2006年2月8日(水)「しんぶん赤旗」

派遣会社8割が違法行為 偽装請負や多重派遣 賃金抑制 労働者に犠牲
衆院委で佐々木議員追及


 日本共産党の佐々木憲昭議員は七日の衆院予算委員会で、増大する非正規雇用と防衛施設庁の談合問題を追及。深刻化する派遣・請負労働者の実態を告発し、政府が労働分野ですすめている規制緩和の根本的な転換を求めました。

 佐々木氏は、いまや三人に一人がフリーターや派遣・請負など「非正社員」だとのべ、劣悪な労働条件におかれていると指摘。都内の事業所を対象とした東京労働局の調査(昨年五月)をとりあげました。
 同局の調査した労働者派遣事業所の81・2%で、業務請負関係事業所では76・5%で、違法行為が横行している実態を指摘(グラフ参照)。禁止されている建設業への派遣や請負を装って労働者を「貸し出す」偽装請負、派遣先から派遣先にまわす多重派遣など、「まるで無法地帯だ」と批判しました。事態の背景に、大手メーカーへの派遣・請負会社間の売り込み競争と大企業の労働コスト削減政策があると追及しました。
 佐々木氏が取り上げた派遣・請負会社作成の売り込み資料には、「(派遣契約の合間に)3ヶ月だけ請負契約をするのは原則違法だが、法律的には違法ではない」との記述さえありました。川崎二郎厚生労働相は「きちっとした指導をしていきたい」と答弁しました。

 佐々木氏は、「受け入れ側の問題もある。派遣先の多くが大手企業だ」と指摘し(表参照)、大企業の雇用政策を批判。東京労働局の調査(昨年十二月)によれば、派遣・請負労働を受け入れる理由として企業側は「経費が格安」「雇用調整が容易」と答えていることを挙げ、「大手企業は、働く人たちの権利よりも、コスト削減のために低賃金の若者をモノのように使っている」と批判しました。川崎厚労相は「処遇が働きに合っていない場合がある」と認めました。
 佐々木氏は、事態が深刻化する大きな原因に、労働者派遣の自由化など政府がすすめてきた労働分野の規制緩和があると追及。規制緩和推進の中心となった首相の諮問機関「規制改革・民間開放推進会議」に財界代表が参加していることを挙げ、「こうして自分たちに都合のよい仕組みをつくってきた」と批判しました。

2006年2月8日(水)「しんぶん赤旗」

違法の派遣会社を罰して
佐々木議員の質問に反響


 七日の衆院予算委員会での日本共産党、佐々木憲昭議員の質問をテレビ中継で見た視聴者から、ファクスやメールで党本部に感想が寄せられました。その一部を紹介します。
 「テレビで佐々木さんという方を初めて知りました」という人は、「お話が分かりやすかったので、普段こういう番組は見ないのですが最後まで聞き入ってしまいました」とメールを送ってきました。「派遣会社はお金をもうけるためにいろんな法律違反をしていると感じます。働く私たちはまるで使い捨てです。派遣会社、(受け入れ)企業側にも法律違反した場合の厳しい罰則をつくってほしいです」と訴えています。
 「私は派遣会社にいるもの」という人は、「弱い立場の人たちから搾取して成り立っているのが派遣会社です。今の派遣会社には苦しんでいる人たちがいます。共産党だけが頼りです」とメールで期待を寄せています。
 東京・小平市の女性(56)は、「たんたんと質問を重ねていく中で多くのことが鋭く追及されていたと思います。素晴らしい質問でした。国民の生活を守るためこれからも鋭く政府を追いつめてください」とファクスを寄せました。
 商社の一般職という人は、「三年以上同じ仕事をしていれば社員にする法律を逆手に三年に近づいたら契約解除が行われています。国会でとりあげてほしいくらいです」とメールで要望しています。


2006年2月8日(水)「しんぶん赤旗」

小泉「改革」で増える非正規雇用 佐々木議員の質問
衆院予算委


 七日の衆院予算委員会で、日本共産党の佐々木憲昭議員は「格差社会」の議論に関連して、非正規雇用の問題を取り上げました。増える非正規雇用の劣悪な実態を示し、労働分野の規制緩和をすすめた政府の責任をただしました。

(写真)パネルを示して質問する佐々木憲昭議員=7日、衆院予算委員会

■派遣・請負労働者給料は正社員の1/3
 「パート、アルバイト、フリーター、派遣・請負労働などがどんどん増えていることが『格差社会』の根本にある」。佐々木議員は三人に一人が非正規雇用となり、とくに若者の比率が高いことを示しました。(グラフ上)
 液晶テレビの生産で有名な家電メーカー・シャープの三重県亀山工場。小泉首相は昨年一月、視察しています。佐々木議員が、亀山工場に「非正規労働者は何割いるか」と聞いたのに対して、首相は「わかりません」。
 佐々木議員は、昨年八月時点で同工場の労働者三千三百人のうち、六割にあたる二千十六人が、請負中心の非正規労働者だと指摘。「六割というのは非常に高い」とのべ、トヨタ、日立など大企業が非正社員を増やしている実態を示しました。
 非正規労働者の募集の状況はどうなっているのか。駅などにある『フリーペーパー』に載っている派遣や請負の求人広告には「日給九千円」「月収三十三万円以上」などと書いてあります。しかし、実態は違います。トヨタグループの子会社「光洋シーリングテクノ」(徳島市)では、正社員と同じ仕事をしているのに請負労働者の賃金は三分の一。三カ月の短期雇用で、入社以来八年間で二十六回更新している例もあります。しかし七年たっても賃金が一円もあがりません。
 佐々木議員が「こういう事態が広がっているという認識があるのか」とただしたのに対し、川崎二郎厚労相は、非正規労働の賃金が「そうじて低いということは認める」とのべました。

