2006年1月20日(金)「しんぶん赤旗」
春闘 賃上げ、全労働者に
国民共闘委 経団連など包囲行動
澄みわたった冬空に映える真っ赤な組合旗や色とりどりののぼりがちぎれんばかりにはためきます。全労連などでつくる国民春闘共闘委員会は十九日、大企業が軒を並べる東京・丸の内をデモ行進し、財界の総本山、日本経団連前で行動をくり広げました。連合も春闘勝利に向けた中央闘争委員会を開き、〇六春闘がスタートしました。
(写真)経団連会館の前で「賃金制度の改悪を許すな」などと抗議する経団連包囲行動参加者=19日、東京・千代田区
「すべての労働者の賃上げを実現しよう」「大企業は大もうけを労働者・下請けに還元せよ」と力強く唱和しました。
この日、全国で早朝宣伝や昼デモ、地域集会を実施。東京では、デモ・経団連包囲行動などにのべ千八百人が参加しました。
朝六時すぎに勤務が明け、「春闘解体攻撃を許すな」と書いた横断幕を掲げて行進したタクシー乗務員、細田恵也さん(40)は自交総連の組合員。都内にタクシーをあふれさせ、低賃金と長時間労働を押しつけた小泉内閣の「規制緩和」を批判。二年前から毎夜乗務に変えたものの、年収は十年前と比べ、百万円の減収で三百万円を切るといいます。「金は回りまわるもの。労働者の賃金が上がれば、僕らの水揚げも上がる」と大企業は責任を果たせと求めました。
「景気回復は、まったく実感がない」という都内の機械工場で働くJMIU(金属情報機器労組)組合員の高橋一夫さん(36)。五年前の賃金カットで、入社十七年目の手取りは約十八万円。「このままでは生活を守れない。仲間と一緒にたたかい、賃上げをかちとりたい」と意気込みます。
経団連会館前で全労連の坂内三夫事務局長は、大企業がバブル期を上回る利益を上げる一方、労働者の雇用と生活を破壊し、命と安全を脅かす鉄道事故や欠陥自動車、耐震偽装問題をあげ、「経団連に自己批判と国民への謝罪を要求する」と抗議。「日本中のすべての労働者に賃上げをしても、おつりがくる。労働者の犠牲の上にため込んだ内部留保を社会的に還元せよ」と訴えました。
一方、連合の中央闘争委員会では、高木剛会長が「賃金改善ができる原資の確保とパートなどの処遇改善を視野にアプローチを」とのべました。
2006年1月20日(金)「しんぶん赤旗」
ライブドア急成長のカラクリ
“錬金術”規制緩和で加速
■Q&A
インターネット関連会社のライブドアは、設立から十年で株式時価総額が七千億円を超える規模に成長しました。急速な拡大のカギは、株式分割や株式交換など金融テクニックを活用した企業合併・買収(M&A)攻勢でした。そのカラクリをQ&A形式で見てみました。(矢守一英)
Q 資金の乏しい新興企業が、短期間にM&Aを繰り返すことができたのはどうしてなのか。
A ライブドアも十年前に設立された当時の会社の資本金は六百万円だった。二〇〇〇年四月、東京証券取引所「マザーズ」市場への株式上場を機に、一般投資家からの資金調達が可能になったことで、資本を増やしてきた。
そこでライブドアが多用したのが、株式交換や株式分割という手法だ。
買収対象企業の株主に、現金の代わりに自社株式を渡す株式交換で、子会社化することも可能になった。
Q 買収の代価は現金の方が確実ではないかと思うけれど。
A 買収する側の株価に上昇する期待が強ければ、受け取る側にとっても魅力は増す。ライブドアは、株式分割などで自社株価が急騰したタイミングで、株式交換によるM&Aを実施。投資家がその買収攻勢を収益拡大の機会と受け止め、さらに株価が上がるというサイクルが繰り返された。
Q 株式分割とはどういうこと。
A 本来は株数を増やし、一投資当たりの単価を下げて投資家が株を買いやすくするための行為なんだ。一株を五株に分割すると、理論上は株価は五分の一になる。
Q なぜ株価が上がったのか。
A 分割を決定しても、実際に新株が交付されるまで株券の印刷などで五十日程度かかる。それまでは、分割後の新たな発行済み株式総数に対して流通する株式が品薄状態になり、株価が上昇する効果があった。ライブドアはこうした株式分割を繰り返し、株式の時価総額(発行済み株式数に株価を掛けた数字)を膨らませていった。
