2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」
看護師1000人デモ、集会
「過労死しそう」増員要求
全国から参加した約千人の看護師や介護職員らが白衣姿で十八日、東京・銀座をデモ行進し、プラカードやゼッケンで、「看護師を増やして」「患者負担増反対」とアピールしました。
日本医労連、自治労連、全大協(全国大学高専教職員組合)、福祉保育労、東京医療関連協(東京医療関連労働組合協議会)の五団体が共催したもの。医団連(医療団体連絡会議)と中央社保協が協賛しました。
デモに先立ち日比谷野外音楽堂で開いた中央決起集会で、日本医労連の田中千恵子委員長は「このまま看護師を続けたら、自分が過労死するかもしれない。医療事故も心配です。だから看護師を辞めます」という悲痛な声を紹介。「『看護・介護職員を大幅に増やせ』という私たちの声を国民に届け、大きな世論にしましょう」とよびかけました。
医団連を代表して、全日本民医連の鈴木篤副会長が連帯あいさつしました。
鳥取県米子市内の民間病院の看護師・栗田円さん(23)は「やりがいはあるけど、忙しすぎて患者さんのそばにいてあげられない。残業も毎日三時間以上あり、ほとんどサービス残業です」と訴えていました。
デモ行進を見ていた靴店の女性店員(50)は「看護師が不足してるんですね。就職難だと思うので不思議な感じです。資格をもっていても辞めてしまうんだから、看護師さんって大変な仕事なんですね。患者さんのためにも、増やせばいいのに」と話していました。
2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」
タクシー運転者の労働条件
改善必要と政府
■小林議員が質問主意書
政府は四日付で、日本共産党の小林みえこ参院議員提出の「タクシー業界の過当競争とタクシー運転者の過酷な労働実態に関する質問主意書」に対し答弁書を出しました。
答弁書は「タクシー運転者の賃金、労働時間等の労働条件の改善を図ることは重要な課題である」とし、五月に国土交通省、厚生労働省の「タクシー運転者の適切な労働環境の確保に関する連絡調整会議」を設置して検討してきたと回答。しかし、タクシー事業にかかる需給調整規制(台数規制)が原則廃止されたことから、台数などは各タクシー事業者の自主的な経営判断に基づいて決定されるべきもので、運転者の労働条件の改善はタクシー事業者の責任だと主張しています。
また、全国自動車交通労働組合総連合(自交総連)が提案した「タクシー運転免許の法制化」については「承知している」と回答するにとどまりました。交通政策審議会自動車交通部会に設置されている「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」の場において、必要な環境整備方策を検討していくとしています。
小林議員の質問主意書は、〇二年二月のタクシー規制緩和以来、大阪の「タクシー戦争」にみられる過剰な参入による過当競争が激化してきたと指摘。
タクシー労働者の適正な労働条件確保と利用者の安心・安全を第一に国民の信頼を確立すべきだとして、政府の見解を求めていたものです。
2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」
「アナタ今日から別会社ね」 “身売り”IBMの残酷
労働者支援の会結成へ
経済同友会の北城恪太郎代表幹事が会長を務める日本IBMで、「リストラを許さない」と日本IBMの労働者を支援する全国連絡会結成の動きがすすんでいます。
日本IBMは、「この部門は必要がない」と判断すれば、労働者ごと他企業に売却する手法でリストラを行ってきました。ハードディスク部門を日立に売却(二〇〇三年一月)し、八百人の労働者を本人の同意を無視し、日立グローバルテクノロジーズ社に転籍。パソコン部門は中国企業の聯想(レノボ)グループに売却し、六百人がレノボの日本法人に移されました。日本IBMの子会社のディスプレイ・テクノロジー社は解散し、労働者四百人を別会社への転籍や希望退職に追い込みました。
職場では「成果主義」が徹底され、昇給で最大百五倍もの格差がついています。人事評価が下位10%となると、「ボトム10」と呼ばれ、リストラ対象となり、多くが退職に追い込まれています。
「『あなたは今日から日立やレノボの従業員です』といわれて納得できるでしょうか」。JMIU(全日本金属情報機器労組)の日本IBM支部の伊部祐二郎書記長は、怒りをあらわにします。
労働者が日立に“身売り”されて二年半後の今年六月、賃金や労働条件が日本IBMより低い日立の水準に引き下げられました。昇給は望めず、交通機関の事故による遅刻も賃金カットされます。
