2006年5月1日(月)「しんぶん赤旗」

青年、労組つくった “委託は偽装、罰金も横行”
灯油巡回販売大手


 灯油の巡回販売大手、「秀和石油」(大阪府堺市)の愛知県内の子会社で働く青年ら九人が労組を結成し、「未払い賃金を支払え」とたたかっています。同社は、社員と「販売委託契約」を結んだことにして労働基準法を逃れる脱法的手法で働かせていました。

(写真)シューワ石油支部の組合員と支援する人たち

 「僕たちは雇用労働者で委託じゃない」
 四月にあった初めての団体交渉で全労連・全国一般シューワ石油支部委員長の佐々木孝好さん(23)らはこう訴えました。
 同社は「♪雪やこんこ…」と童謡を流す営業で知られ、八府県で二十店舗、タンクローリー三百台を擁する業界最大手。
 佐々木さんは昨年十一月、日給や勤務時間が明記された求人誌を見て応募。ところが、何の説明もなく、個人事業主になる販売委託契約を結ばされました。
 しかし、委託とは名ばかりで出勤時間が定められ、タイムカードで管理。一日四回の無線連絡も義務付けられました。販売ルートも会社が指定。売上高に応じて決まるはずの収入も、当初は一日八千円の固定給で支払われるなど、実態は雇用労働者でした。
 出勤は午前七時。平均午後十一時まで十六時間働いても、販売車のリース・保険料や目的不明の「プール金」まで天引きされ、手取りは二十万円程度にしかなりません。

(写真)秀和石油の事業所に張り出された罰金の一覧表

 遅刻すると五百円から一万円の罰金。無線連絡の指定時刻に遅れるとまた罰金をとられました。
 巡回販売には危険物取扱者の資格が必要なのに無資格で販売させることもさせていました。
 十五歳のときから職を転々としてやっとの思いで就職した高田洋二郎さん(21)は「灯油で手足がぬれて皮膚炎を起こしました。でも、時間もお金もなくて病院に行けない。何度も辞めようと思ったけど、辞めるなら、会社に損害金四十万円払えといわれ辞められなかった。こんなやり方は許せません」と憤ります。

労働基準法学び行動へ
 労組結成のきっかけは愛労連(愛知県労働組合総連合)の労働相談でした。
 二月になると灯油が売れず日給が三千円を割るようになりました。「これじゃ生活できない。詐欺だ。どうにかしたい」と集まった席で不満が爆発、みんなで声をあげようと決めたのです。
 前出の高田さんは「労働組合は自分に関係ないと思っていました。みんなで集まってお互いの状況を話しあい、労働基準法を学ぶうちに、会社への怒りがいっそうわいてきました」と話します。
 三月に労組を結成し、労働局に労基法違反だと申告。労働局は調査に乗り出しました。
 灯油販売のシーズンも終わり、組合員は別の仕事に就いていますが、他の労組の支援に県外へも出かけています。
 委員長の佐々木さんは「おかしな働き方をさせられているのは自分たちだけじゃないと知りました。結婚したばかりだけどこんなことを許していたら生活設計もたたない。会社に謝罪と補償をきっちりさせ、おかしな働き方をなくす社会になるようにしていきたい」と力をこめます。
 本紙の問い合わせに会社側は「労働局と相談中なのでコメントは差し控えたい」としています。
 青年たちと一緒にたたかっている全労連・全国一般あいち支部の石井一由記書記長はこう語ります。
 「こんな企業が出てくる背景には、格差社会のもとで青年たちが日々の生活に追われ、先の見通しもたたない状況があります。こんなことを放置していたら日本の未来はありません。格差拡大を許さない世論も力にして必ず勝利したい」


2006年5月1日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress
作業の“遅れ” 2秒で暴力 「雇用黒書」で実態告発
新潟・民青同盟まとめ


 「前の日より仕事が2秒遅れた」と怒鳴られ、足をけられてケガをした。理由の説明もなく突然解雇通告――。新潟県の青年労働者の働く実態をまとめた「青年雇用黒書」は、若者が置かれている深刻な現実を告発しています。「黒書」をまとめた日本民主青年同盟新潟県委員会は、人間らしい労働をとりもどすため、雇用問題学習会を開くなどの運動を始めています。(菅野尚夫)

