を付けるか、付けないか、について厳格に一定にすることは困
難であると認め,各用語集の表記を,それぞれの専門分野の標準とするが、長音符号“一"は用いても略しても誤りでないことにしている。
- 備考
- この表は、1990年改正時のJIS Z 83OIの附属書2(用字、用語及び記述符号)から転載した。
-
つまり、原則として「2音以下」か「3音以上」かで語尾の「ー」を「付ける」か
「付けないか」が決まりますが、あくまで原則であり、強制するものでも、全ての
ばあいに同一に適用されるものでもないようです。
- 結局、慣用、つまり幅広く使用されていたり、学会、工業界等の統一見解があれば
それを尊重するという曖昧な規定(本当は規定ですらない)です。
- 何分、「生きた言葉」の事なので、厳密な規定を作れないと言う事情もありますが
- この原則に従うなら 「モビリティ」や「コミュニティ」は語尾に「-」を付けない事になります。
- 上記原則は、多分、「外来語の表記(平成3年6月28日 内閣告示第二号)」に
準拠して作成されたものと思われますが、原告示を確かめてありませんので、違う根拠によるものかもしれません。
上記JISの解説付表2「外来語の表記(エレベータ、コンピュータ、タクシー、シャッター等の例示あり)」は
明らかにこの告示に準拠しているものですが。
- JISには、分野別の用語規格がありますが、これらの用語規格JISでも、上記
原則を尊重しつつ、業界や世間一般の慣用を取り入れた「カタカナ表現」を採用して
いるのが実状と思われます。
-
ご承知と思いますが、IECにはIEC60050シリーズという
「IEC用語規格 (IEV) 」が有ります。
- この一部には用語の「日本語表記」が掲載されているものがあり
ます。但し、まだまだ日本語を掲載している規格が少なく、目的とする用語が「カタカナ」
で表記されているものを見つけることは困難かもしれません。
- また、その表記が「絶対」とはいえないことはJISの場合と同様です。
ただ、JISの用語規格やIEC用語規格に規定されている、ということは一つの
根拠というか表現の正しさを補強する材料といえますが。
- 同一用語でも使用されている分野によって異なる表記となっている可能性も
ゼロとはいえません。
-
あと、関連する情報としては、「新聞社」や「放送局」が独自に定めている
「用語集」が有ります。
- ただ、この内容も、各社により微妙に異なるとのことです。
- 「コミュニティ」等は、この方面の用語集(のルール)を参考にされた方がよいかもしれません。