2005年9月30日(金)「しんぶん赤旗」

シリーズ 労働契約法制 解雇の金銭解決制度
職場復帰への道閉ざす


 「外資系企業 配転拒んだ女性十二年ぶりに職場復帰」(三月一日)、「“園長先生お帰り” 不当解雇の保育園復帰」(三月二日)、「“内部告発で解雇だめ” 清掃労働者三人が職場復帰」(三月十九日)、「二度の解雇はねのけ職場復帰 九州日誠電気の労働者」(五月十六日)―。今年前半のニュースでも、多くの労働者が解雇とたたかって職場に復帰しています。ところが、この職場復帰の道が閉ざされようとしています。
 厚労省の労働契約法制研究会が報告に盛り込んだ「解雇の金銭解決制度」。労働者が裁判で「解雇無効」判決をかちとっても、使用者が申し立て、金銭を支払えば解雇できるというものです。支払う金額を事前に決めておくことも提案しており、コストをあらかじめ計算できるので、いっそう解雇しやすくなります。

■「無効」判決でも
 報告では「解雇は無効であっても、現実には労働者が原職に復帰できる状況にはないケースもかなりあることから、使用者側の(金銭解決の)申立てにも一定の意味がある」としています。
 自由法曹団は、同研究会に提出した意見書で、「解雇が違法とされた場合の労働者の復帰プロセスこそ検討されるべきである」と批判。日本労働弁護団は、「労働契約法制立法提言」で労働者の「就労請求権」を明確にして、使用者が正当な理由なく就労させない場合の損害賠償や、労働者の申し立てにより裁判所が使用者に対して就労命令を出せるようにすることを提言しています。
 これに対し、報告は、就労請求権の具体的内容とこれによって生ずる法律効果を明確にすることは困難だといって、突っ込んだ検討もせずに否定しました。
 労働は、生活のためであると同時に、労働者が自らの能力やキャリアを磨き、自己実現を図るために不可欠なものです。“金さえ払えば首切り自由”という同制度は、労働者の人権を無視し、部品やもののように扱う時代遅れの考え方です。

■一度は見送られ
 この制度は、二〇〇三年の労働基準法「改定」の時にも導入がたくらまれ、労働者や法律家、日本共産党の強い反対で法案化が見送られました。逆に、解雇権の乱用についての規定が労基法に盛り込まれました。
 新しい労働契約法をつくる動きに乗じて、またもこの制度を持ち出してきました。このような企てを許さず、「もう一度葬り去ろう」という声が高まっています。


2005年9月30日(金)「しんぶん赤旗」

経団連役員企業の献金
政策買収で47%増


 自民・民主の二大政党制をめざして企業献金を再開した日本経団連が、役員企業の献金総額(子会社含む)を自民、民主両党で総計約五億八百万円と前年より47%も増やしたことが三十日付公表される政治資金収支報告書でわかりました。企業・団体献金全体の総額(百九十八億一千四百万円)が前年比で12・6%減る中、「政策をカネで買う」体制の強化をめざす財界大企業の姿勢が浮きぼりになっています。
 経団連関係者によると、献金した会員企業・団体数は前年より最低、百社程度増加。政党の政治資金団体に献金した額も前年より約四億円増え、二十二億六千万円程度になる、といいます。
 自民党の政治資金団体・国民政治協会へは役員企業二十五社のうち公的資金導入の銀行などを除く二十一社が献金。計五億円です。
 他方、民主党の政治資金団体・国民改革協議会へは七百九十七万円。同会への企業・団体献金収入(六千五百九十九万円)は前年から29・2%増加。その三割強は、経団連役員企業とその子会社によるものでした。
 経団連は二〇〇四年から、自民、民主両党の政策を評価、献金額の目安を示す事実上の「献金あっせん」を再開し、会員企業に献金呼びかけを続けてきました。宮原賢次副会長(住友商事会長)は〇四年七月、東北地方での懇談会で「構造改革を推進するため」として献金への協力を要求(『日本経団連タイムス』)。郵政民営化や、独占禁止法強化反対などの政策実現をせまってきました。奥田碩会長は、献金を「重要な社会貢献」とし、多くの会員の「積極的」対応で「寄付の減少傾向に歯止めがかかり、増加に転じた」と自己評価するコメントを発表しました。


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