2006年5月8日(月)「しんぶん赤旗」

育児休業手当を増額
ドイツ政府が少子化対策


 【ベルリン=中村美弥子】低下する出生率にどう歯止めをかけるか―。日本同様、ドイツでも少子化対策は焦眉(しょうび)の課題となっています。キリスト教民主同盟・社会同盟と社会民主党の連立政権は二日、育児支援計画を発表しました。法案が連邦議会で可決されれば、来年一月一日から施行されます。野党などは、財政支援だけでなく、子育て環境の整備強化も必要だと指摘。活発な議論が展開されています。

出生率は欧州平均以下
 少子化対策として打ち出された計画は、収入の67%を十二カ月間保障するという育児休業手当です。月千八百ユーロ(約二十六万円)を上限としています。もう一方の親が代わって育児休業を取れば、二カ月間、手当を延長できるようにしました。失業中の親には、失業手当に加え月額三百ユーロ(約四万三千円)を支給します。
 現制度では、子どもが満一歳になるまで月額四百六十ユーロ(約六万六千円)、満二歳になるまで月額三百ユーロ(約四万三千円)が支給されています。フォンデアライエン家庭相は「わが国は国際的にみて多額の予算を家族政策に充ててきたが、他国と比べて効果が出ていない」と会見で語り、新たな少子化対策の必要性を認めました。
 独連邦統計局によると、二〇〇四年の合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに産む平均子ども数)は1・36。欧州連合(EU)二十五カ国平均の1・50(〇四年)を下回っています。統計局は、五〇年までにドイツの人口が現在より千二百万人減り七千万人になると予測しています。

保育所増など求める声も
 フォンデアライエン家庭相はドイツが抱えている問題をこう説明しています。
 「わが国の若い男女はかつてなく高学歴になっている。かれらは仕事に誇りをもつと同時に子どもを欲しいと考えている。問題は、かれらが子育てをするエネルギーと時間を見つけられるかだ」
 新たな計画では、育児休業手当を手厚くすることで、父親に育児参加を促しています。現在、男性の育児休業取得率はわずか5%。女性に多くの負担を強いている子育ての現状が、少子化の原因になっていると政府は分析。家計への負担を軽減すれば男性の育児参加が拡大し、より多くの女性が仕事を続けることができるとみています。
 一方、財政支援だけでは少子化は克服できないと指摘する声もあります。野党や研究者の多くは、慢性的に不足気味な保育所の増加と子育てに対する税控除の増額こそが少子化を食い止める方策だと主張しています。
 『シュピーゲル』(電子版)誌は、ドイツ社会に根強く残る“育児は女性の仕事”という伝統的な性役割認識を改める必要があると主張しています。女性が各分野で活躍している国は出生率も高いとして、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーを取り上げ、これらの国では仕事と育児を両立できる環境が整備されていると指摘しています。


2006年5月8日(月)「しんぶん赤旗」

「民営化反対」「戦争いや」 思い共通10万人デモ
アテネ 欧州社会フォーラム


(写真)6日、アテネ市内のデモで「イランから手を引け」と叫ぶ参加者(浅田信幸撮影)

 【アテネ=浅田信幸、岡崎衆史】当地で開かれている第四回欧州社会フォーラム三日目の六日、主催者発表で十万人が「新自由主義反対」「戦争と人種差別に反対」を訴えてアテネ市内をデモ行進しました。「民営化反対」「イラク戦争、イラン攻撃反対」のプラカードや横断幕を掲げ、歌や踊りを交えた行進です。
 英公共サービス労組「ユニソン」から参加したマーガレ・クレモンスさん(58)は、「フォーラムに参加して欧州全体でも英国と同様に公共サービス民営化が進んでいることを知り、共通の運動を進められることを実感した」と述べ、新自由主義反対での欧州規模の運動の交流ができたことを歓迎しました。
 フランスから来た教員のジャンリュック・ゴデールさん(48)は、多くの国で無償教育が脅かされるなど公共教育も危機に陥っていると指摘。「欧州社会フォーラムのおかげで、教育者、生徒、親との連携が進み、各国で見解の一致や運動の協力に向けた動きが進んでいる」と、フォーラムの役割を評価しました。
 地元アテネから参加した学生のコンスタンティヌス・フィリッポさん(23)は、「平和の問題に関心があって参加した。イラク戦争でいまだに占領を続ける外国軍の撤退を求める運動を進めるのはもちろん、いま米国が狙っているイラン攻撃を許さない運動も進めていきたい」と語りました。
 フィリッポさんは「メディアと戦争の関係を論じた分科会に参加し、将来は平和のために活動するジャーナリストになりたいとの思いを強めた」と述べました。
 行進中、デモに紛れ込んだ約二百五十人の若者が外国資本の銀行や警察署に向け火炎びんや石を投げつけ、一時騒然としましたが、参加者は平和的に行進を続けました。


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