2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

労安法改悪案を可決 参院委 長時間労働の規制後退
共産党以外賛成


■小池議員が反対討論
 労働安全衛生法と労働時間短縮促進法など四法案を一括した改悪法案が二十五日、参院厚生労働委員会で自民、公明、民主、社民各党の賛成で可決されました。日本共産党は反対しました。わずか一日、六時間の審議での採決です。
 日本共産党の小池晃参院議員は反対討論で、「過労死を予防するどころか拡大し、国際公約の時間短縮目標を放棄するもの」と批判しました。
 これに先立つ同委員会で小池氏は、長時間労働をさらにひどくする改悪案の問題点を指摘。労安法改悪案が、過重労働防止通達の「産業医への面接指導」の基準である「月の時間外労働が八十時間」を「月百時間を超え」、かつ「労働者本人からの申し出」があるものへと大幅に後退させることや、時短促進法を廃止して、「年間総実労働時間千八百時間」の時短目標を放棄し、閣議決定も廃止することを批判しました。
 小池氏は、長時間労働をはびこらせている労働基準法第三六条の「特別条項付き協定」問題についてとりあげました。
 労基法は三六条で、厚労相告示で示した範囲(年間三百六十時間)で労資協定を結ぶことを条件に時間外労働を認めています。ところが、「特別の事情」による「協定」を結べば年間三百六十時間を超え残業させることができる仕組みで、実際には恒常的に長時間残業が行われています。
 小池氏は、石川島播磨重工業が年間八百時間・月二百時間など、大企業の「協定」の例をあげ、「過労死認定基準をはるかに上回る残業時間を認めないことが過労死防止にとって大切ではないか」と政府に迫りました。青木豊労基局長は「調査する」と答え、尾辻秀久厚労相は「厳しく取り締まっていきたい」と答えました。


2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

参院委で可決 労安法等改悪案 過労死予防の大幅後退
労働行政の責任を放棄


 小泉内閣が提出した労働安全衛生法や労働時間短縮促進法などの改悪法案が二十五日、参院厚生労働委員会で日本共産党の反対、自民、公明、民主、社民党の賛成で可決されました。唯一反対した日本共産党の小池晃議員の追及で反労働者的な法案の内容が改めて浮き彫りになりました。


 労安法改悪案は、従来の厚労省の過重労働防止通達(二〇〇二年)より大きく後退しています。
 通達は企業に対して、一カ月平均の残業時間が月八十時間を超える労働者に産業医の面接指導を求めていたのに、法案では「百時間以上の残業」「本人の申し出」という二つの条件がない限り産業医の面接指導をしなくてもよくなりました。
 月百時間以上の残業をして倒れた場合、現行の過労死認定基準ではほとんど労災が認定されています。百時間は、いつ死んでも不思議ではない長時間残業です。
 小池氏が指摘するように、財界系のシンクタンク、社会経済生産性本部の調査でも残業が月六十時間以上になると、「自殺念慮が増える」と警告を発しているほどです。にもかかわらず月百時間を超えないと面接指導を義務付けないというのでは、「過労死してから相談に来い」ということになってしまいます。

■「申し出」が条件
 さらに問題なのは「本人の申し出」を条件にしていることです。労働者の競争を激化させる成果主義がはびこる企業社会では、労働者が簡単に申し出られるような状況にありません。申し出たくても申し出られないからこそ、過労死や過労自殺が続発しているのです。  小池氏が指摘するように、疲れているかどうかを労働者の自主的な判断に任せていては過重労働防止対策になりません。
 現行の過重労働防止通達は「月四十五時間を超える残業をさせた場合、産業医の助言指導を受ける」となっています。四十五時間を超えると業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるという医学的所見に立って出されているものです。本当に過労死を予防するというのなら、月四十五時間以上で産業医の面接指導を受けさせ、「本人の申し出」という条件は撤廃すべきです。
 一方、時短促進法改悪案は、欧米からの批判を受けて国際公約した「年間千八百時間」の時短目標を取り下げ、目標を掲げない法律に変更するもの。十九回も重ねた政府決定を廃止して、厚労相の指針に格下げし、「労使の自主的な努力」に委ねようとしています。
 労安法改悪で過労死予防を後退させ、そのうえ時短目標を投げ捨てるのは労働行政の責任放棄にほかなりません。
 小池氏は、「労使自治」の典型的なケースとして、長時間労働を生みだす元凶になっている三六協定の「特別条項」の実態を追及しました。

■特別条項の実態
 三六協定というのは、労働基準法三六条でうたわれた一日八時間、週四十時間労働の例外規定として設けられたもので、労資が協定を結べば時間外労働をさせることができます。特別条項付き協定を結べば、三六協定で定める時間外労働の限度時間、一カ月四十五時間、年間三百六十時間を超えて時間外労働をいくらでも上積みできる仕組みになっています。
 特別条項の適用は「一時的突発的に時間外労働を行わせる必要があるもの」に限定されています。しかし、実態は特別条項とは名ばかりで恒常的な長時間労働の口実に使われています。
 厚労省の調べでは、特別条項付き協定で年間一千時間以上の時間外労働の協定を結んでいる企業が0・4%あります。一流企業でも、過労死してもおかしくない年間八百時間、月百時間の協定はザラです。
 小池氏が指摘するように、過労死が起きても当然というような特別条項付き協定を認めている国や労働行政の責任は重大です。長時間労働が放置され、過労死がまん延する日本の企業社会でいま必要なのは、労働基準法を改正して時間外労働の上限規制に踏み切ることです。財界の都合のよい「労使自治」の方向ではなく、まして労働時間規制の撤廃や過労死予防を後退させることでは決してありません。(中村隆典)


2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

NTT賃金差別認定
最高裁 2人に1350万円支払い命令


 NTTが就業規則を一方的な変更により賃金で不利益を受けたとして、元NTT労働者二人が受け取れたはずの賃金との差額支払いを求めていた裁判で二十五日までに、最高裁(甲斐中辰夫裁判長)は会社側の上告を棄却。約千三百五十万円の支払いを命じた原告全面勝利の大阪高裁判決が確定しました。
 裁判は、NTTが一九九七年、「国際競争力の強化」を掲げ、五十五歳以上の副参事(課長級)をすべて「特別職群」に移行させ、賃金三割カットの制度を導入。大幅賃下げを受けた藤井雅夫さん(64)=京都市=が同年提訴、藤田宗孝さん=奈良県=も加わりました。二〇〇一年、京都地裁は原告敗訴の判決を出しましたが、〇四年五月、大阪高裁で「就業規則の変更は必要性が十分検討されたとはいえないうえ、不利益も著しい。適用する合理性はなく無効」とNTTを断罪しました。
 同日、藤井さんが京都市内で記者会見。「うれしい。当たり前のことを当たり前のこととして裁判所が認めてくれたことに感謝します」と表明。退職強要に応じなかったことで会社から受けた嫌がらせや、通信労組(全労連加盟)が支援してくれたことを語りました。
 中村和雄弁護士は「賃下げの不利益を被ったのは五百人を下らないと考えられ、全員が救済されなければならない」と指摘。「NTTリストラは間違いだと最高裁が認めた。これを機に五十一歳以上の六万人の配転を強行してきたNTTは十分に反省を」と判決確定の意義を強調しました。


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