■企業の違法行為罰則なく野放し
 「八割が違反行為をしている無法地帯。罰則がないから野放しになっている」。佐々木議員は派遣・請負業者の違反行為が横行する実態を告発しました。
 労働者派遣法は罰則がなく、悪質な事業者は公表することになっていますが、公表した例は一件もありませんでした。最近やっと二件の免許取り消しをおこなっただけです。職業安定法は罰則がありますが、適用したことは一度もありません。
 佐々木議員は罰則がないこと以外に、違法行為が横行する二つの理由を指摘しました。
 一つは人材業者の売り込み競争です。ある人材派遣・請負会社の内部資料によれば、大手メーカーに対して違法ギリギリの提案をしています。製造業への一年を超える派遣契約は違法ですが、途中で三カ月だけ請負契約にした後でまた派遣に戻すというものです。
 もう一つは受け入れる側の問題です。企業は請負労働者を活用する理由として、「経費が格安なため」「雇用管理の負担が軽減されるため」「雇用調整が容易なため」をあげています(東京労働局・昨年十二月二十七日調査)。
 しかも大企業ほど請負労働者を多く利用しています。昨年九月の厚労省の「派遣労働実態調査」によれば請負労働者がいる事業所は、三十人以上百人未満のところは22%、百人以上五百人未満のところは53%、五百人以上のところは79%です。
 佐々木議員は「こうして大企業の経常利益は近年急速に拡大してバブル期の二倍の水準に達している。その一方で労働者の雇用者報酬は毎年減り続けている(グラフ)。低賃金の非正社員が増えた理由は、このような大企業の雇用政策にあることは明らかではないか」と厳しく指摘しました。
 川崎厚労相は「だんだん正規雇用が増えていくような対策をうっていかなければならない」と答えました。

■無法化すすめた政府の規制緩和
 佐々木議員は、正社員から非正社員への置き換えを加速させ労働環境を無法状態化したのが、これまで政府がすすめてきた労働分野の規制緩和だと追及しました。
 〇四年には労働者派遣法の改悪でそれまで禁止されていた製造業への派遣ができるようになり、九九年には民間の有料職業紹介が自由化され、〇三年の労働基準法改悪によって有期雇用の延長が可能となり、契約社員が増加しています。
 佐々木議員は、非正規労働者を増加させ、劣悪な労働条件においてきた原因である労働の規制緩和が、財界の代表が直接のりこんだ政府の「規制改革・民間開放推進会議」ですすめられ、企業の都合のよい仕組みをつくってきたことを批判。「非正規雇用が増えたのは、政府の政策に原因がある」と問いただしました。
 小泉首相は「正社員」が増えてパートが減っているなどとして、「柔軟性をもった労働環境を整備してきたからではないかと評価されている」とのべました。
 これにたいし、佐々木議員は、正社員が増えているという統計のごまかしを指摘し、最新の総務省の労働力調査では正規社員が昨年より減り、派遣、請負・契約社員など非正規社員は過去最高となっていると反論。「規制緩和ばかりをすすめてきた政策の根本的転換をしなければ違法と雇用不安がまん延し、日本の将来が大変なことになる」と厳しく指摘しました。

■派遣労働者の感想
 非正規雇用は拡大し、その実態は違反行為が横行する無法地帯、それは政府の規制緩和が加速した――。「(切実な実態の)原因は働く側ではなく、政府の政策にある」と迫った佐々木議員の質問に、派遣労働者らから「こんなにひどいのはおかしい」との声があがりました。

■初めて知りました
 20以上の派遣先を経験してきた千葉陽子さん(31)=大阪府住吉区=は質問をテレビで見ていました。「質問を聞いて、初めて二重派遣が違法だと知りました。当たり前だと思ってました。びっくり」。「残業を断ってはいけない」などの条件をつける派遣先や、「休まれると困るから」と、家族に介護の必要な人がいないか調べる派遣先もありました。「みんな正規がいいと思っているんです。でも、社員より仕事ができる人でも絶対に正規にはしてくれない。見ている方もつらくなる。こんなにひどいのはおかしい」といいます。

■つらい生活見えてない
 「佐々木議員の質問は、気持ちにかみあったいい質問だった」と語ったのは派遣でデータ入力の仕事をしている東京・町田市在住の植松露央沙(ろーざ)=仮名=さん(24)。「小泉さんは、規制緩和で柔軟性のある労働環境を整備したと言ったが、正社員を減らして不安定雇用を増やしていることで、私たちがどんなにつらい生活を送っているかが見えていない」と語りました。

■ぼくらはゴミじゃない
 「ぼくらはゴミじゃない。ロボットでもない」。派遣労働者の男性(24)=東京・港区=は語ります。派遣先やアルバイト先で「おまえの代わりはいくらでもいる」「今日は金を払わない。帰れ」などの言葉を受け、つらい思いをしてきました。「『若いんだから、ちゃんと就職しな』と何度も言われてきた。こんな社会は変えないといけない。佐々木さんがぼくらのことを言ってくれてよかった」と語りました。


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