労働者たちは「IBM社員であると認めよ」とJMIUに加入し、横浜地裁に提訴。大津地裁では、会社解散による解雇は無効と訴えています。JMIU支部は、機関紙一万六千部を毎週、全国の職場に配り、粘り強くたたかっています。
全労連の熊谷金道議長らは「IBM闘争支援全国連絡会」の結成を呼びかけました。来年四月の「リストラの毒味役IBMを告発する4・21集会」に向け、運動を広げようと訴えています。呼びかけ人には坂本修・自由法曹団団長、牧野富夫・日本大学教授らが名を連ねています。
2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」
ワールドリポート
英議会の清掃派遣労働者がスト 言論の府から“貧困ノー”
最賃下回る正規雇用と格差
ロンドンを西から東に流れるテムズ川が市内中心部でわずかに北上する場所があります。川の西岸に隣接するのがウェストミンスター宮殿。建物の最も古い部分は1097年から存在する英国の国会議事堂です。この英国が誇る「言論の府」で低賃金で働く派遣労働者が「貧困をなくせ」とたたかっています。(ロンドン=岡崎衆史)
「貧困ラインを下回る賃金にノーと言おう」。今月九日、議会とそれに近いウェストミンスター駅周辺で、プラカードやビラをもった男女が通行人に訴えました。千を超える部屋数を誇る議事堂を清掃する派遣労働者と支援者です。賃上げと労働条件改善を議会当局に求める二度目のストの最中でした。国会議員、国会職員、会社員、観光客など行き交う人に、歌を織り込んで訴える声に力が入っていました。
■2つの会社と
この日のストには、約百四十人が参加。その一人、テス・ファレムさん(42)は訴えます。
「私はエリトリアから一九九〇年に英国に来ました。ロンドンはさまざまな文化、人種が混在していて大好きですが、生活はとても厳しい。週七十四ポンド(約一万五千円)の家賃に加えて、交通費、電話代、電気代などの公共料金、税金を払わなければなりません。私が働き始めた八年前から二倍、三倍になったものもあるのに、給料の額は低いままです」
大学に通う息子の授業料も払うファレムさんは、二つの派遣会社と契約し一日十六時間も働いています。
ファレムさんたち議会の清掃に従事する派遣労働者の給料は、ロンドン市が定める「最低生活賃金」の時給六・七〇ポンド(約千三百七十円)を下回る五・二〇ポンド(約千六十円)。最低生活賃金は物価が高いロンドンで貧困状態に陥らないために必要な時給です。病欠や年金の手当はなく、年八日の公休日を除く有給休暇は年十二日間。労働者は、時給六・七〇ポンドへの賃上げ、病欠と年金のための保障、有給休暇の年二十日間への延長を求めています。
議会に直接雇われて同じ仕事を行う正規雇用労働者の給与は、時給七・八九ポンド(約千六百十円)(一年後時給八・〇八ポンド=約千六百五十円に昇給)。有給休暇は年三十日、議会職員の年金制度が適用され、病欠の際は最長十二カ月の手当を受けられます。派遣労働者の要求は、合意を容易にするために控えめに設定されていました。
派遣労働者が加入する運輸一般労組(TGWU)は、まず派遣業者側と協議しましたが、派遣業者と契約する議会当局からの支払い増がなければ条件改善が難しいことが分かり、議会側に予算支出増を求めました。
しかし、議会当局は要求を拒否。これを受けて労働者側は七月、初めてストを実施しました。それでも議会側が折れなかったため、今回二度目の実施となりました。
■議員の連帯も
議会当局側が強硬姿勢を貫く一方、労働者への連帯を示す動きが広がりつつあります。
一度目のストの際は、労働党議員二十人が清掃労働者の抗議行動に参加。今回のストでも、労働党のケート・ヘイ議員が連帯を表明しました。同議員は、議員が求めてもいない通路の建築に四十万ポンド(約八千二百万円)支出しておきながら、まっとうな賃金さえ支払っていないと議会当局を批判。「首相府が(低賃金は)『受け入れられない』といえば問題は解決する」と述べ、問題解決で首相が役割を果たすよう求めました。
シャヒード・マリク議員(労働党)もTGWUの会報で、「議会を維持する人々を尊厳と尊敬をもって扱うことは私を含むすべての議員の責務である。清掃員を貧困から救うのに必要な額は議会のための予算の1%に満たない」と訴えました。
ファレムさんはいいます。「今英国は国内外の貧困問題を重視し、議会で議論をしています。もしも、本気で貧困問題を重視するのならば、まず足元の貧困をなくす必要があると思います」
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