2005年6月27日(月)「しんぶん赤旗」

年収400万円超えたら残業代なし!? 経団連 ホワイトカラー労働者の「提言」
世界に例ない 労働時間規制の適用除外


 日本経団連(奥田碩会長)は二十一日、「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表しました。「一定の限られた労働者以外については原則として労働時間規制の適用除外とする制度を導入すべきである」とした二〇〇五年版「経営労働政策委員会報告」を、その通りに具体化したものとなっています。
 三月に閣議決定された「規制改革・民間開放三カ年計画」は「米国のホワイトカラーエグゼンプション制度を参考にしつつ、…労働時間規制の適用を除外することを検討する」としました。
 現在、厚生労働省の研究会が年内に取りまとめを出す予定で、急ピッチですすめられています。同省の委託を受けた労働政策・研修機構(JILPT)のアメリカの制度についての調査報告書も発表されています。

■名前だけ参考に
 ところが今回の日本経団連「提言」が示したのは、参考にしたのは名前だけといえるほどの世界でも例のない制度です。
 アメリカの制度は、適用除外となる労働者について、賃金と職務の二つの要件を法律で定めています。例えば「管理職エグゼンプト」の職務要件は、(1)主たる職務が臨時的でない職場の管理(2)他の二人以上の被用者の労働を指揮監督(3)他の被用者の採用・解雇の権限―となっています。
 この要件では、すべてのホワイトカラー労働者を適用除外にしたい経団連には不都合です。そこで「提言」は、職務を業務とすりかえ、「労働者の地位、権限、責任、部下人数等とは無関係に、労働時間規制の適用除外が認められる」と、わざわざ明記しています。
 対象となるのは、(1)現行の専門業務型裁量労働制の対象業務(新商品等の研究開発、情報処理システムの分析設計など十九業務)(2)法令で定めた業務(3)労使協定または労使委員会の決議により定めた業務―の三つです。
 「提言」が、「原則」だとまでいっているのが(3)の規定です。この仕組みを使えば、好き勝手にあらゆる業務を対象にできるからです。

■使い捨ての危険
 「提言」は、賃金要件として、年収額が四百万円(または全労働者の平均給与所得)以上を例示します。これは“年収が四百万円になったら、残業代は一円ももらえず、際限なく働かされることを覚悟しなさい”というのと同じです。
 専門業務型裁量制の対象業務の場合は、賃金要件もなく、「四百万円」に満たない低賃金の若い労働者が使い捨てにされる危険があります。
 「提言」は、「労働者の健康への配慮措置」を示しています。しかし、「労働者自らの働き過ぎによる健康障害を防止する」と、責任が労働者にあるかのようにのべ、とるべき措置も企業の自主性にまかせています。
 ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入は「時間外労働に対する賃金の支払いをまぬがれたり、労働時間を実質的に長くすることを目的とするものではない」といいわけもしています。
 ヨーロッパ諸国では、一定の時間を超えた労働は、労働者の健康や福祉を害するので、労働時間そのものを規制するという考えに立ち、適用除外には厳しい態度をとっています。これが世界の流れであり、日本経団連の「提言」は、あからさまな逆行です。


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