2005年5月23日(月)「しんぶん赤旗」
水先人業界団体が自民議員献金 “法改正に効果”
亀井善元運輸相・泉元国交副大臣へ
大型船の運航を誘導する水先人(パイロット)の業界団体が、見直し準備の進んでいる水先法を業界に有利な内容にするために自民党国会議員への献金を会員に呼びかけ、「個人献金」のかたちで多額の献金を行っていたことが、二十二日までに内部文書などで明らかになりました。会員からも「『法案買収』のために個人献金を強制するのはおかしい」との批判があがっています。
個人献金の形で
献金を呼びかけたのは、水先人の全国組織である日本パイロット協会(荒銀昌治会長)。同協会が作成した二〇〇四年度の「政治献金に関する…実施方針」は、水先人を船主が指名制にするなど、水先人の立場を弱める動きがあると指摘。「水先法制定以来の大改正に向けて事態は大きく動き始めた」とのべています。
〇五年度中に水先法改正案が国会で審議され、〇六年一月に成立目途だと日程も詳細に明記。水先行政の所管官庁である国土交通省が、「水先法改正はまだ発表されていない。なぜそんなに詳しく知っているのか」(担当専門官)と驚くほどです。
同協会は会員に対して、献金の意義や有効性を強調。「衆・参国土交通委員会での審議等において有力議員からの積極的サポートを得られるかどうか、対抗的立場にある議員の反対行動をいかに抑制できるかによって新制度の内容が大きく影響を受ける」、「大事な時期であるので正会員全員の協力を改めてお願いしたい」などと訴えています。
同文書は、「献金の効果」を説明する項目を設け、「献金は非常に効果がある……水先人と水先問題を親密感をもって受け止めてもらえるようになることが大きい」「献金を繰り返すことにより、議員との仲介役となる秘書の対応が極めて好意的になった」などとのべています。
献金先としてあげられているのは、運輸、農水両大臣を歴任した亀井善之自民党衆院議員と運輸官僚出身で元国土交通副大臣の泉信也同党参院議員の二人。水先行政は、両議員がかかわりの深い国土交通省の所管です。
同協会の黒田不二夫専務理事は、本紙に二議員への献金を認め、二〇〇三、〇四年に年間百五十万円ずつ計三百万円を亀井、泉両議員にそれぞれ渡したと説明。今年も同様の献金を予定しているといいます。
献金は、一会員一万円の「個人献金」を百五十人分したかたち。政治資金規正法では、年間五万円以下の個人献金は報告が義務付けられていないため、両議員の政治資金収支報告書には、氏名記載は不要となります。
同協会は〇三、〇五年にも同様の政治献金実施のための文書を作成。〇五年の文書には、「献金を予定する議員」として亀井、泉両議員だけでなく「水先法改正にあたり影響力を有する他の議員」も検討中としていました。
黒田専務理事は、「献金はしたが、(法改正が有利になる)働きかけは依頼していない」と話しています。亀井、泉両議員側も献金を受けた事実を認めていますが、「額の詳細はわからない。一般的な個人献金」(亀井議員秘書)、「額は不明。働きかけはしていない」(泉議員秘書)としています。
「献金の効果」などを強調した日本パイロット協会の文書
水先人 船舶交通の安全、能率化を図るため、交通の要衝である港や水域で、国の免状を受けた水先人(パイロット)が当該の船舶に乗り込み、船長の助言者という立場で誘導します。水先人は、全国三十九ある水先人会に所属。会員数は約六百七十人です。水先法で、交通の難所とされる港や水域を航行する一定以上の大きさの船舶は、水先人を乗り込ませることが義務付けられています。
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