 「黒書」に登場する新田和人さん(23)=仮名=は、電子部品の製造ラインで請負会社の登録社員として働いて一年が過ぎました。
 新田さんが暴力を受けたのは昨年七月のこと。「二十分かかっている作業をお盆までの一カ月で十分に短縮する目標」をリーダーから言い渡されたことが始まりでした。
 新田さんの仕事は、電子部品の製造番号をチェックし記入する作業です。毎日、ラインのリーダーが、作業時間をチェック。時間短縮の目標を言い渡された次の週のことでした。
 「前日より二秒ほど時間がかかった」「なぜできない。明日、短縮できなかったなら辞める覚悟を決めろ」。リーダーから罵声(ばせい)を浴びせられ、足をけられました。「男だろう!おまえはクズだ」。言葉の暴力、ミスをすると平手打ちなど日常茶飯事でした。

■治療費さえ
 けられた足は痛くて歩けず、寝ることもできず病院へ行きました。「全治一週間の打撲」と診断され、治療費は五千八百円かかりました。しかし、会社からは一円も出ません。休んだ日の給料も出ませんでした。
 盛岡市の実家の母親が心配して、会社に言ったことから、暴力をふるったリーダーと請負会社の責任者が部屋にきて謝罪しました。
 「身の回りのものだけあれば、すぐに生活できる」。新田さんは、そんな業務請負会社の宣伝で、岩手県盛岡市から新潟県の工場にきました。「臨床心理士の資格をとって福祉関係の職場で働きたい」という夢を実現させるために、学費を稼ごうと、請負会社に登録したのです。
 会社の寮は、六畳二間。洗濯機、冷蔵庫、テレビなどが完備していました。しかし、寮は他人との共同生活で、家賃三万三千円もとられます。
 日勤は、朝、八時二十分から午後七時二十五分までの十時間労働です。夜勤は、午後八時三十分から翌朝の五時三十五分までの九時間労働。毎日、二時間から三時間三十分の残業があります。日勤、夜勤、日勤、夜勤と週六日間働き、二日休みのサイクルで働きます。日給制で、一日七千五百円。残業代や諸手当を入れても月約二十万円ぐらいです。
 新田さんは、「後一年は我慢してでも働いて、学費をためたい」と言っています。

■トイレ無理
 「黒書」に登場する、電気製品の製造部門で働く田中澄和さん(32)=仮名=。「登録派遣社員」として四年間以上連続して同じラインで電気部品の最終チェック作業に携わってきました。「代わり(交代要員)がいないのでトイレにも行けない」過密労働です。
 手で触れたり目で見て、製品に傷やゴミが付着していないか最終検査します。勤務時間は、夜六時十五分から深夜二時四十五分までの夜勤作業です。時給八百十円で、残業があっても残業割増や深夜割増はつきません。
 「一日九百から千二百個の製品を点検しますので、緊張して精神的にきつい」といいます。深夜の労働は、体をむしばみ始めました。恒常的な寝不足とだるさに苦しんでいます。「飲まなかったビールを毎日飲むようになりました。飲まないと寝られない。頭痛に悩まされ、うつ状態になり、不安が襲ってきます」
 四年前当初の時給は、八百三十円でした。「仕事の量が減った」ことを理由に減給となりました。昼休み時間も取れないほど忙しく、仕事量は減っていません。
 「身分が不安定のため、いつ辞めさせられるか不安。正社員になりたい」と、強く思っています。田中さんは、母親の年金と彼の月十数万円の収入で暮らしています。昨年ようやく健康保険や雇用保険に入れましたが、収入は増えず、ぎりぎりの生活です。
 「民青が作った『黒書』や勉強会に参加して、苦しいのが自分だけじゃないことが分かりました。新潟県労連の人に相談に乗ってもらっています。改善させる方向を見つけたい」

 「青年雇用黒書」 2003年から毎年調査して冊子にまとめました。05年度版は、(1)就職活動中の青年(2)派遣・アルバイトなど非正規労働者(3)正職員(4)医療・福祉の青年労働者の23事例について調査しています。

行政に働きかけ改善
 日本民主青年同盟新潟県委員会委員長、西澤博さんの話 青年たちには、働くものの権利についてあまりにも知らされていません。「黒書」作りのなかで実態が分かり、それに基づいて新潟県に働きかけて「若者のための労働ワンポイント講座」というリーフレットを作ってもらいました。
 「労働法の基礎知識」について分かりやすく書かれていて、これをすべての高校生に配布するなど、働くときに不利益にならないよう行政の責任でやってもらいます。労働基準監督署への告発や事例によっては具体的に改善させる活動も進めたい。

