2005年12月29日(木)「しんぶん赤旗」

主張
均等法改正へ
「何も変わらない」ではなく


 男女雇用機会均等法の見直しにむけて、厚生労働省の労働政策審議会が厚生労働相に建議を行いました。
 一九八五年の均等法制定から二十年、均等法以前は女性が採用されなかった職種にも女性の進出がすすみました。しかし九七年の前回改正で雇用のすべての場面で差別が禁止されてもなお、職場の差別は残されています。賃金格差や管理職比率でも先進国で最低レベルです。あるアンケートでは、均等法ができても「何も変わらない」と、働く女性の七割近くがこたえています。

■差別是正の効果うすく
 いま求められているのは、こうした差別の実態を現実に是正できる法改正です。
 しかし建議の内容は、改善を求める女性の願いに、十分こたえるものとはなっていません。
 建議が、妊娠・出産を理由に退職や配置替えを迫るなどの不利益取り扱いを禁止し、セクシュアルハラスメント対策で事業主の義務づけをうちだしたことは、一定の前進です。改善を求める女性の声と運動の反映です。
 しかし均等法後、大企業中心にひろがったコース別雇用管理制度など、事実上の差別をつくりだしている間接差別については、禁止を盛り込んだものの、その範囲は狭く限定しています。労働組合や女性団体などからきびしい批判の声があがっています。
 建議が間接差別と考えられるとして示したものは、採用時の身長・体重要件、コース別雇用の総合職採用での全国転勤要件、昇進における転勤要件の三つです。しかもその三つでも、企業の業務上の必要性などが認められれば禁止になりません。これではいくらでも企業に有利な判断が可能です。
 建議が不十分な内容となっているのは、財界・企業側への配慮にほかなりません。企業側の審議会委員は、間接差別の禁止を盛り込むことにつよく反対しました。また妊娠・出産理由の不利益取り扱いの問題でも、産休などの休業は仕事をしていないのだから、休んでいない人とは同等には扱えないという態度に終始しました。男女平等に対する社会的責任の姿勢に欠ける、財界・大企業の異常な立場を示しています。
 建議は、見直しの理由の一つに、国連・女性差別撤廃委員会などの「国際的な場で指摘」を受けたことをあげています。
 来年は、女性差別撤廃委員会に対する六度目の政府報告を提出する期限です。実効性をもたないままに、国連に「間接差別を禁止した」と報告するのであれば、国際社会をあざむくものといわざるをえません。
 男女差別の是正のために、欧州諸国などでは、権限の強い独立した救済機関を設置しています。企業側が“差別ではない”と立証できなければ違法となる仕組みや厳しい罰則規定など、差別禁止に実効性をもたせる制度も確立しています。また労働時間規制やパートの均等待遇原則などが当たり前のルールになっています。
 こうした国際的な水準や国際条約の見地にたった抜本的な改正をおこなうことが、日本政府の責務です。

■実効ある法改正めざして
 建議をうけて、来年の通常国会に均等法改正法案が提出される予定です。
 日本共産党は、国会内外で女性、国民のみなさんと力をあわせて、男女平等の前進と現実の差別是正に役立つ改正のために全力をあげます。


2005年12月29日(木)「しんぶん赤旗」

高値受注へ新方式画策 大手ゼネコンが独禁法逃れ
1月の 談合罰則強化を前に


 入札談合にたいする罰則を強化した改正独占禁止法の施行(一月四日)を前に大手ゼネコンが、独禁法をのがれて引き続き高値受注もできる入札方式を拡大しようとしていることが二十八日、本紙の取材で分かりました。これにより談合がなくなったとしても、公共工事によるゼネコンが大もうけする構図は是正されないことになります。

