2005年12月16日(金)「しんぶん赤旗」

均等法の改定 厚労省が報告素案
間接差別を3つに限定


 厚生労働省はこのほど、労働政策審議会雇用均等分科会にたいし、来年の男女雇用機会均等法の改定にむけた「報告(素案)」を提示しました。間接差別の禁止を盛り込んでいるものの、「素案の内容では実際には差別是正に役立たない」との声も上がっており、十六日に開かれる次回分科会での検討が注目されています。
 性にかかわりのない雇用条件や基準が結果として、男女の格差・差別になる間接差別について素案は、対象となる基準を、「募集・採用時における身長・体重・体力」「総合職の募集・採用時の全国への転勤」「昇進における転勤経験」の三つに限定しました。十一月に開かれた同分科会に厚労省が示した「たたき台」では三つの基準「等」と含みをもたせる表現をしていましたが、明確に絞りました。
 さらに職務との関連性があるなどの合理性・正当性が認められれば、間接差別と認められないとの要件も盛り込んでいます。

■解説

■実効性に懸念あり
 均等法制定後、職場に全国的な転勤や長時間労働ができるかどうかを基準にした昇進・昇給のコース分けなど巧妙な差別のしくみが導入され、それが女性差別の温床となってきました。
 しかし素案の方向は、間接差別の禁止をかかげながら、実際には差別是正に役立たないという意見や疑問がだされています。
 間接差別の対象を三つに限定してしまうことで、それ以外ものが差別容認につながる懸念があり、差別のしくみが形を変えた場合に対応できなくなります。
 加えて、企業側に有利に合理性・正当性の判断基準を定めることで、事実上、ほとんど規制が及ばない恐れがあります。
 差別是正に実効性をもたせるためには、差別の被害が訴えやすく権限の強い救済機関を設置すること、企業側に資料提出義務と立証責任を負わせるなど、格差の実態に対応して改善を図ることのできる仕組みが必要です。素案にはこうした内容も盛り込まれておらず、実効ある改正とはほど遠いものとなっています。
 (党女性委員会事務局 米沢 玲子)


2005年12月16日(金)「しんぶん赤旗」

改悪労安法の省令案 過労死対策を骨抜き
医師面接 労働者の申し出必要に


 厚生労働省の労働政策審議会は、労働安全衛生規則等改正省令案要綱を十五日までに川崎二郎厚労相に答申しました。省令案は、十月の特別国会で成立した改悪労働安全法の具体的内容を定めたもの。長時間労働による過労死など脳・心臓疾患や精神障害の予防策を大幅に後退させるなど重大な内容がふくまれています。

 現行の通達「過重労働による健康障害防止のための総合対策」は、事業者にたいし詳細な措置をもとめています。
 (1)一カ月四十五時間を超える残業をさせた場合は、当該労働者の作業環境や労働時間、深夜業の回数、健康診断の結果などの情報を医師に提供し、事業場内の健康管理について助言指導を受ける(2)過労死の恐れが最も高まる一カ月百時間超または二―六カ月平均で月八十時間超の残業をさせた場合は、当該労働者に医師の面接による保健指導を受けさせる、です。
 これらの残業時間枠は医学的検討の結果つくったもので、過労死が労災死亡者の一割を占めている現状からみると一層の規制強化が必要です。しかし、厚生労働省が示した省令案はこの通達を骨抜きにする内容となっています。
 医師の面接指導を受ける対象を、(1)残業時間が月百時間を超え(2)疲労の蓄積が認められる(3)労働者の申し出があった――という三つの要件を満たした場合に限定しています。長時間働かせても労働者が申し出ない限り、事業者に義務は生じないしくみです。
 さらに問題があります。製造業を中心に請負など外部労働者が混在して重大な労災死亡事故が増大しているなかで、大企業などの元方(もとかた)事業者に包括的な安全衛生責任を負わせていないことです。省令案は、作業間の連絡調整・合図の統一などの措置を課すにとどまっています。

■20日まで意見募集
 厚生労働省は、この労働安全衛生規則改正省令案について、一般からの意見を二十日まで募集しています。よせられた意見を考慮し最終的な決定をするとしており、施行は来年四月一日です。
 【意見提出先】氏名(法人名)と住所を記入の上、次のいずれかの方法で。【郵送】〒100―8916東京都千代田区霞が関1―2―2厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課【ファクス】03(3502)1598【電子メール(テキスト形式)】keikakuka@mhlw.go.jp


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