仲間いる居場所必要
 新潟県労働組合総連合事務局長、北村新さんの話 若者は、偽装請負や派遣など違法や脱法だらけのなかで働かされ、「おかしい」と思っても、ものが言えません。そのうえ、孤立させられています。
 ホッとでき、一人の人間として認めてくれる仲間がいる若者の居場所が必要です。民青同盟の雇用問題学習会は、大変有意義でした。そこに集まった青年たちと連帯して、人間らしく生きて働くためのネットワークづくりを始めていきたいと思います。

お悩みHunter
仕事に意義感じるが給料低く将来が不安
Q 組合の専従として働いています。やりがいのある仕事です。後継者も減っているので続けていかなければと思っています。今は実家に住んでいますが、自立もしたいし、結婚のことを考えるといまの給料では将来が不安です。仕事に意義を感じながら不安に思うことが残念です。ほかの仕事を探した方がいいのでしょうか。(29歳、男性。東京都)

上司に率直に相談して
A あなたが仕事にやりがいを感じているということは非常にすばらしいことだと思います。今の世の中、良い給料をもらっていても仕事にやりがいを感じられない人も少なくありません。ただ、今の給料では将来に不安を感じることもよくわかります。
 まずは自分の現状や将来への夢、今抱えている不安などを上司や組合の執行部に率直に相談してみてはどうでしょうか。私自身もさまざまな組織、団体にかかわっています。どの組織にも共通して言えることは「組織の継承」の観点から見れば「若い人を迎え入れなければ未来がない」ということです。あなたのような若い専従が将来に不安を感じていることは組合全体の問題だと思います。
 財政的なことは私が口を挟むわけにはいきませんが、健全な財政体質をつくり上げるには収入の向上(組合員を増やすなど)と支出の削減しかありません。集金や組合への加入などを専従任せにせずに組合のみんなで行っていくことが大切だと思います。
 「専従にはひたすら献身性が求められるんだ」などと言う組合員もいるかもしれませんが、私はそういった考え方には賛同できません。専従、組合員も含めたみんなで、どうすればより豊かに生きていけるかを考えていくべきだと思っています。それが組合の発展にもつながっていくのではないでしょうか。

第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん
 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


2006年5月1日(月)「しんぶん赤旗」

主張
第77回メーデー
人間らしい雇用と平和の連帯


 ひとりぼっちではない―。非正規で働く若者が、労働組合に参加してたたかう姿が、テレビでもとりあげられるようになりました。
 きょうは第七十七回メーデーです。八時間労働制を求める労働者のたたかいから始まったメーデーは、労働者と国民がそのときどきの要求を掲げ、団結と連帯の力を示す日として発展してきました。

正規も非正規もともに
 低賃金・無権利の非正規労働者の急増にみられるような、格差と貧困を広げる弱肉強食の小泉「改革」にたいし、今日ほど社会的連帯での反撃が求められるときはありません。
 正社員と肩を並べて働いているのに非正規労働者には食事補助も出ない。会社の理不尽なやり方に正規労働者が一緒になってたたかい、同じ待遇に改善させた職場もあります。
 非正規雇用急増の根源には、小泉政治が実行した派遣労働の自由化など労働法制の規制緩和があります。
 正規労働者も無法に苦しめられています。成果主義賃金が広がり、賃下げと「サービス残業」が深刻です。労働者の精神と肉体をむしばみ、家庭崩壊と職場の人間関係まで壊しています。民間をはじめ公務や学校現場にまで持ち込まれ、住民や子どもに目がいかなくなるという問題を生んでいます。
 百七人が死亡したJR西日本福知山線の脱線事故をはじめ、航空機事故の続発や自動車のリコールの急増は、民間大企業のコスト削減による“安全より利益優先”主義の誤りを露呈させました。
 異常な大企業中心主義を特徴とする小泉政治のもとで、ものづくりや交通・運輸の分野でも、公共サービスの現場でも、人間らしい労働と国民の利益を結びつけたたたかいが始まっています。
 小泉「改革」は、医療にまで「格差」を持ち込もうとしています。「医療制度改革」法案は高齢・重病の人に負担増を押しつけるとともに、公的保険のきかない医療を拡大する「混合診療」の本格的導入を盛り込んでいます。日本の医療制度をおおもとから壊す大改悪を高齢者と現役世代が連帯してはね返しましょう。
 異常なアメリカいいなりの政治の矛盾も浮き彫りになっています。住民の安全を脅かす「米軍基地再編強化」反対の、自治体ぐるみのたたかいが全国各地で前進しています。
 憲法九条改定が、アメリカとともに「海外で戦争する国」づくりにあることは「米軍再編」との関係でも明らかです。「九条の会」が全国で五千近くに達し、力強く運動が広がり、高知県土佐清水市などで憲法擁護署名が有権者の過半数を達成しています。国民多数派を結集する運動を強め、憲法改悪のための国民投票法を阻止しましょう。
 政府の教育基本法改定案は、教え子たちを戦場に送った戦争教育の反省の上にうちたてられた民主主義的原則を破壊する重大な内容です。憲法改悪と結びついた教育基本法改悪を許すわけにはいきません。

