2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」

違法な派遣・請負 1年で倍増 是正指導 訪問事業所の51%
大門参院議員に厚労省が報告


 違法な労働者派遣や業務請負がこの一年間で倍増していることが、日本共産党の大門実紀史参院議員への厚生労働省の報告で明らかになりました。同省職業安定局需給調整事業課が集計したものです。

 労働者派遣は、雇用者である派遣事業者が企業に労働者を貸し出すしくみ。業務請負は、企業の指揮命令から独立して仕事を完成させます。
 報告は、二〇〇四年度に各都道府県の労働局職業安定部が、申告・相談などに基づいて労働者派遣事業所を訪問し、労働者派遣法違反などで是正指導した数を示しています。訪問四千五百六十三カ所のうち、是正指導したのは二千三百三十七事業所(51・2%)にのぼりました。〇三年度は25・1%(三千九百八十五事業所のうち一千二事業所)で、二倍を超える増加ぶりです。
 このうち偽装請負(=派遣法の規定を逃れるため、請負を装って企業に労働力だけを提供すること)など、業務請負での是正指導は六百三十九事業所。前年度二百四十八事業所の二・六倍と急増しています。
 東京労働局では、労働者派遣事業所七百十一カ所を調査し、五百七十七カ所で違法状態がありました。その率81・2%という高さです。業務請負関係では、百四十一事業所のうち76・5%(百八カ所)で偽装請負などの是正指導をしています。
 労働者派遣法は昨年三月施行の法改悪で、製造業務への派遣が解禁され、対象労働者が拡大されました。派遣や請負は、利用企業が雇用責任を負わずにすむため、無権利・低賃金の使い捨て労働力といわれています。

 (注)〇三年度の派遣労働者数は、五年前の二・六倍にあたる二百三十六万人。請負労働者は統計がありませんが、百万人ともいわれています。労働者派遣は、雇用責任があいまいになるため、労働者が不利益を被りやすく、戦後は職業安定法で禁止されました。経済界の要求で、一九八六年労働者派遣法の施行により、これが一部解禁されて以降、法改悪を重ね拡大の一途をたどっています(一貫して反対したのは日本共産党のみ)。

■派遣・請負労働者の保護法制が急務
 大門実紀史議員の話 規制緩和による派遣労働が拡大するもとで、違法な派遣・請負が急増していることが示されました。いずれも企業のコスト削減の一手段として活用され、若年層を中心に増大している雇用形態です。今後、行政当局による指導監督の強化とともに、派遣・請負労働者保護法制の確立が急務です。

■事例をみると――
 ○宅配便大手の佐川急便が、全国的に荷物の集配業務を下請けにだしたとみせかけて、違法な指揮命令をしていた(偽装請負)ため、派遣法違反で厚労省が是正指導。
 ○大手派遣事業者・グッドウィルは、派遣法が禁止する建設業務に労働者を業務請負と偽って派遣していたことが、労働災害で発覚。東京労働局から改善指導を受けても改めなかったため、より重い処分の改善命令に。
 ○大手派遣事業者・クリスタルグループの無届け事業所が、運転資格のない労働者をフォークリフト運転業務につかせ、労働者の労働災害(死亡事故)が発生し、派遣法・労働安全衛生法違反で罰金刑が今年5月に確定。愛知労働局が労働者派遣事業停止命令・事業改善命令。


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