2005年10月21日(金)「しんぶん赤旗」

労安法改悪案 衆院で可決 民主・社民賛成に失望
“過労死根絶に逆行”と遺族


 政府が提出した労働安全衛生法や労働時間短縮促進法などの改悪法案が十八日、衆院本会議で日本共産党以外の各党の賛成で可決され、参議院に送られました。民主党はおろか社民党までが賛成し、改悪反対に取り組んできた関係者に大きな失望を与えています。

 「こんな深刻な法案が共産党の反対だけで可決されるなんて、本当に悲しい」。息子を過労死で亡くした女性Kさんもその一人です。
 「解散前、二度、国会の傍聴に行きました。民主、社民両党の議員さんもそのときは良い質問をされていて、期待を寄せていました。感動して、思わず拍手し、衛視からにらまれたほどです。総選挙後の両党の変わりようはショックです」
 Kさんたち「全国過労死を考える家族の会」は、労働安全衛生法の改悪案が従来の厚労省通達より大きく後退していることを疑問視し、衆参両院の厚生労働委員会七十人に見直しを求めて要請していました。厚労相にも直訴していました。
 とくに問題にしたのは、厚労省通達では一カ月平均の残業時間が八十時間を超える労働者に産業医の面接指導を求めていたのに、「百時間超の残業」「本人の申し出」がない限り産業医の面接指導をしなくてもよいとしている点でした。
 「システムエンジニアだった息子は、トラブルが発生すれば真夜中でも出社し、朝まで修理する仕事が続きました。疲れたと会社に申し出られるぐらいなら、過労死はしません。しかも百時間を超える残業を条件にするなんて実におかしい」とKさんはいいます。
 民主、社民両党は、「家族の会」の訴えに解散前は一定の理解を示していました。ところが法案が再提出された総選挙後の特別国会では、法案に対する態度が一変し、ほとんど抵抗もなく、すんなりと賛成に回りました。
 一方、時短促進法改悪案は、欧米からの批判を受けて国際公約した「年間千八百時間」の労働時間短縮の目標を取り下げ、目標を掲げない法律に変更するものです。労働時間の規制をはずし、長時間労働の野放しと過労死の増加が懸念されるこの改悪法案にも、両党は賛成しました。
 先の総選挙で民主党はマニフェストで「長時間労働の解消」を掲げ、社民党も選挙公約で「働く者の家族的責任を大事にし、長時間労働を規制する。過労死はごめんです」と訴えました。
 労安法と時短促進法の改悪案が両党の選挙公約と一致しないのは明らかです。労働者の権利擁護を口にする一方で、労働者の命を脅かす法案に賛成するようでは、公党としての無責任さが問われても仕方がありません。
 「家族の会」代表世話人の新田笑子さん(61)はいいます。「会では毎年のように厚労省と交渉を重ね、過労死をなくす方向で努力してほしいと要請してきました。それを逆なでするような法案を提出し、共産党以外の野党がさっさと賛成する事態に、やりきれない思いがします。働く者の命がかかっている法案です。真剣に審議してほしいと切に願います」


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