2005年4月9日(土)「しんぶん赤旗」

法人税 払わない仕組み
財界 米にならえと要求


 「法人税のかからない会社をつくりたい」――
 こんな財界の要望を背景に、アメリカをまねた事業組織の新設が国会に提案されています。
 ひとつは、新会社法で有限会社の廃止とあわせて設置が審議される合同会社(日本版LLC)。もうひとつは、経済産業省が提案した有限事業責任組合(日本版LLP)です。
 経済団体連合会(現・日本経済団体連合会)が一九九九年の提言で、LLC、LLPのような組織を要望しました。
構成員に課税
 そこでは、出資以上の責任を問われない有限責任、事業体には課税せず構成員に課税する(パススルー)、法人の損益を出資者の損益と通算できる―ことを求めています。
 これは、「所得税に加えて法人税も払うのは税の二重取り」などという従来からの財界の主張にそったものです。
 アメリカでは、税軽減措置によって、一九九〇年代にLLCの設立がすすみました。その利点は(1)出資以上の責任が求められない有限責任(2)経営方針・資産処分を株主総会にかける必要がなく、内部だけで決められる(3)法人税課税と構成員への課税を選べる―といったこと。アメリカでは投資ファンドや事業再編(リストラ)に利用されています。旧日本長期信用銀行(現・新生銀行)を買収した投資会社リップルウッドはLLCです。
 現在、国会に提案されている新会社法案では、合同会社は法人格をもつものとなっています。現行の税制を前提にすれば法人課税はされることになります。法人格があるにもかかわらず法人税課税を適用させないという動きもあります。
問題点を指摘
 そこで、はじめから法人格をもたず、法人税を課税しないものとして経済産業省から提案されたのが有限責任事業組合法です。二〇〇六年施行予定の会社法よりも、半年、施行を先行させる方針です。
 日本共産党の塩川鉄也衆院議員は、日本版LLPを性急に導入することはあまりに問題が大きいとして、次のような問題点をあげています。
 (1)米国では、LLCが「IT(情報技術)バブル」の時期に急増し、エンロンやワールドコムなどの企業不祥事が続発した(2)顧客、取引先、消費者への責任が出資の範囲に限定されることで、債務を不当に免れる危険が大きい(3)企業グループとして大企業の法人税軽減、大資産家、投資家の税軽減に使われる―
 (吉川方人)

有限責任事業組合(日本版LLP)、合同会社(日本版LLC)の比較
株式会社 有限責任事業組合(日本版LLP) 合同会社(日本版LLC)
(1)有限責任制 ○(有限責任) ○(有限責任) ○(有限責任)
(2)内部自治原則 ×(損益・権限配分は出資額に比例)(経営者に対する監視機関設置必要) ○(損益・権限配分は自由)(経営者に対する監視機関設置不要) ○(損益・権限配分は自由)(経営者に対する監視機関設置不要)
(3)構成員課税 ×(法人課税) ○(構成員課税) ×(現行の税制を前提にすれば法人課税)
(4)法人格の有無 ×
注)○=有り、×=無し
 LLC limited liability company の略。有限責任会社という意味です。出資者は株式会社と同様に出資以上の責任はありませんが、外部からの監視機関設置義務がありません。
 LLP limited liability partnership の略。主にイギリスで発展しました。日本ではこれまでの民法組合を基礎にして、有限責任事業組合と称しています。民法組合では構成員に出資以上の責任があるのにたいし、出資以上の責任はありません。


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