 複数のゼネコン幹部によると、鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組など大手ゼネコンの間で改正独禁法について非公式に協議がはじまったのは十一月ごろ。十二月には、東京都内で開かれた大手ゼネコン四、五社の首脳らによる会合で、“独禁法違反行為はおこなわない”旨をあえて「確認」した、といいます。本紙が入手した大手ゼネコンの内部文書では、改正独禁法が適用された場合、「事業の継続にも大打撃を与えるほど厳しいもの」になると危機感を表明しています。
 この動きについて大手ゼネコンの営業幹部は「ゼネコン汚職事件後も、談合担当者の配置がえなどをしたが数年後には元に戻った。今回も本当に談合をやめるかは疑問だが、改正独禁法の罰則強化で新たな対応が必要になってきたのは間違いない」と話します。
 一般競争入札では談合をやめると高値受注は難しくなります。しかし、価格競争ではなく、「技術評価」もくわえた「総合評価方式」や、予定価格を設定せず、設計・施工を一括して発注する方式などを使えば、大手ゼネコンが圧倒的に有利となる入札方式になります。このため、日本建設業団体連合会などゼネコンが加盟する業界三団体は、昨年九月にこうした入札方式を推進する提言を出すなど政府に強く働きかけてきました。今年十二月の会見で日建連の梅田貞夫会長は、「これ(改正独禁法施行)によって、入札契約制度を変える必要が出てくる」とのべました。
 設計・施工一括発注方式の典型といわれるのが、三月に国土交通省が入札した羽田空港再拡張事業。入札には、鹿島、大成、清水、大林組など大手ゼネコンを中心とするグループだけが参加、約六千億円(消費税込み)で落札しています。
 同工事にかかわった別の大手ゼネコン幹部は「独禁法の罰則強化と入札制度改革は一体だと思っている。羽田空港工事では、受注後、各工区割りについて各社で話し合ったが、これは談合にはならない。今後、このような入札方式を拡大していくのがカギとなっている」と語っています。
 総合評価方式や設計・施工一括発注方式などを推進する「公共工事の品質確保の促進に関する法律」は三月末、自民、公明、民主、社民の各党の賛成で成立。日本共産党は反対しました。

 ▼改正独占禁止法 談合などにたいし公正取引委員会が納付を命ずる課徴金は、談合などで受注した契約金額の6%(大企業)から10%(同)に引き上げられます。違反を繰り返した企業には、課徴金算を五割増しとする制度も新たに導入しました。
 改正後でも日本の課徴金は、欧米に比べて低い現状があります。


2005年12月29日(木)「しんぶん赤旗」

豊羽じん肺 勝利和解
会社側 原告17人に事実上謝罪


 札幌市の金属鉱山「豊羽(とよは)鉱山」で働き、じん肺になった労働者と遺族ら十七人が、雇い主である豊羽鉱山と親会社の新日鉱ホールディングスなどを相手取って加害責任と賠償を求めていた「豊羽鉱山じん肺訴訟」が二十八日、札幌地裁で和解しました。
 和解の内容は、被告は原告全員に対して総額二億一千万円を支払うとともに、原告らに対し弔意とお見舞いの意思を示し、じん肺被害を回避するためいっそうの努力を約束するというものです。
 六月に亡くなった原告の芳賀文夫さん=当時(71)=の遺影を抱いた妻・麗子さん(57)は「『麗子、最後、頼むな』が夫の最期の言葉でした。やっと悔いのない気持ちで報告できます」と笑顔で涙をぬぐいました。
 弁護団長の長野順一弁護士は和解について、全面勝利解決した北海道石炭じん肺訴訟などに準じた和解金額が支払われたこと、時効差別なく原告全員が救済されたこと、事実上「謝罪」し今後のじん肺被害の防止を誓約したことをあげ、「きわめて大きな意味を持つ和解だ」と強調しました。
 同訴訟は、二〇〇二年八月の提訴以来、約三年にわたる口頭弁論、証人尋問、豊羽鉱山の「実地検証」などを経て、今年七月に結審。札幌地裁の和解勧告にもとづき協議をしていました。


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