2005年10月14日(金)「しんぶん赤旗」
主張
労働安全衛生法改悪案
どうするの健康守る責任
小泉内閣は、労働安全衛生法と労働時間短縮促進法など四本の法律の「改正」案を一括した「労働安全衛生法等改正案」を、国会に再提出しています。
労働者の命と健康を守る企業の責任を後退させる重大な内容を盛り込んでいるにもかかわらず、小泉内閣と自民党、公明党は、本格的審議が始まる十四日にも衆院厚生労働委員会での採決をねらっています。
■過労死予防行政が後退
労働安全衛生法の「改正」案は、過重労働による健康障害の防止策として、長時間残業する人への「医師による面接指導」を事業主に義務づけました。しかし、省令で、残業が月百時間を超え、疲労の蓄積が認められ、本人の申し出があった労働者に対象を限ることにしています。これは過労死予防の行政の後退です。
厚生労働省は、過重労働防止の通達(二〇〇二年二月)で、残業が月四十五時間を超える場合は医師の助言指導を、二―六カ月間で月平均八十時間を超える場合は医師の面接指導を労働者に受けさせることを、事業主に義務づけています。
労働者本人の「申し出」を条件とする法「改正」は、労働安全衛生法で明記された「労働者の安全と健康を確保」すべき「事業主の責務」を有名無実とするものです。
小泉内閣は、労働時間を年千八百時間に短縮する目標を掲げた時短促進法も廃止し、短縮促進を掲げない「労働時間設定改善法」に変更し、長時間労働是正の国の責任も後退させようとしています。
「年間千八百時間」の労働時間短縮目標は、日本の長時間労働にたいする欧米からの批判を受けて、一九八八年以来、閣議決定で掲げられてきました。これまでに十九回も閣議決定を重ねてきましたが、目標は達成されていません。
それどころか、非正規労働者が増える一方で、正社員は長時間残業を強いられています。日本共産党の笠井あきら衆院議員の質問に、尾辻厚生労働相も、正社員の総労働時間が、二〇〇一年度の千九百九十時間から、〇四年度二千十五時間に延びていることを認めました。
サービス残業を含まない調査でも、労働時間が年間平均で二十五時間も長くなっています。時短促進法は一九九二年に制定された時限立法で過去二回延長されました。時短促進法を廃止する理由はありません。
政府は、少子化対策でも長時間労働の是正を重視しているのに、どうして、過労死予防の行政を後退させ、時短促進法を廃止するのでしょうか。
■財界の要求で規制緩和
それは、利益をあげるために労働者の健康も家庭生活も顧みない財界の要求に最優先でこたえているからです。
財界は、「交渉」で「義務付けの対象」が「努力義務となった」「本人の申し出」となった(日本経団連タイムス一月十三日付)、「時短促進法は実質廃止へ 東商の積極的働きかけが奏功」(東京商工会議所の東商ニュースライン二月八日付)とのべています。
日本経団連は、年収四百万円以上のホワイトカラーについて、労働基準法の労働時間規制を外すことまで主張しています。
年千八百時間の労働時間というのは、週二日と祝日を休み、年休をきちんと取り、一日八時間働いた場合です。過労死を予防し、家庭と仕事の両立を可能にします。これに逆行する労働安全衛生法等の改悪に反対していきましょう。
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