2005年10月5日(水)「しんぶん赤旗」

シリーズ 労働契約法制 長時間労働思いのまま
ホワイトカラーを規制除外


 使用者は、労働者が何時から何時まで働いたかを責任をもって把握する義務があります。もし、この責任が免除され、労働時間管理をしなくてもよい法律ができたら―。
 労働者を早朝から深夜まで働かせ、休日出勤させても、ペナルティーは一切なし。何時間働いたかもわからないので、残業代もなし。こんなうまい話はありません。
 労働契約法制研究会の報告は、労働時間法制の見直しを強調しますが、まさに、このような方向をめざしています。
 労働時間について定めている法律は、労働基準法です。一日八時間、週四十時間を超えて働かせてはならないと決めています。それを超えて働かせる場合は、割増賃金の支払いや、さまざまな制約があります。
 大企業は、法律違反を承知でサービス残業(ただ働き)を押しつけています。一社で数十億円の不払いはざらです。
 労働者の告発と日本共産党の追及で、サービス残業の摘発と是正がすすみました。労働者に支払われた残業代は六百五億円にのぼり、使用者の労働時間管理の責任を明確にした厚生労働省の通達も出させました。

■法律が悪いから
 財界・大企業はこれが気に入らず、日本経団連の二〇〇五年版「経営労働政策委員会報告」で、労働時間をめぐる労働監督行政の強化は「国際競争力を阻害しかねない」とかみつき、労基法を「工場法時代の遺制」と決めつけ、抜本的な「改革」を求めています。企業が法を犯すのは法律が悪いからだ、だから法律を変えろというのです。
 財界がとくに執念を燃やすのが、ホワイトカラー労働者を労働時間規制の対象から除外するホワイトカラー・エグゼンプション制度です。
 その骨子は、年収四百万円以上で、労使が合意した職種の労働者すべてが対象としています。
 参考にしたアメリカの制度では、対象労働者は職務で決められ、管理的な仕事につき、権限ももっているかどうかが、法令上の要件となっています。これでは対象が限定されるので、経団連が行った提言では、職務を職種にすりかえ、法律によらずに労使合意で決められるようにしています。

■財界提言に追随
 報告は、このような違いを承知の上で次のようにいいます。「労働時間法制の見直しを行うとすれば、労使当事者が業務内容や労働時間を含めた労働契約の内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにする必要があり、これを担保する労働契約法制を定めることが不可欠となる」
 職種を業務といい換えただけで、経団連の提言をそっくり受け入れたものです。

 研究会報告への批判はこの項で終わります。


2005年10月5日(水)「しんぶん赤旗」

労働契約法制を議論
来年7月中間答申へ労政審


 厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会労働条件分科会(分科会長・西村健一郎京都大学大学院教授)で四日、今後の労働契約法制のあり方についての審議が始まりました。
 事務局の厚労省側から「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会」報告を説明。来年七月ごろに中間答申し、その後、法案提出に向けて議論すると提案しました。
 分科会では、労働者側委員から報告への疑問、質問が続出。研究会報告が労働条件の変更で大きな効力を与えようとしている常設の労使委員会について、「そもそも労使委員会は誰が設置するものなのか」「労働者側委員の選出で、使用者側の介入を防ぎ、どう選出の公正を担保するのか。研究会で論議されたのか」との意見がありました。
 「解雇の金銭解決」「雇用継続型契約変更制度」「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」の導入が検討されている問題でも質問や疑問が相次ぎました。


2005年10月5日(水)「しんぶん赤旗」

経財会議 医療費抑制を提案
民間議員 入院食や居住費自己負担


 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は四日、医療費制度「改革」について議論しました。奥田碩トヨタ自動車会長(日本経団連会長)ら四人の民間議員が、医療費総額の伸びを経済成長率に連動させて抑制する総額管理方式の導入を改めて提案しました。
 経済成長率に連動させた総額管理方式とは、高齢化の進展にともなって自然に増える医療費を、日本経済の伸びにあわせて抑え込もうとするもので、景気が悪くなれば病院に行くのを我慢せよという考え方です。医療制度改悪による国民負担増を伴います。
 民間議員の試算では、名目国内総生産(GDP)の伸び率に高齢化比率の上昇を加味した指標を用いて管理した場合、現状のままでは、二〇二五年度には対GDP比8・2%(〇四年度5・2%)に達する医療給付費を同5・6%に抑えられるとしています。
 提案では、その具体策として、医療機関に支払われる診療報酬本体の「大幅なマイナス改定」を提起。保険給付範囲の「見直し」として、介護保険と同様に入院時の食費・居住費の全額自己負担化や高齢者の自己負担増の方向も盛り込みました。
 民間議員は、これらを厚生労働省が十月半ばに公表する医療制度「改革」試案に、明記するよう求めました。
 同日の会合では、総額管理の導入をめぐって、尾辻秀久厚労相が改めて反対姿勢を示し、医療制度「改革」を通じた政策目標の達成を積み上げる方式での医療費抑制を主張しました。


2005年10月5日(水)「しんぶん赤旗」

ヨドバシなどに賠償命令 派遣労働者への暴行認定
東京地裁


 ヨドバシカメラ携帯電話売り場に派遣され、「笑顔が足りない」などと暴行された青年労働者Aさん(28)と母親で作家の下田治美さん(58)が、ヨドバシカメラと派遣会社などに損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(加藤謙一裁判長)は四日、ヨドバシ社員とヨドバシ、派遣会社社員と派遣会社に計約五百六十万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
 Aさんは、二〇〇二年十月から、〇三年三月まで東京・渋谷の派遣会社に所属。派遣会社―DDIポケット(現ウィルコム)―ヨドバシという違法な二重派遣構造のもとで働き、派遣会社の社員やヨドバシ社員から四回にわたって暴行を受けました。
 判決は、暴行の事実をほぼ原告の主張どおりに認定し、ヨドバシ社員の暴行について本人(ヨドバシ社員)とヨドバシに十万円の損害賠償を命令。また、派遣会社社員と派遣会社にあわせて約百五十万円の損害賠償を命じました。
 また、Aさんだけでなく、息子がろっ骨を折るほどの暴行を眼前で見せつけられた、下田さんの精神的被害も認定。執筆活動が続けられなくなったことなどに対し、派遣会社社員と派遣会社に約四百万円の支払いを命じました。
 しかし、派遣会社社員の暴行についてはヨドバシ、DDIの使用者責任を認めませんでした。原告らは派遣先の使用者責任を追及してきました。
 Aさんは記者会見で暴行の事実や下田さんに対する賠償も認められたことについて喜ぶとともに、派遣先の使用者責任が認められなかったことは「納得いかない」とのべました。大山勇一弁護士は、「ヨドバシは自らの責任のがれのために二重派遣という仕組みを自覚的に利用していた」と強調しました。
 この問題は日本共産党国会議員が国会で取り上げ、本紙も報道してきました。


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