Q ライブドアはどんな株式分割をしたの。
A ライブドアは一株を百株にするなど大幅分割を行った。それまでは分割を行うにしても、一・五から二程度が一般的だったという。ライブドアの行為がいかに突出していたか分かる。だから「本来の目的から逸脱した不正常なやり方」(証券業界関係者)と疑問の目が向けられてきた。
問題視した証券市場でも、今年から印刷前でも新株を売買できる新方式を導入。大幅な分割の事実上の規制も行われるようになった。
Q 株式の交換や分割は違法なの。
A それ自体は法律違反ではない。しかし、ライブドアでは自社で出資する投資事業組合(ファンド)がすでに相手企業を買収していたのに、その企業を株式交換で子会社化すると偽りの発表をした疑いが持たれている。ある証券市場関係者は「ライブドアはいつも不正ぎりぎりのところを進んできた」と指摘する。
Q 投資事業組合とは。
A 個人や企業が集まり、株式などに投資するための組織。登記は不要で、税制面でも投資目的の会社より有利とされる。ただ投資組合には情報開示義務がなく、多くの場合、出資者や運営実態が不透明といわれる。
ライブドアはこうした組織も悪用し、株式交換を繰り返し不正な利益を得ていた疑いも浮上している。
Q 今回のような事件を許した背景には何があるのか。
A 自民党政権が推進してきた規制緩和が背景にある。ライブドアが多用してきた株式交換による企業買収は、一九九九年の商法「改正」(自民、公明、民主、社民など賛成、共産党は反対)で導入されたもの。株価を高くする“錬金術”とされる株式分割は、二〇〇一年にそれまであった規制が撤廃されている。
「そうした規制緩和の流れのなかで、法の抜け穴にも目をつけ、のし上がってきたのがライブドアだった」(証券業界関係者)
2006年1月20日(金)「しんぶん赤旗」
超過利息また認めず サラ金被害者救済の助けに
最高裁
貸金業者が利息制限法の上限を超える金利(超過利息)を受け取れるかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は十九日、契約の特約に超過利息支払いの事実上の強制がある場合は貸金業者が超過利息を受け取ることは認められない上、受け取れる条件である「債務者が任意に支払ったか」どうかは、特約に限らず契約書や取り立て時の説明内容なども検討して判断すべきだとする判決を出しました。
超過利息をめぐっては第二小法廷が十三日、支払いが遅れた場合に一括返済を求められる特約が付いた融資では、超過利息の支払いを借り手に事実上強制するもので、任意の支払いとはいえないとの判断を示し、貸金業者の超過利息受け取りを認めませんでした。
訴訟は、同様の特約がある融資の超過利息支払いの任意性が争われたもので、第一小法廷は、この特約がある場合の超過利息支払いは任意とはいえないと第二小法廷の判断を踏襲。貸金業者に超過利息の受け取りを認めた二審判決を破棄し、広島高裁に差し戻しました。
第一小法廷はさらに、任意に支払ったかどうかは、契約書や説明書の文言、契約時、取り立て時の説明内容など「具体的事情に基づき、総合的に判断されるべき」と指摘。特約に限らず「事実上の強制」がないかが検討される可能性があり、貸金業者が超過利息をとる条件に対し、第二小法廷判決に続いて厳しい判断を示したといえます。
日栄・商工ファンド対策全国弁護団の呉東正彦弁護士は「貸金業者が、特約だけでなく何らかの書面や口頭でも『超過利息を払え、払わないと不利益を受けるぞ』という事実上の強制を加えたら、任意性は認められず、超過利息は受け取れないという判断だ。多重債務救済の大きな武器になる」と語りました。
訴訟は、アイフル子会社の商工ローン「シティズ」が連帯保証人に対し、約二百三十万円の支払いを求めたもの。
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