2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

労働審判 1カ月で解決 解雇女性、職場に復帰
名古屋地裁 4月の制度開始後初


 四月一日からスタートした労働審判制度が早くも威力を発揮しています。名古屋市の女性が解雇されたのは不当だとして申し立てた事件で、名古屋地裁の労働審判委員会で九日までにわずか一カ月余で和解が成立、職場復帰することになりました。
 申し立てていたのは、荷造り発送会社・大兼組作業梱包(こんぽう)(名古屋市熱田区)に勤務していた立松恵美子さん(50)=名古屋市中川区=で、今年三月一日、「上司の指示に従わなかった」などとして、一方的に解雇されました。
 立松さんは、解雇は不当だとして四月三日に同地裁の労働審判委員会に救済を申し立てていました。成立した調停では、(1)解雇の撤回(2)会社側の遺憾の意の表明(3)未払い賃金の全額支払い―などを内容としています。立松さんは十六日から職場復帰します。
 名古屋地裁によると、今年四月からスタートした労働審判制度の申し立ては同地裁では八日現在、この件を含め七件ありますが、調停が成立し事件が終了したのは今回が初めてといいます。不当解雇事件は、労働者側が裁判に訴えても、解決まで何年もかかるケースが多く、全労連や連合などが、迅速な解決を求めて労働審判制度がスタートしました。
 事件を担当した竹内平弁護士は、「われわれの要求以上の解決になり、迅速かつ実態にあった解決をするという労働審判制度の趣旨に見合ったふさわしい解決になった」と話しました。

 労働審判制度 解雇、賃金・退職金未払いなど労働者個人と事業者の争いを迅速に解決することを目的とした制度。申し立てをうけた地方裁判所は、裁判官と労働審判員(労働、使用者側の双方から任命)の三人による労働審判委員会を構成。同委員会が話し合いによる解決(調停)を試み、解決に至らない場合は、判決と同じ拘束力がある審判をおこないます。


2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

新人研修担当看護師は多忙
十分指導できず8割


 病院の新人看護師研修で、指導担当看護師の約八割が業務の多忙などを理由に十分な指導ができていない――。東京医療関連労働組合協議会が九日発表したアンケート結果で、こんな実情が浮かび上がりました。同協議会の相澤幸敏事務局長は「新人研修の人員を病院が確保できるように、国は経済的な保障をすべきだ」と話しました。

 アンケートは、新人看護師の約一割が就職後、一年以内に退職するといわれるなか、「新人看護師が働き続けるために何が必要か」を探りました。同協議会加盟の組合がある都内三十二病院で実施。配布した一万五千枚のうち、五千六十六人分が集まりました。
 それによると、「十分な指導ができなかった」と答えた新人研修担当看護師のうち57・7%(複数回答)が、理由として「自分も業務をしながらなので指導どころではなかった」と回答。「忙しくて振り返りの時間が持てなかった」とした同看護師も47・4%(同)に達しました。
 一方、経験年数三年以下の看護師で、一人立ちするまでの教育・指導が「十分だった」と答えたのは45・3%でした。
 また、看護師の配置が少なくなる夜勤は、研修を終えて自立したときに、78・2%が「ミスをおこすのではないか」との不安を抱えていたことが分かりました。研修指導者と一緒に就く夜勤研修は三交代制の病院で平均二回。これに対し、三年目以下の看護師の六割以上が「夜勤研修は三回以上必要」としています。


2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

選別採用と賃金半減 電機大手の雇用継続制度
法改正の原則に背く


 改正高年齢者雇用安定法にもとづいて、四月から六十五歳までの段階的な雇用継続が各企業に義務付けられています。しかし、「年金支給開始年齢までの安定した雇用の確保」という改正法の大原則に反して、選別雇用や労働条件を切り下げる企業が相次いでいます。電機大手の場合を見ると――。

対象者
 雇用延長は「希望者全員の雇用」が原則です。 松下電器や富士電機、三菱電機は「希望者全員」としていますが、選別的基準を設けている企業が目立ちます。
 東芝では希望者全員を原則としながら、およそ10%程度の労働者が選別対象になります。
 沖電気は、五段階評価のうち「3」以上の人はグループ内で再雇用し、それ以下はグループ外の企業に出されます。
 日立は「希望者と会社募集のマッチングができた者」としていますが、「希望者全員の雇用」という原則に反して、会社の都合で排除される仕組みになっています。
 厚労省パンフレットでは、労使で十分協議したものでも、「事業主が恣意(しい)的に継続雇用を排除しようとするなど本改正の趣旨や他の労働関係法規に反するものは認められない」としています。
 希望者全員を雇用するかどうかは企業によって理由は異なりますが、希望者全員を継続雇用する富士電機は「高い技術・技能・知識を持ち、ノウハウの蓄積のある高年齢者の活用もこれまで以上に求められる」としています。

選択時期と60歳までの賃金
 雇用延長の選択時期は早い場合は五十五歳で選択しなければならず、六十歳までの賃金も大幅にダウンします。
 東芝では、五十五歳で退職し、系列の高齢者雇用会社の社員になります。六十歳までの賃金は月約五万円(年収で約八十万円)ダウンします。
 五十代半ばでの選択は、将来の家族状況や健康面など不確定要素が多く、容易ではありません。職場からは「六十歳直前に選択できるようにすべきだ」との声があがっています。

60歳以降の賃金
 六十歳からの賃金は、ほとんどの企業で大幅にダウンしています。
 全員継続雇用の松下でも、年百八十万―三百万円(一時金含む)程度にしかなりません。「年金支給開始年齢までの生計維持」という改正法の趣旨に反します。
 雇用形態でも、「嘱託社員となり、一年ごとの契約更新」(東芝)など、六十五歳までの雇用継続が必ずしも保障されない可能性があります。
 NECでは雇用延長を選択すると、五十六歳から業務続行か、他の業務・部門への異動かに区分されます。異動先が見つからない場合、バイタルスタフというグループ会社に出向させられ、そこからグループ外へ派遣される恐れもあります。
 沖電気でも、評価が平均以下の人はグループ外企業に再就職先を探すことになります。
 改正法は、六十歳まで雇用されていた企業での継続雇用が原則です。それ以外の企業で雇用延長するときは、子会社で継続雇用が担保されている場合などです。グループ外での雇用延長は法違反の疑いがあります。
 選別雇用をめぐっては、厚労省が事業者向けに出したパンフレットで、「過去三年間の勤務評定がC(平均)以上の者」など、選別採用をすすめるような記述があったため労働者から追及され、削除されました。
 JMIU(全国金属情報機器労組)が行ったハローワークや労働基準監督署との交渉では、選別基準について、「恣意的な選別をまねく基準はまずい。早急に対処したい」(ハローワーク)、「問題があればハローワークと連携して対処したい」(労基署)などと答えています。


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