国民分断の政策に抗して
 日本共産党は、国民に分断をもちこむ「新自由主義」がはびこるもとで、「ルールなき資本主義」から「ルールある経済社会」への転換をかかげ、「社会的連帯で反撃を」とよびかけてきました。また、基地強化反対・撤去、憲法改悪反対のたたかいをよびかけてきました。
 メーデーを成功させ、人間らしい労働条件と雇用、平和と民主主義を求める国民の共同と連帯を広げていきましょう。


2006年5月1日(月)「しんぶん赤旗」

日本共産党
第77回メーデー・スローガン


 日本共産党の第七十七回メーデースローガンは次のとおりです。

☆ 格差と貧困を広げる弱肉強食の小泉「改革」ストップ。
 安定した雇用と人間らしい働き方を確保しよう。「サービス残業」を根絶し、職場の無法を一掃しよう。
 若者に仕事と希望を。
 大企業は社会的責任を果たせ。「ルールある経済社会」をつくろう。

☆ 国民に負担増を押しつけ、公的医療保険制度を土台からくずす医療大改悪反対。だれでも安心してかかれる医療を。消費税・庶民大増税を阻止しよう。

☆ 憲法改悪・国民投票法案反対。憲法九条をまもるたたかいを草の根から発展させよう。教育基本法改悪反対。
 侵略戦争と植民地支配の美化を許さずアジア諸国民との友好・交流を。

☆ 米軍基地強化を押しつける日米合意を撤回せよ。アメリカは不法なイラク占領をやめよ、自衛隊はただちにイラクから撤退せよ。いまこそ核兵器廃絶を。安保条約を廃棄しよう。

☆ アメリカ・財界いいなりの政治から「国民が主人公」の新しい日本をつくろう。「たしかな野党」日本共産党の前進を。


2006年5月1日(月)「しんぶん赤旗」

独左翼党大会が開幕
最賃制度導入へ運動を論議


 【ハレ(独ザクセン・アンハルト州)=中村美弥子】ドイツの左翼党第十回大会第一回会議が四月二十九日、ザクセン・アンハルト州ハレで開幕しました。昨年の連邦議会選挙で連携した「労働と社会的公正のための選挙代案」(WASG)との合同問題と全国最低賃金制度の導入を求める運動が、主要なテーマとなりました。
 今回の左翼党大会は、同党との合同の是非について最終的な決定を下すWASG党大会と日程が重なりました。
 再選されたビスキー議長は報告のなかでWASGとの統一の意義について、「戦争や新自由主義といった二十一世紀の問題に正面から立ち向かう政党がドイツには必要だ。左翼が統一してこそこれが可能になる」と述べました。さらに、両党の間にある違いを認め合い、多面的な性格をもつ統一政党になることに期待を示しました。
 同議長は、キリスト教民主同盟・社会同盟と社会民主党の大連立政権のもとで、教育や社会保障が軽視され、勝者と敗者との格差が広がっていると分析。公正な税制度を確立し、社会的な改革を進めていく必要性を強調しました。また、「労働者の賃金の落ち込むなか、大連立政権は何の対策もとっていない。いまこそ最低賃金制度を導入すべきだ」と訴えました。


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