2006年5月7日(日)「しんぶん赤旗」

雇用拡大へ共同 基地や核 論議続く
欧州社会フォーラムに15000人


(写真)5日、アテネで開かれた第4回欧州社会フォーラムの分科会(岡崎衆史撮影)

 【アテネ=浅田信幸、岡崎衆史】「もう一つの欧州は可能だ」をスローガンとする第四回欧州社会フォーラムが四日、ギリシャの首都アテネで開幕し、活発な論議が続いています。
 フォーラムには欧州各国から非政府組織(NGO)や労組、左翼政党の代表ら約一万五千人が参加。グローバル化(経済の地球規模化)のもとで進められている新自由主義的な政策や平和と戦争の問題など幅広いテーマが、欧州統合のあり方と関連させて取り上げられています。
 多様な論議を通じ、欧州市民の連帯と、市民参加による「民主主義と平和の欧州」を建設すべきだとの意思が共通して示されています。
 新自由主義の問題では多くの代表が、欧州連合(EU)が二〇〇〇年に決定した「競争力ある欧州」をめざす欧州経済・社会開発十カ年計画「リスボン戦略」に、現在の雇用不安定化や社会保障切り下げの原因があると批判しました。各分科会で欧州レベルで共同で対応する必要性が強調されました。
 「欧州社会モデルの代案」分科会で発言したドイツの金属産業労組(IGメタル)の代表は、「(リスボン戦略は)競争力のみを重視し、社会保障を削減させるもので、すでに破たんした」と指摘。(1)雇用の拡大(2)充実した社会保障制度(3)公的サービスの民営化の停止―を盛り込んだ新しい雇用戦略を練り上げるよう訴えました。
 欧州での新自由主義の現れに関する分科会で発言したイタリアの代表も「各国バラバラでは対応できない情勢が生まれている」と発言。「労働問題を中心に」した欧州レベルでの共通戦略を持つことが必要だと強調しました。
 平和と戦争の問題では、北大西洋条約機構(NATO)に反対する分科会でベルギー平和団体の代表が、NATOがオーストラリアやニュージーランドとともに日本をパートナーとしようとしていることを指摘し、「米国はNATOを自らが使用しやすい世界規模の軍事同盟にしようとしている」と警告しました。
 欧州からの米軍撤退を求める分科会ではドイツの代表が、ドイツには七十二カ所の基地があり六万八千人が駐留し、「いまだに占領状態にある」と批判。これらの基地がイラクやアフガニスタンでの米軍の軍事行動で重要な役割を果たしており最新兵器が配備されていることを挙げ、基地機能が強化されていると警鐘を鳴らしました。
 イギリスとフランスが自国の核兵器保有を不問にしたままイランに核開発の断念を迫るのは「二重基準」だと批判する発言もありました。
 フォーラムは六日午後、「新自由主義、戦争と人種差別に反対」をスローガンにアテネ市内でデモを行い、七日の全体会議で閉幕します。

 欧州社会フォーラム 多国籍企業や一部大国の利益を優先する経済のグローバル化や戦争に反対し、平和と社会的公正、環境が維持される新しい世界秩序と欧州のあり方を探る国際会議。二〇〇一年にブラジルのポルトアレグレで始まった世界社会フォーラムの欧州版で、〇二年から開かれ、今年は四回目。


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