2005年10月24日(月)「しんぶん赤旗」

法人減税の継続・一層の規制緩和… 経団連が要望攻勢
自民幹部「選挙後、ものに取り付かれたよう」


 日本経団連(奥田碩会長)が、政策要望をかかげて永田町へ大攻勢をかけています。総選挙で財界が全面バックアップした小泉自民党が大勝した有利な情勢が続く間に、要求実現をはかろうという狙いがあけすけです。
 永田町の衆参国会議員事務所に日本経団連から届く書類封筒がこのところ目立っています。
 ―「公的年金の一元化に関する基本的見解」
 ―「提言『次期ICT国家戦略の策定に向けて』」
 ―「地球温暖化防止に向けた新たな国際枠組の構築を求める―究極目的の達成に向けた産業界の基本的考え方―」
 ―「2006年度の医療制度改革に向けた日本経団連のスタンス」
 ―「労働契約法制に対する使用者側の基本的考え方」
 ―「平成18年度税制改正に関する提言」
 ―「住宅・土地税制改正への提言」
 ―「改めて環境税に反対する」
 最近一カ月間に日本経団連が政界へ向け発信した主だった政策要望です。三日に一度は提言、意見書、要望書をだしている勘定です。
 「総選挙後、経済界はものに取りつかれたように次々注文を突き付けてきています。来年九月に退陣する小泉さんが首相在任中に取れるものはすべてとっておこうという感じです」。自民党政策担当幹部も当惑気味です。

■「改革の断行を」
 日本経団連の政策要望の柱の一つは、研究開発・IT投資促進のための法人税減税などの継続・延長といった財界・大企業の“既得権益”を死守することです。他方、いっそうの規制緩和策や環境税の創設を拒むことで企業活動の自由裁量権の拡大を求めています。「構造改革をスピード感をもって実施してほしい」(総選挙結果をうけた九月十二日の奥田碩会長コメント)のことば通りに政府・与党へ、その実行を迫っているというわけです。
 一連の動きは十月下旬から政府・与党内で始まる来年度税制改正論議や引き続く来年度予算編成をにらんだ動きですが、そこにとどまらない思惑があります。
 十三日午後、東京・大手町の経団連会館での「二〇〇五年政策評価に関する説明会」―。
 業界団体、企業からの出席者、約三百人を前に日本経団連の宮原賢次・政治担当副会長が立ちました。
 「国際競争に打ち勝つには旧来の諸制度や諸法制の改革を断行して、企業が自由に活動できる環境を作ることが必要だ。抜本的改革を実現するのは、政治の役割だ」
 さらに「われわれ(日本経団連)が呼びかけている政治寄付は、政治の活性化を通じてよりよい企業環境を築くためのものであり、企業の社会的責任の一環としての社会貢献であり、企業に働くみなさんの利益にもつながる」。企業の政治献金の正当性を強調しました。
 会合では「今回の総選挙で自民党は大幅に議席を増やした。これを背景として、郵政以外の分野でも改革の断行が強く期待される」と鼻息の荒い発言が続きました。

■“政策買収”弾み
 日本経団連は業界団体、企業が政治献金を出す目安を示す意味で昨年から自民党、民主党の政策にたいする評価を実施しています。今年の政策評価(十二日公表)は「政策面においては経団連の優先政策事項の方向が一致している」ということから、民主党に比べて自民党により高い評価を与えました。
 日本経団連を中心とする財界・大企業側の動きには、政治献金をテコに思い通りの政策を小泉・自公政権に実行させようという衝動を強めている様子が読み取れます。企業政治献金(ワイロ)による“政策買収”政治に弾み――。総選挙結果がもたらした国民にとっての不幸がまた一つ目に見える形で現れてきました。


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