2005年3月29日(火)「しんぶん赤旗」

財界言いなり
政府の規制緩和計画


 政府が二十五日閣議決定した「規制改革・民間開放推進三カ年計画」の改定は、雇用・労働分野の大幅な規制緩和を求めています。「二〇〇五年度中に検討」と期限を切っており、この一年間に具体的検討がすすめられることになります。いずれも財界が強く要求していたものです。(畠山かほる)

長時間・ただ働き 野放し
 特徴の一つは、企業犯罪であるサービス残業(不払い残業)を合法化し、長時間労働を野放しにする内容です。
 その一つに、裁量労働制の拡大をあげています。対象業務の範囲を「労使自治」に委ねる方向で見直すこと、労働者の個別同意が必要な企画型裁量労働制を労使協定で一括導入できるよう主張しています。
 裁量労働制は、事前にきめた労働時間を「働いた時間」とみなす制度です。みなし時間が八時間なら、実際に十時間働いても残業代は支払われません。通常なら犯罪行為(不払い残業)となることを法が例外的に認めるので、その対象は限定的です。法は、仕事の進め方など大幅な裁量権が労働者にあることを前提に、対象業務や導入手続きを厳密に規定しています。
 計画は、法の厳密な規定をやめ、労使が「自由」にきめるというものです。現状は労働組合組織率が二割を切り、大企業労組の多くが企業言いなりとなっています。「労使自治」が企業主導となることは明らかです。
 さらに計画は、「それだけでは十分でない」として、米国型ホワイトカラー・イグゼンプション(事務・技術労働者の労働時間規制適用除外)制度の導入を要求しています。残業だけでなく深夜業、休日労働などすべての労働時間規制を外す制度です。対象は、現行裁量労働制の対象業務を含め、事務・技術系労働者で「裁量性の高いもの」としています。
 いくら働かせても残業代などは不要で、企業の労働時間管理の責任は労働者の自己管理となります。長時間労働の歯止めがない状態がつくられます。
 年間三千時間を超えて働いている人は六人に一人。過労死認定は年間百五十件を超えています。同制度が導入されれば、より悪化することは疑いようがありません。

事前面接解禁し派遣拡大
 特徴のもう一つは、派遣労働を拡大する内容です。計画は、事前面接を解禁し、雇用契約の申し込み義務をなくすことを主張しています。
 派遣会社が雇用する労働者を企業に貸し出す労働者派遣は、使用者(企業)が雇用責任を負わずにすむ制度です。雇用関係があいまいになると労働者が不利益を被りやすいため、戦後労働法は厳しく禁止してきました。労働者派遣はこれを例外的に認めた制度で、導入は臨時的・一時的な場合に限られ、詳細な制限があります。
 派遣先企業による事前面接は採用行為となるので、原則禁止されています。労働者供給事業として職業安定法の処罰対象です。合法化は、労働者の無権利状態を一般化することになります。
 派遣期間の制限を超えた労働者に直接雇用の申し込みをするという法のルールをなくせとの主張も同様です。不安定な派遣という働き方を一生続けさせると宣言するものにほかなりません。
 派遣労働をめぐるトラブルは多く、契約を一方的に打ち切るなど、多くが派遣先企業の横暴によるものです。規制強化こそ、求められています。
 このほか、求職者から手数料をとる有料職業紹介事業の大幅拡大、職業紹介事業の民間活用強化、違法解雇でも労働者を職場から追い出せる「金銭賠償方式」の導入を打ち出しています。


◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい

『スパーク』へ意見・コメントを送る